
従業員のSNSでのコンプライアンス違反事例から原因・理由と企業が取るべき対策を解説
日本では偽造事件や粉飾決算など企業の不祥事を背景に、コンプライアンスの遵守が強く求められるようになってきています。企業は社会的な責任を果たすために、不祥事の未然防止、内部統制強化に取り組んでいます。しかし、昨今は従業員のコンプライアンス違反行為がSNSで投稿・拡散されるケースが見受けられます。
今回はSNSで拡散されるコンプライアンス違反のケースや予防策について解説します。
目次[非表示]
- 1.コンプライアンスの定義
- 2.SNSで拡散されるコンプライアンス違反事例
- 3.コンプライアンス違反がSNSで拡散される背景
- 3.1.①SNSの普及
- 3.2.②デジタルの発展・浸透
- 3.3.③インフルエンサーの存在
- 3.4.④企業の社会的責任の高まり
- 4.コンプライアンス違反が起こる原因
- 5.違反を引き起こす具体的な行動
- 6.SNSが絡んだコンプライアンス違反の影響
- 7.SNSのコンプライアンス対策で必要なこと
- 7.1.世間から見られている意識の醸成
- 7.2.SNS上のリスク情報の早期発見
- 8.コンプライアンス対策に活用できるサービスの紹介
- 8.1.SNSリスク研修
- 8.2.SNSリスク研修の導入事例
- 8.3.リスコミ (SNSリスクのマンガ教育教材)
- 8.4.リスコミの導入事例
- 8.5.Webリスクモニタリング
- 8.6.Webリスクモニタリングの導入事例
- 9.まとめ
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コンプライアンスの定義
コンプライアンス(compliance)は、直訳して「法令遵守」と言われることが多くありますが、企業が法令・規則・社会的倫理などに従い業務を行うという意味も含まれています。
また近年、コンプライアンスが示す範囲は拡大し、社会からの厳しい目が注がれるなか、企業はより高い倫理観が求められています。
SNSで拡散されるコンプライアンス違反事例
コンプライアンスの重要性が高まる一方で、違反行為がSNSを通じて瞬く間に拡散される事例が後を絶ちません。SNSで拡散されやすいコンプライアンス違反の例を紹介します。
- 会社の営業車で運転中に、急いでいたため信号が変わるタイミングにも関わらず、猛スピードで横断歩道を通過。その様子が他車のドライブレコーダーに映り、SNSにアップされ炎上
- 経営者が講演会中に女性蔑視と捉えられる言葉を発言。講演内容がSNSにアップされ、その経営者と会社に批判殺到
- ある会社の営業マンが自社名や取引先名、商談内容を居酒屋で会話。その会話を聞いた人がSNSに内容を投稿し情報漏えいが発生
- 電車内で仕事をしている会社員のPC画面に未発表の新商品情報が映っているのに気づいた他の乗客が、会社名と内容をSNSにアップし情報漏えいが発生
中には、以前では問題視されることがなかった行動が、SNSで問題として指摘されるようになった社会の変化もあります。では、これらのような行為がなぜSNS上で投稿・拡散されてしまうようになったのでしょうか。
関連記事:コンプライアンス違反の事例10選 原因や企業側の対策も紹介
コンプライアンス違反がSNSで拡散される背景
①SNSの普及
まず情報の拡散元となっているSNSの利用者は年々増加しています。総務省の「令和6年通信利用動向調査」によると、日本人の81.9%がSNS(無料通話機能を含む)を利用しています。この高い普及率が、かつて知り合いの間でしか共有されなかったような情報を、誰もが発信し、不特定多数の目に触れさせる原因となっています。
また、SNSは国内のみならず世界中と繋がれるため、容易に情報が広がります。ひとたび情報が拡散され始めれば、その認知度はどんどん拡大していくSNSという環境は、企業のマーケティングや広報で効果的に使われる一方、コンプライアンス違反を含めた企業のマイナスとなる情報も拡散・批判されやすくなったと言えます。
②デジタルの発展・浸透
コンプライアンス違反がSNSをはじめとしたデジタル空間で拡散されるようになった背景には、デジタルデータやデジタルデバイスが社会に浸透したデジタル化も影響を与えています。
スマートフォンでの録画・録音や車のドライブレコーダーなど、日常を記録するデバイスが普及したことで、交通違反や講演・セミナーでの不適切発言など公の場でコンプライアンス違反を見かけたときに音声・映像で証拠が残りやすくなったことがSNSでコンプライアンス違反が広まる要因の1つとなっています。
③インフルエンサーの存在
インフルエンサーといえばSNSを中心にファンやフォロワーを多く持ち、世間への影響力を強く持つ人物を指します。ネット上で情報を拡散させるための火付け役でもあることから、マーケティングでも活用されるようになっています。
