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内部不正による情報漏洩とは?兆候を見抜く実践的な対策を徹底解説

近年、企業における内部不正対策は情報セキュリティ施策の中でも、特に重要なテーマとして注目されています。

このコラムでは、内部不正が企業にもたらすリスクの構造と発生のメカニズムを掘り下げるとともに、多くの企業が見過ごしがちな内部不正の課題を整理し、情報漏洩の兆候を早期に捉えるための実践的なソリューションについて解説します。

目次[非表示]

  1. 1.内部不正リスクが高まる背景
  2. 2.内部不正発生のメカニズム
    1. 2.1.内部不正を生み出す「不正のトライアングル」
  3. 3.企業組織に見られる情報管理の構造的な課題
    1. 3.1.課題① 経営層の情報セキュリティに対する意識のギャップ
    2. 3.2.課題② 重要情報の特定と管理体制の曖昧さ
    3. 3.3.課題③ 中途退職者に対するリスク対応の遅れ
  4. 4.内部不正の兆候と従来の対策が抱える限界
    1. 4.1.職種・立場によって異なるリスクプロファイル
    2. 4.2.従来の技術的対策の限界
  5. 5.自社リソースのみでの内部不正対策が抱える3つの課題
    1. 5.1.課題① 膨大なログとアラート
    2. 5.2.課題② ログ分析手法の課題
    3. 5.3.課題③ 内部不正に対応できる専門人材の不足
  6. 6.膨大なログから兆候を検知する「内部脅威検知サービス」とは
  7. 7.まとめ

情報漏洩

内部不正リスクが高まる背景

企業経営において、内部不正は外部からのサイバー攻撃と同様に深刻なリスクであり、長期的に影響を与え続けています。情報処理推進機構(IPA)が毎年発表している「情報セキュリティ10大脅威 [組織]」においても、「内部不正による情報漏えい」は毎年上位に位置し続けており、2025年版でも第4位となっています。

引用:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2025」

しかしながら、内部不正は従業員の業務上の行動に関わるため、どの程度の監視や管理を行うべきかという判断が難しく、結果として、技術的な外部対策に比べて対応が後手に回るケースが少なくありません。

特に、昨今の働き方の多様化は、内部不正のリスクをより高める要因となっています。リモートワークの普及やクラウドサービスの利用拡大によって、従業員が社外で業務を行う機会が増加し、企業側が「どの端末で、どの機密情報にアクセスしているか」を正確に把握することが極めて困難になりました。こうした環境下では、従業員が意図的であるか否かにかかわらず、情報が外部に漏洩する可能性が高まっているため、従来の境界防御型の管理方法だけでは、十分なセキュリティを確保することはできません。

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内部不正発生のメカニズム

内部不正対策を機能させるには、「なぜ、誰が、どのように不正を働くのか」という構造を理解する必要があります。

内部不正を生み出す「不正のトライアングル」

不正のトライアングル

不正行為を実行に移すメカニズムを説明する理論として知られる「不正のトライアングル」は、「機会」「動機」「正当化」の3つの要素が相互に作用し合っています。

・機会:不正が発生する可能性のある環境を指します。例えば、情報システム管理者が全システムにアクセスできる特権IDを無制限に利用できる環境や重要情報が格納されたサーバーへのアクセスログが適切に監視されていないといったケースが挙げられます。

・動機:不正を行う必要性がある環境を指します。具体的には、個人的な多額の負債を抱えていたり、人事評価への極度な不満があったり、企業に対して恨みがあるといった精神的な要因が挙げられます。

・正当化: 不正行為を正当化する不正を行った人物の考え方を指します。「これは企業のためだ」「自分が正当に評価されないことの埋め合わせだ」といった、自身の行動を合理化するための理屈が挙げられます。

この3要素が揃って機能した時に、内部不正というリスクが顕在化することになります。

▶関連記事:不正のトライアングルとは?企業の内部不正に繋がる要因と対策を解説

企業組織に見られる情報管理の構造的な課題

IPAが2023年4月に公開した「企業の内部不正防止体制に関する実態調査」の調査結果を見ると、多くの企業は情報管理の体制に問題があり、内部不正のリスクを見落としがちだということが分かります。

課題① 経営層の情報セキュリティに対する意識のギャップ

外部からのサイバー攻撃対策が喫緊の課題として優先されがちな一方で、社内の人の行動に関連する内部不正リスクについては、経営層の意識が十分に高まっていない可能性があります。IPAの調査では、内部不正を「事業リスクが高く優先度の高い経営課題」と認識している経営層は約40%にとどまっており、この結果は、情報管理に対する意識のばらつきが、経営レベルでも存在していることを示しています。

出典:IPA「企業の内部不正防止体制に関する実態調査」

課題② 重要情報の特定と管理体制の曖昧さ

さらに、企業の競争力に直結する設計図や営業資料といった個人情報以外の重要な機密情報を特定する仕組みを持つ企業は半数に満たないという事実も明らかになっています。重要情報を明確に区分し、それを適切に管理する仕組みが整っていない状況では、たとえ経営層がリスクを認識していても、現場レベルで「何を」「どこまで」守るべきかが不明確になり、不正の兆候に気づくことが難しくなります。


出典:IPA「企業の内部不正防止体制に関する実態調査」

課題③ 中途退職者に対するリスク対応の遅れ

またIPAの調査からは、中途退職者に対して秘密保持の義務を確実に履行させるための対応、具体的には就業規則への規定や契約の取得といった措置の実施割合が、半数に達していないことも示されています。退職間際の従業員による情報持ち出しは、不正の「機会」が最大化する極めてリスクの高い時期であり、対策が不十分であれば、組織の管理体制に問題があると見なされます。


