ネット炎上レポート 2022年11月版
2022年11月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2022年11月のネット炎上トレンド
2022年11月に最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が56%(前月比19ポイント減)を占めました。次いでインフルエンサーなど著名人の炎上が相次いだ「個人・著名人」は37%(23ポイント増)という結果になりました。
また、「企業・団体」の炎上区分の内訳は、「サービス」が全体の23%(27ポイント減)と大幅な減少がみられましたが、前月までの平均的な数値に戻っています。不祥事が相次いだ「教育機関」が14%(10ポイント増)、「メーカー」は10%(3ポイント増)となりました。次いで3%を占めた「自治体・団体」(4ポイント減)、「インフラ」(3ポイント増)、「IT」(4ポイント減)が続きました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容では、「顧客クレーム・批判」が41%(1ポイント増)を占め、次いで「不祥事/事件ニュース」が24%(14ポイント増)となりました。前月大幅に増加していた「不適切発言・行為、失言」が23%(27ポイント減)と前月までの平均的な数値に戻っています。また、「異物混入」(6ポイント増)、「情報漏えい/内部告発」(6ポイント増)がそれぞれ6%という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
話題の扱いに注意すべき題材の新製品が炎上
生活雑貨メーカーが「生理中の入浴の悩みを解決する商品」として発表した入浴剤に対して、メインターゲットである女性を中心に「不快に思う」、「消費者が求めているものとズレている」といった批判が寄せられる事象が発生しました。製品は女性に対するアンケートで得られた結果をもとに企画したと説明されていますが、ネット上では女性の意見を把握できていないという指摘も見られています。
加えて、メーカーは事前調査の結果や企画チームに女性が半数以上を占め、女性の意見をもとにして開発されたものであるとの情報発信を行っていますが、批判は続いています。
代表によるSNS上での謝罪が再炎上
また、炎上事象に対して、代表がSNSで謝罪したところ、再炎上した事例が複数発生しました。
a) SNSコンサルティング事業を手掛ける企業のWebサイトに、コンサル企業と取引実績のない企業が成功事例として掲載されていると、掲載された飲食店の公式SNSアカウントが注意喚起する投稿が話題となりました。この件について、コンサル企業代表はSNSアカウントから「成功事例の掲載であり、誤認の可能性がある」として謝罪のコメントが投稿されました。
また、投稿内で契約時には自社事例でないことを説明しているため、自社事例だと誤認することはない。もし、誤認して契約したのであれば、裁判を起こしてよいという旨の発言をしており、ユーザーからは発言に対して批判の声が寄せられました。
b) SNSを通じて、従業員のプライベートでの暴行疑惑が告発された企業の代表が、SNSアカウントから謝罪のコメントを投稿しましたが、表現が不適切であると、批判的な声が寄せられました。その後、投稿を削除し、指摘を受けた表現を修正して再度投稿しています。その後も代表は事件に関して、情報発信を行っていますが、議論や批判が巻き起こりました。
SNS上で批判が発生している事象について、企業、あるいはその企業の代表として対応することが求められます。しかし、その対応がユーザーからの指摘や論調と異なっている場合や不適切である場合に、火に油を注いでしまう危険性もあります。インシデント後のSNS上の振る舞いを含めた危機管理広報の重要性が浮き彫りになりました。
まとめ
11月には、ユーザーの認知との相違がもととなって炎上してしまった事例が多く見受けられました。
新製品の企画が炎上してしまった事例では、メインターゲットからの共感が得られずに批判の声が多くみられました。女性の感じている課題は、把握できているものの、自社が考えているアプローチを女性たちが受け入れてくれるのかという視点に飛躍があったことが想定されます。解像度の粗い市場調査は、商品の成功に繋がらないだけでなく、企業ブランドの毀損にまで繋がりうることが浮き彫りになりました。
また、ユーザーがどのような点を問題視しているのか、企業に何を求めているのかを理解せずに、的はずれな対応を取ることで、さらなるダメージを負ってしまうことや収拾がつかなくなることが、代表の謝罪炎上事例からも見えてきました。改めて、初動対応の重要性、論調把握の大切さが浮き彫りになりました。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。