一方で、昨今はネット上で批判を受けそうな情報を拡散させるインフルエンサーや、ユーザーから情報提供してもらい内部情報をリークするインフルエンサーなどリスク情報の拡散を強みにしたインフルエンサーも現れています。このようなインフルエンサーの存在が企業のリスク情報がネット上に表出したときに拡散のきっかけを作ることがあります。
④企業の社会的責任の高まり
2000年代以降、企業はコンプライアンスの遵守を含め社会的責任が求められるようになりました。投資家の間でもESG投資という言葉が注目されており、ESG(環境・社会・企業統治)に配慮している企業に投資する動きもあります。
企業はステークホルダーから社会的責任が求められるようになっている一方、社会的責任に反する行為にも監視の目が強まっており、コンプライアンス違反に対する社会の関心が高まっていることが、SNSでの拡散される背景として考えられます。
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コンプライアンス違反が起こる原因
コンプライアンス違反は、特定の企業や特殊な状況だけで起きるものではなく、どのような組織や個人にも起こり得るリスクです。コンプライアンス違反を含む不正の発生には、「不正のトライアングル」と呼ばれる3つの要素が関係しています。
機会
監視の目が届きにくい環境や、システムの抜け穴など、不正行為を実行しやすい状況動機
個人の経済的な問題や、過大なノルマなど、不正をせざるを得ないと感じる状況正当化
「組織のためだ」や「自分だけではない」といった、不正行為を自分の中で正当化してしまう考え方
これらの要素が重なり合うことで、違反行為が起こりやすくなります。「不正のトライアングル」についてはこちらのコラムで解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
違反を引き起こす具体的な行動
「不正のトライアングル」を土台に、コンプライアンス違反が拡散される原因として以下3つの行動パターンが挙げられます。
- 不正・故意による違反
不正経理や製品の偽装など、明確なルール違反を認識している上で実行すること - 過失による違反
個人情報が記載された書類を誤って公開したり、確認不足で不適切な情報を社外に流出させてしまったりすること - 無自覚による違反
サービス残業、SNSでの不適切な投稿、ハラスメントに該当する言動など、自身が違反行為と認識していないまま行動してしまうこと
またこのような個々の行動は、悪しき企業風土によってさらに助長されることがあります。例えば、売上至上主義やハラスメントが蔓延している組織では、従業員が意見を発しにくい環境になり、違反行為が常態化しやすくなります。
コンプライアンス違反が拡散される原因は、企業の規模や業種に関わらず、全ての組織に存在するため、自分たちの組織や行動を常に客観的に見直すことが重要です。
SNSが絡んだコンプライアンス違反の影響
一般的にコンプライアンス違反が発覚した場合は、行政処分や損害賠償請求や、取引顧客の減少や企業ブランドの低下、従業員・株主離れなど経営に多大な影響を及ぼします。
そこに、SNSによってコンプライアンス違反が投稿・拡散される事象が加わると、コンプライアンス違反をした企業としての世間からの認知が急速に広まる恐れがあります。ネットニュースやまとめサイトなどに取り上げられるまで拡散されると、より信用が低下する可能性があります。
SNSのコンプライアンス対策で必要なこと
世間から見られている意識の醸成
不注意や身勝手な行動によるコンプライアンス違反を防ぐためには、企業内教育によって経営者・従業員ひとりひとりが外では世間から見られているという意識を作ることが必要です。コンプライアンス研修は多くの企業で行われていますが、コンプライアンス違反とSNSの関連性、実際に炎上した事例など情報をアップデートすることが大切です。
SNSで炎上を受けるには、その要因が必ずあります。その要因となるコンプライアンス違反そのものを防ぐこと、それらの違反が所属企業や自身のキャリア・信用にどのような影響を与えるのかを最善の方法になります。
SNS上のリスク情報の早期発見
万が一、コンプライアンス違反の情報、あるいはコンプライアンス違反を疑われる情報がSNS上に出た場合に備えて、早期発見できる体制を整えておくことも対策として有効です。早く発見できるほど、適切な対応を取るための情報収集や判断の猶予ができるため、被害の最小化や炎上の抑制が期待できます。
