
ネット炎上レポート 2025年5月版
2025年5月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
目次[非表示]
▼【資料ダウンロード】実際の炎上ケースから学ぶ、 PR広告企画時の注意点と対策
ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2025年5月のネット炎上トレンド
2025年5月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が77%(前月比9ポイント減)、「個人・著名人」は13%(1ポイント減)という結果になりました。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は、「サービス」が42%(19ポイント減)、次いで「メーカー」が19%(12ポイント増)と大幅な数字の増減を見せています。
また、製品の仕様に関する不具合が相次いで報告され批判が殺到したメーカーの事例や生成AIをクリエイティブや公式アカウントで発信したサービス業の炎上が複数社みられたことなどが特徴的でした。
その他、「自治体・団体」が10%(6ポイント増)、「教育機関」(3ポイント増)と「インフラ」(3ポイント増)がそれぞれ3%と続きました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、「顧客クレーム・批判」(17ポイント減)と「不適切発言・行為、失言」(13ポイント増)がそれぞれ42%と並びました。「不適切発言・行為、失言」の増加背景として、複数企業で、代表者などの経営陣による発言がSNS上で批判を受ける事例が散見されたことが挙げられます。
次いで「不祥事/事件ニュース」が12%(12ポイント増)となり、不適切な労務環境による不祥事などがみられたことが影響して増加している状況です。次いで、「異物混入」が4%(4ポイント減)という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
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インフルエンサー起用のPR施策を実施したブランドに批判が殺到
あるジュエリーブランドの商品に関するインフルエンサーのPR投稿に注目が集まりました。複数のインフルエンサーが商品を身に着け、PRやタイアップといった言葉とともに投稿されている状況でした。
これに対してSNS上では、「憧れのブランドなので、インフルエンサーを起用したPRはがっかり」や「安い商品ではないから頑張って購入したのにPR用にインフルエンサーへ配布されたと考えると価値が下がってしまったように感じる」といったインフルエンサーマーケティングを活用したことに対して批判の声が多くみられました。
自社やブランドがどのように社会から期待されているのかといったパーセプションを理解した上で、プロモーション施策の検討や起用タレントを選定する必要があることが分かりました。
公式SNSでの投稿が不適切と批判される事例が散見
5月には公式SNSアカウントでの投稿が不適切であると批判され炎上した事例が複数見られました。
A)映画作品の公式SNSアカウントから発信されたイラストレーターとのコラボ企画として、主演俳優の半生をすごろく形式で表現したクリエイティブに対して、当該人物を侮辱しているといった意見が相次ぎました。企業は批判を受け、投稿の削除と謝罪の声明をリリースしています。
B)ある画廊の公式SNSアカウントが、SNSで話題となっている画像を生成AIを活用して有名画家の画風で作成したことに、多くの批判が寄せられました。画廊という業態であれば、画家などのクリエイターに寄り添うべきであり、画風を学習したAIで生成した素材を安易に利用すべきでないといった意見がみられました。
公式SNSアカウントでの投稿は、ユーザーにリアルタイムにリーチできるメリットがある一方で、問題があった場合にも即座に届き、拡散されてしまうリスクをはらんでいます。企業にはリスクを正しく認識したSNS運用が求められています。リスクの正しい認識のためには、運用が属人化しないようルールを設定し、複数人で投稿をチェックできる体制を構築することを推奨します。
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まとめ
5月に発生した炎上事例では、自社やブランド、サービスのパーセプションを正しく理解する必要がある事例が目立ちました。パーセプションとは、対象への社会からのイメージや理解を指し、この炎上を防ぐためには、自社やブランドのパーセプションを正しく認識した上で、プロモーション施策や企画を検討することが求められます。例えばインフルエンサーマーケティングにおいては、手法自体が業界特性や企業特性、ターゲットによって効果的ではないケースも存在し、実施する場合の起用タレントの選定も慎重に行う必要があります。
パーセプションを逸脱した施策の場合には、企業に対して期待外れといった意見の表出する可能性が高まります。そのような状況を防ぐパーセプション理解のための施策として、SNSを含むネット上に表出する自社に関する意見を収集し、分析することが有効といえます。
また、3つ目の事例に関連して生成AIを活用したクリエイティブのPR活用においては、未だ批判的な意見が上がりやすい傾向にあるため、活用する場合には、企業としての方針を設定した上で万が一の批判に備えたQ&Aを事前に準備することを推奨いたします。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。
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