WEBリスクマネジメントとは?その必要性や方法を紹介
インターネットがビジネスの基盤となっている現代において、WEBサイトやSNSは、企業の成長を支える重要なツールとなっています。その一方で、不正アクセスや情報漏洩、SNS炎上などのリスクも常に存在しています。
これらのリスクは、一度発生すると企業の信頼やブランドに大きな影響を与える可能性があるため、事前の適切な対策が重要です。
この記事では、企業が取り組むべき「WEBリスクマネジメント」の基本と、実践的な方法について詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.WEBリスクマネジメントとは
- 2.WEBリスクマネジメントが必要な理由
- 3.企業が注意するべきWEBリスク
- 3.1.個人情報や機密情報の漏洩
- 3.2.炎上
- 3.3.法的なリスク
- 3.4.災害によるリスク
- 4.リスクマネジメントの4原則
- 5.WEBリスクマネジメントを進めるステップ
- 5.1.自社の現状チェック
- 5.2.想定されるリスクの洗い出し
- 5.3.リスクの分析と優先順位の決定
- 5.4.モニタリング
- 6.WEBリスクマネジメントを進めるならエルテス
- 7.まとめ
WEBリスクマネジメントとは
WEBリスクマネジメントとは、WEBサイトやSNSで直面し得るさまざまなリスクを把握し、管理・対策する取り組みです。リスクマネジメントが、予測できるリスクに対してあらかじめ対策や管理を行うプロセスや行動を指すため、WEBリスクマネジメントは主に企業がインターネット上のトラブルを防ぐために行われます。
WEBリスクマネジメントが必要な理由
WEBリスクマネジメントが必要とされる理由は、企業がインターネット上での活動を通じて、予期せぬリスクに直面する可能性があるためです。
オンライン上の情報は瞬時に拡散され、企業の評判や業績に悪影響を及ぼすリスクが高まります。リスクが顕在化すると、その対応には多大な時間や費用がかかり、企業にとって大きな負担となります。
WEBリスクマネジメントは、このような問題の発生を未然に防ぐ、あるいは被害を低減・最小化するための対策であり、企業が事業を推進・継続するために大切な取り組みです。
企業が注意するべきWEBリスク
企業が直面するWEBリスクは、デジタル化とITの発展によりさらに複雑化しています。以下では、主なWEBリスクについて解説します。
個人情報や機密情報の漏洩
情報漏洩の原因は主に、不正アクセスやマルウェア感染といった「外部要因」と、メールの誤送信や個人情報を含むUSBの紛失、社内関係者による機密情報の不正持ち出しといった「内部要因」に分けられます。
2024年に株式会社東京商工リサーチが発表した調査によると、2023年に上場企業とその子会社で発生した個人情報の漏洩・紛失事故件数は、年間175件と調査開始以来、最多を記録しました。
このようなセキュリティ事故の増加に伴い、企業の危機感も高まっており、情報の適切な管理と漏洩防止措置の徹底がこれまで以上に重要視されています。
参考:株式会社東京商工リサーチ『2023年「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故」調査』をもとに作成
炎上
企業や従業員がSNSで不適切な言動をした場合、多くのユーザーから批判され、企業の評判に深刻なダメージを与える可能性があります。
たとえば、以下のような事例があります。
事例1:企業SNSアカウントでの不適切な行為
プライベートアカウントと間違えて企業アカウントに政治的な発言を投稿し、炎上。
事例2:リアルで発生した不祥事の影響
経営者の違法薬物所持がニュースで取り上げられ、SNS上でも企業へ批判が殺到し、炎上。
事例3:個人の炎上が企業に波及
SNS上でデマ情報を拡散した個人の身元と所属企業が特定され、その企業にも批判が殺到し、炎上。
炎上の事実がデジタル空間に残り続けることで、採用候補者や取引先候補に悪影響を与える可能性もあります。また、誤った対応によっては再び炎上が起きることもため、炎上はその後の対応も重要です。
法的なリスク
法的知識が不足したまま情報を発信すると、数多くの問題が発生します。近年意識が高まっているコンプライアンス違反はもちろん、景品表示法や著作権の違反も注意点として挙げられます。
法的なリスクの発生は、企業の信頼性が下がり、売上の低下や顧客離れにつながる可能性もあります。そのためWEBサイト上のコンテンツを制作する時には法的基準に沿った内容であるかを十分に確認する必要があります。
知らずに法律違反にならないよう、日ごろから法改正に注意し、自社サイトを見直し、問題箇所の迅速な修正が求められます。
災害によるリスク
日本では、地震や水害、台風といった自然災害の被害が年々増加しており、これによりWEBサイトやSNSの運用にも影響が出ることがあります。
災害は予測が難しく、完全な防止は不可能ですが、リスクマネジメントを通じて事前に対策をしておくことで、被害の最小化や迅速な復旧が期待できます。特に、BCP(事業継続計画)は、予期せぬ事態でも事業を止めずに対応するために重要です。普段からの訓練や準備が欠かせず、万が一のために常に備える姿勢が必要です。
リスクマネジメントの4原則
リスクマネジメントを考える上で、基本的な対応策としてよく挙げられるのが「リスクの回避」「リスクの低減」「リスクの移転」「リスクの受容」の4つです。リスクの影響度と発生確率の大小に応じて、適切な対応を決めます。
ここでは、それぞれの原則について詳しく解説していきます。
リスクの回避
