
ネット炎上レポート 2026年9月版
2026年9月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2026年9月のネット炎上トレンド
2026年9月に発生した炎上の対象は、「企業・団体」が82%(前月比7ポイント減)と全体の8割以上を占めました。「個人・著名人」(前月同数)と「マスメディア」(5ポイント増)がそれぞれ8%という結果になりました。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳では、AIで生成した画像のPR活用で炎上する事例が複数発生したことも影響して「サービス」が45%(19ポイント減)と20ポイント近い減少となりましたが、前月の大幅な増加から平均的な数値に戻っている状況です。次いで「メーカー」が16%(11ポイント増)、「自治体・団体」が10%(4ポイント減)、「インフラ」が8%(2ポイント増)、「IT」が3%(3ポイント減)と続いています。(図1)

収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では「顧客クレーム・批判」が55%(5ポイント増)と全体の半数以上を占めました。複数の企業や組織において不正アクセスによる情報漏えい事案が見られた影響で「情報漏えい/内部告発」が16%(10ポイント増)と大きくポイントを伸ばしています。そのほか、「不祥事/事件ニュース」が13%(前月同数)、「不適切発言・行為、失言」が10%(21ポイント減)と続きました。(図2)

収集データを元にエルテスが作成
有名人とのタイアップ企画に批判が相次ぎ、炎上
9月には、有名人とのタイアップ企画を発表したところ批判が集まり、中止する事態となった事例が複数みられました。
A)子供服のアパレルメーカーが自ブランドのキャラクターとVtuberとしても活動するイラストレーターとのコラボ企画を発表したところ、Vtuberの過去の音楽作品で小児性愛者をテーマにした楽曲があったことから、子供服ブランドとタイアップするのは不適切ではないかと多くの批判が寄せられました。企業は批判を受け、タイアップ企画とコラボ商品の発売中止を発表しました。
B)スポーツチームが始球式に接待を伴う飲食店のキャストを起用することを発表したところ、多くの批判が寄せられました。批判の論調としては、「子供も観戦することができる試合で年齢指定を受けている接待飲食店のキャストが参加するのは不適切」といった声でした。チームは批判を受け、始球式の企画を中止することを公式に発表しました。
2つの事例に共通する点として、企業やブランドのターゲット層とそぐわないタイアップ先を起用したことにあると考えられます。未成年やその親を顧客ターゲットとしている場合、年齢指定のあるコンテンツ・職種や、その顧客層が不快に感じる要素を持つ人物の起用は炎上のリスクを孕んでいます。タイアップする人物と企業・ブランドのイメージやパーセプションとの乖離があることで、ブランドイメージの毀損に繋がる恐れがあると認識する必要があります。
▶ 事例から学ぶSNS炎上から企業やブランドを守る対応のポイント【無料】ダウンロード
AIで画像生成したクリエイティブに批判殺到
画像生成AIを利用した広告やSNSコンテンツなどのクリエイティブを巡り、炎上する事例が複数発生しています。
C) 子供服販売店の公式SNS投稿が物議を醸しました。商品の販促を目的とした投稿でしたが、添付画像はAIで生成されたと思われるもので、同じ顔の子供が不自然に並んでいたり、ブランドロゴが崩れていたりする状態でした。SNS上では「不気味の谷現象」による不快感のほか、「ロゴという最も重要な部分すら確認せずに投稿する企業体質に不信感を抱く」といった厳しい意見が寄せられました。
D) ゲームメーカーによる展示会出展に関するSNS投稿が批判を集めました。公開されたブースのイメージ画像にAI生成特有の不自然さが残っていたことに加え、過去にも同様に生成AIの利用で批判を受けた経緯が取り沙汰され、「前回の炎上に対する反省が見られない」といった姿勢を疑問視する声が相次ぎました。
画像や動画のAI生成は、企業にとって制作コストの削減や効率化をもたらす有効な手段である一方、活用する場面や生成物の品質によっては重大な炎上リスクとなり得ます。企業は単なる効率化だけでなく、自社のパーセプション(認知・評価)やブランド毀損のリスクを十分に見極めた上で、慎重に運用・チェックを行う必要があります。
▶SNS・ネット上のリスクを監視する「Webリスクモニタリング」でできること【無料】ダウンロード
まとめ
9月に発生した事例からは、PRなどのタイアップ企画において、起用するタレントやクリエイティブが自社のパーセプション(認識・ブランド像)と乖離していないかを事前に確認することの重要性が改めて浮き彫りとなりました。
特に、Aの事例では、タイアップ企画をVTuber側が発表した段階では批判的な意見はさほど見られず、ブランド側が正式発表したタイミングで問題視する投稿が一気に増加したという経緯があります。特にブランドの既存ファンと思われるアカウントからの批判が目立ち、「タイアップする人物の過去の活動や背景を含め、選定段階でリスクを厳しく認識すべきだった」という厳しい声が寄せられました。
世間が抱く「この企業・ブランドは〇〇であるべき(はずだ)」という社会的期待から逸脱した施策は、企業やブランドへの不信感へと直結し、大きな批判を引き起こすリスクがあります。平時から自社のパーセプションをSNSの論調などから正確に把握し、タイアップ企画やクリエイティブの検討時には「このパーセプションを大きく逸脱していないか」という観点で炎上リスクを事前にチェックしておくことを推奨します。
また、自社のパーセプションを深く理解しておくことは、万が一批判が発生した場合でも「何が・なぜ批判されているのか」を正確に見極める判断材料となり、炎上の拡大を防ぐ迅速なリスク対応を可能にします。平時からのSNSモニタリングを通じてパーセプションを常に把握し、有事に備えたリスク管理体制を構築しておくことが不可欠です。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。