早期発見の体制を整備すると同時に、万が一リスク情報を見つけた場合はどのように対応を取るべきか、エスカレーションフローなどの見直しも対策として重要です。また、グループ会社や営業所などで発生したインシデントが本部に連携される前にSNS上で炎上というケースもあり、外の目を活用した自社に関する情報収集を積極的に活用している企業もあります。
コンプライアンス対策に活用できるサービスの紹介
エルテスでは、従業員のリスク研修サービスをはじめ、コンプライアンス対策に活用できるサービスを展開しております。お客様のニーズやご希望の手段で提供しております。
SNSリスク研修

SNSリスク研修を目的や課題に合わせてカスタマイズで実施したい場合は、オフライン・オンラインでの研修コンテンツの制作・実施を行うサービスも提供しています。
すでに研修を行っているという企業様向けにも研修内容の見直しや監修サポートも可能なため、従業員のコンプライアンス・炎上対策などもお気軽にご相談ください。
SNSリスク研修の導入事例
株式会社J-POWERビジネスサービス様は、SNS上での不適切な振る舞いが従業員個人のプライベートなリスクにとどまらず、企業の信頼を損なう可能性を課題と捉え、SNSリスク教育の必要性を感じていました。
この課題に対し、過去にエルテスの研修に参加された上長の方から、具体的な事例が豊富で分かりやすいと評価され、研修をご依頼いただきました。実際、参加者とのインタラクティブなコミュニケーションや、豊富な事例を活用した飽きさせない内容と、そのレスポンスの速さと提案の明瞭さから高い満足度をいただくことができました。
▶ 株式会社J-POWERビジネスサービス様の導入事例詳細はこちらから
リスコミ (SNSリスクのマンガ教育教材)

従業員起因のSNSリスク・炎上リスクをマンガ形式で学べる教育教材を提供いたします。これまで培ってきた炎上対策のノウハウから従業員のSNSリスクの中でも特に重要度の高い3つのテーマに分けて作成しました。
多くの店舗や従業員を抱えていて、まとめた研修などが難しい企業では特に時間や規模に影響することなくSNSリスク教育ができます。また、幅広い世代や海外の方など異なるバックグランドをお持ちの企業であっても、マンガを活用することで、理解し易い内容となっています。
▶【研修支援】リスコミ(SNSリスクのマンガ教育教材)の詳細はこちら
リスコミの導入事例
アサヒグループジャパン株式会社様では、従業員に対するSNSリスクの啓蒙が不十分であったため、新商品の発売や決算発表といった重要な時期の情報漏えいを懸念しており、従業員にリスクを正しく理解してもらう目的でサービスを導入いただきました。
導入の決め手は、研修コンテンツを漫画データだけでなく動画でも提供できた点です。これにより、パート従業員を含む全従業員が年代を問わず、自身の業務と紐づけながらリスクを学習でき、機密情報に対する社内意識の向上につながりました。また、コンテンツ制作における迅速な修正対応も、高い評価をいただくことができました。
▶ アサヒグループジャパン株式会社様の導入事例詳細はこちらから
Webリスクモニタリング

リスク情報が出回っていないか、SNSを含めたネット上の大量のデータからAIと人の目で24時間365日モニタリングします。万が一、お客様のリスクとなる情報を見つけた場合は、緊急通知と初動対応のコンサルティングも実施するなど、お客様のリスク対策の心強いパートナーとなります。
▶【リスク検知】Webリスクモニタリングサービスの詳細はこちら
Webリスクモニタリングの導入事例
サッポロホールディングス株式会社様は、従業員によるSNS上の不適切な投稿監視において、夜間や週末の投稿増加による社内リソースの限界という課題を抱えていました。課題を解決するため、複数の外部サービスを比較検討した結果、24時間365日の有人監視体制と、専門コンサルタントによるサポートを兼ね備えているエルテスを選んでいただきました。
導入後は、監視体制が大幅に強化されたことで、リスク検知の遅れが解消され、初動対応が迅速かつ的確に行えるようになりました。さらに、検知されたリスク対応だけでなく、SNSデータの分析結果を他部署で活用したり、従業員研修に取り入れたりすることで、全社的なリスク意識の向上にも繋がったと評価をいただきました。
▶ サッポロホールディングス株式会社様の導入事例詳細はこちらから
まとめ
デジタル社会の進展に伴い、不適切な情報が瞬時に拡散され、企業のブランドイメージに深刻なダメージを与えるリスクは増大しており、自社を守るためには従業員教育とリスクモニタリングの両輪で対策を講じることが不可欠です。
エルテスではSNSで拡散されるコンプライアンス違反をはじめ、企業のデジタルリスクに対して様々なソリューションの提供、支援を行っております。日々の業務で懸念しているリスクなどがあればお気軽にご相談ください。
SNSのコンプライアンス対策は、エルテスへ