影響が大きく、発生確率も高いリスクは「回避」という対応を取ります。
リスクの回避とは、リスクが発生する可能性のある活動を行わないことで、リスクの発生を最大限に抑えることができる対策です。
たとえば、企業のWEBサイトが頻繁にサイバー攻撃のターゲットになってしまった場合を考えます。もしセキュリティ強化に多大なコストがかかるのに対して、サイトからの利益が少ない場合は、そのサイトを一時的に閉鎖する行動を取るのがリスク回避の一例です。
リスクの影響を未然に防ぐために、事業の一部を停止する選択が取られることがあります。その活動のリターンが得られなくなるというデメリットもありますが、リスクの方が重大となる場合は回避の選択を考えましょう。
リスクの低減
次に、影響は低いが発生確率が高いリスクについては「低減」という対応を行います。
リスクの低減とは、特定のリスクの発生確率や、結果の影響を減らすことを指します。
たとえば、個人情報の漏洩リスクがある場合を考えます。万が一、情報が漏洩した際でも、データを暗号化することで、本質的な情報を保護できます。
このように、リスクそのものを完全に排除するのではなく、影響を抑えてリスク管理を行うことが低減の一例です。
ネット上のリスクモニタリングツールを活用することで、早期にリスクを発見し、影響を最小限に抑えることができます。
リスクの移転
影響度が高いが発生確率が低いリスクに対しては「移転」を行います。
リスクの移転の代表例としては、損害保険が挙げられます。例えば、火災によってオフィスが全焼するリスクを考えます。この場合、毎月一定の損害保険料を支払うことで、将来の火災リスクに備えることができます。火災が発生しても、保険金によって損害をカバーできるため、リスクの移転として有効です。
リスクの受容
最後に、影響度も発生確率も低いリスクについては「受容」を選択します。
これは、リスクが発生する可能性を受け入れるというものです。すべてのリスクに対策を講じることは現実的ではないため、発生頻度が少なく影響も小さいリスクであれば、対策を行わず受容することが合理的な場合もあります。
アクセス件数の少ないWebサイトに影響力の低い脆弱性が見つかった際に、対策にコストと時間がかかるため対策を見送るといった判断を取ることがあり得ます。このような例はリスクの受容に該当します。
WEBリスクマネジメントを進めるステップ
リスクマネジメントを初めて行う方でも、順を追って進めていくことでリスクをしっかり把握し、対応できるようになります。
ここでは、WEBリスクマネジメントを進めるために押さえておきたい4つのステップをお伝えします。
自社の現状チェック
まずは、自社の情報管理を理解し、現状をしっかり把握することが大切です。
WEBリスクに対してどの程度の対応がとれているのかをチェックしてみましょう。
下記を参考にしてみてください。
エルテスでは、自社のSNSリスクへの対応力を測るチェックリストのお役立ち資料を提供しています。WEBリスクマネジメントを進める第一歩として、どんなリスクがあるのかを把握して、対策を始める土台を作りましょう。
お役立ち資料:企業のSNS炎上対策のための5つのチェックリスト
想定されるリスクの洗い出し
次に、考えられるリスクをリストアップし、それの対策を検討しましょう。
WEBリスクマネジメントを進める上、過去のインシデント情報やデータを収集するなど、リスク要因を洗い出すことが大切です。第三者の目線や知見も必要となるので、様々な担当部門を集結してリスク対策を実施しましょう。問題が発生した時に適切に対処できるよう、顧問弁護士などと契約しておくこともおすすめです。
リスクの分析と優先順位の決定
次に、洗い出したリスクの中から、優先的に対応すべきリスクを判断しましょう。特定したリスクを細かく分析し、発生する確率や影響の重大さを考えます。
前述した「リスクマネジメントの4原則」に基づき、リスクが企業に与える影響と発生確率を考慮し、優先順位を決定します。そうすることで、対策する必要があるリスクが明確になり、取り組みやすくなります。
優先度が高くないリスクでも、早期に対応できるものであれば、そちらを優先する場合もあるため、見極めが大切です。
モニタリング
リスクに対する対策を実行した後は、継続的な監視が必要です。
継続的に監視し、記録を残しておくことで、リスクが発生した場合でもすぐに対応できるようになります。モニタリングを行う際は、これまでの手法と同様、各部署の関係者とコミュニケーションをとりながら進めることが大切です。
WEBリスクマネジメントを進めるならエルテス
エルテスは、中小企業から大手企業まで1,000社以上の導入実績を誇るデジタルリスクマネジメントを強みとする企業です。
デジタル領域のリスクを把握する実態調査やリスク発生時に備えた体制構築、リスクを予防する研修の実施など、リスク対策をサポートします。また、リスク検知やリスク発生後の対応も一貫して支援します。
詳しくは、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
今回はWEBリスクマネジメントについて紹介しました。
WEBリスクマネジメントは、企業が直面し得るインターネット上のリスクを管理し、損失を最小限に抑えるための重要な取り組みです。情報漏洩やSNS炎上といったリスクへの対策を行わずにいると、企業の信頼やブランドに大きな影響を及ぼす可能性があります。
新たな事業を始める場合や企業経営の安定化を図る上で、リスクを正しく把握し、適切な対策を講じることが大切です。リスクマネジメントを初めて行う場合でも、プロセスに沿って進めることでリスクの把握や分析、対応ができるようになります。