引用:IPA「企業の内部不正防止体制に関する実態調査」


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内部不正の兆候と従来の対策が抱える限界

パソコンと鍵

情報漏洩を防ぐためには、内部不正に至る背景を理解し、職種や立場に応じたリスクシナリオを想定しておく必要があります。

職種・立場によって異なるリスクプロファイル

内部不正は、従業員の職種や組織内での立場によって、アクセスできる情報の種類や不正に繋がりやすい動機が大きく異なるため、それぞれに応じたアプローチが求められます。

例えば、経営層や役員は、企業全体の情報にアクセスできる権限を持ちながら、監視する人がいないため、不正が発覚しにくいという特徴があります。インサイダー情報の利用など、企業に与える影響が甚大になりうるリスクを常に抱えています。

また、営業部門の従業員は、日常的に大量の顧客情報に触れる機会が多く、退職時に顧客リストを持ち出すといった行動に繋がりやすい傾向が見られます。さらに技術や開発部門では、設計情報やソースコードといった機密性の高い技術情報を扱っているため、情報を持ち出すリスクを抱えています。これらの情報が外部に漏洩した場合の影響は計り知れません。

従来の技術的対策の限界

USBデバイスの使用禁止やアクセス権限の厳格化といった従来の技術的対策は、内部不正による情報漏洩を防ぐ上で重要です。しかし、それだけでは不十分であり、正当な権限を持つ従業員による操作を悪意による不正行為なのか、それとも通常の業務の一環なのかを区別しにくい点に課題があるからです。

▶関連記事:見過ごせない内部不正の兆候|情報漏洩を防ぐUEBAによる行動異常検知

自社リソースのみでの内部不正対策が抱える3つの課題

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内部不正対策を自社リソースのみで完結させるのは、多くの企業にとって大きな負担となるのが現状です。主な課題は以下の3点です。

課題① 膨大なログとアラート

ログを蓄積しても、どの情報を「異常行動」と判断するかの活用設計が不明確な場合、日常の運用は非効率になります。Illumio, Inc.(イルミオ社)が2025年11月に公表した「The 2025 Global Cloud Detection and Response Report」では、日本企業のセキュリティチームは一日あたり平均1,060件ものアラートを受信しているという調査結果があります。結果として情報漏洩の兆候を見逃したり、誤検出の対応に週平均11.1時間、見逃した問題の検知に平均10.3時間費やしたりするなど、時間と労力を浪費する原因となっています。

課題② ログ分析手法の課題

ログには多様な種類があり、複数のログソースを横断的に組み合わせ、相関関係を分析することが不可欠です。しかし、具体的な調査手順やログの組み合わせ方、照合手順が標準化されていなければ、担当者間で判断にばらつきが発生し、膨大なログの中から内部不正の兆候を見出すことが難しくなります。

課題③ 内部不正に対応できる専門人材の不足

収集したログを分析し、情報漏洩や内部不正の調査を行うための専門人材が不足している課題は深刻です。日常的な膨大ログの監視や、インシデント時の高度なログ調査には、一定の人員と高い専門性が求められますが、多くの企業では確保できていないのが現状です。

高度なログ調査と分析には、デジタルフォレンジック技術や不審行動の背景を理解するための専門的な視点など、多岐にわたる専門性が求められます。人数と専門性の双方が不足している環境では、ログ調査に十分な時間を割けず、重要な内部不正の兆候を見落とす可能性が高まります。

▶関連記事:【2025年版】内部情報漏洩の最新事例と組織が考えるべき対策

膨大なログから兆候を検知する「内部脅威検知サービス」とは

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エルテスの内部脅威検知サービスは、従業員のPC操作ログやファイルアクセスログ、Webアクセスログなど、社内のさまざまなシステムに分散するログを統合的に収集・分析します。UEBAの仕組みを活用したシステムと、専門アナリストの知見を組み合わせることで、通常の業務活動とは異なる不審な行動パターンや、内部不正につながる予兆を迅速に検知します。

内部脅威検知サービスはUEBA(User and Entity Behavior Analytics:ユーザーとエンティティの振る舞い分析)といった機械学習技術と、長年の経験を持つ専門アナリストの知見を組み合わせることで、インシデントの未然防止という最大のメリットを提供します。

例えば、退職予定の従業員による重要ファイルへの大量アクセスや、普段利用しない時間帯のシステムログインといった異常行動を、問題が表面化する前の段階で検知し、先手を打った対応を可能にします。

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まとめ

このコラムでは、リモートワークの常態化や働き方の変化を背景に内部不正のリスクが高まっている現状と、「不正のトライアングル」に代表される不正発生のメカニズム、そして自社リソースのみでの内部不正対策が抱える課題について解説してきました。

正規の権限を持つ従業員の行動の中から、不正の兆候をいかに早期に、かつ高精度で見つけ出すかがポイントとなりますが、膨大なログの分析や専門人材の確保、24時間365日の監視体制の維持など、自社だけでこれらすべてを対策するには限界があります。

エルテスが提供する「内部脅威検知サービス」は、長年の実績からの独自な分析ノウハウと、経験豊富な専門アナリストによる高精度な検知を実現しています。自社のセキュリティ体制を根本から見直し、より実効性の高い内部不正対策を検討されている場合は、ぜひお気軽にお問合せください。

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著者・監修|株式会社エルテス編集部
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株式会社エルテスは、これまで多種多様な企業のデジタルリスク対策に尽力してきたノウハウを生かし、企業のリスク課題・デジタル課題に役立つコンテンツを提供しています。 編集部ではネット炎上やSNS運用トラブル、ネット上の風評被害・誹謗中傷、情報セキュリティ対策など様々なビジネスのリスク課題に関するコラムを発信しています。
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