ネット炎上レポート 2024年10月版
2024年10月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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▼ 2024年上半期の炎上トレンドが学べるお役立ち資料はこちら
ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2024年10月のネット炎上トレンド
2024年10月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が71%(前月比9ポイント増)となりました。10ポイント弱の増加を見せていますが、前月までの平均的な数値に戻っています。次いで「個人・著名人」(8ポイント減)と「マスメディア」(4ポイント減)がそれぞれ13%という結果になりました。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は「サービス」が49%(11ポイント増)と全体の約半数を占め、「メーカー」が19%(11ポイント増)とそれぞれ前月から大きくポイントを伸ばす結果となりましたが、それぞれの業態でPR広告に批判が殺到する事例が発生していることがも要因の一つとなっています。次いで、「自治体・団体」は3%(5ポイント減)となりました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、「顧客クレーム・批判」が46%(21ポイント減)と大幅な減少となりましたが、前月が大きくポイントを伸ばしていたものが平均的な数値に落ち着いています。次いで「不適切発言・行為、失言」は38%(18ポイント増)、「不祥事/事件ニュース」が8%(5ポイント減)、「異物混入」(4ポイント増)と「情報漏えい/内部告発」(4ポイント増)がそれぞれ4%という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
反ルッキズムをテーマにした広告を打ち出すも、ルッキズムを助長している内容だと批判が殺到
とある生活用品メーカーが駅構内に掲載した広告の内容が多くの批判を集めました。掲載されていた広告は、SNS上で言われている「美の基準」を羅列しつつその基準を否定するデザインと、「カワイイに正解なんてない」というコピーでまとめられていました。ただし、これに対してSNS上では「この広告を見ることによって知らなかった基準をむしろ知るきっかけになってしまった」や「逆効果でルッキズムの助長をしている」といった批判的な声が見られています。
企業側の伝えたかった本来の意図とは異なる伝わり方をしてしまったケースといえますが、このような場合は企業の炎上対応が重要となります。批判を受けていることを早期に検知し、どのような論調なのかを見極めて対応を検討することで、炎上後のブランド棄損を最小限に抑えることが可能となります。
過去の騒動を揶揄するような投稿を行い批判が殺到
とある企業の公式SNSアカウントでの投稿が注目を集めました。投稿では、過去投稿の文章を縦読みのように抜粋することでCMの予告となるという内容でした。
この手法は、過去にアイドルグループのファンのアカウントから発信され話題となった、公式声明の一部を抜粋して縦読みをすることで文章が浮かび上がるという元ネタの投稿が背景にありました。しかし、その元ネタがファンにとって悲観的な内容だったため、SNSユーザーからは「元ネタの背景を軽視してネタにしている」といった批判が寄せられました。批判を受けて、公式SNSアカウントからは配慮に欠けていたとして投稿の削除と声明を発信しています。
企業の公式SNS運用は手軽にユーザーと近い距離でコミュニケーションを取れるメリットがある一方、あくまで企業を背負った情報発信であると認識した運用が求められます。
まとめ
10月には、企業が発信した情報に関する炎上事例が目立ちました。どちらの事例も、事前に取り上げようとしているトピックスについて、「SNS上でどのような論調なのか」「自社が取り上げることでどのような影響がありそうか」など、企画時にチェックすることが重要でした。
一つ目の事例のように、特に自社のメインユーザー層がネガティブな論調を持っているトピックスであれば、炎上時にブランド棄損の影響が大きくみられる可能性があります。批判の傾向を先読みしたQ&Aを作成するなど、事前に対策を検討しておくことで批判が寄せられた際の迅速な対応の助けになります。
二つ目の事例は、ネット上で話題となったもの、いわゆる「ネットミーム」を企業の公式SNSアカウントで使用した事例ですが、「ネットミーム」は企業として取り上げて問題ないか論調を含めて十分に精査することが必要です。企業に対する社会的期待を理解し、ブランドイメージを棄損しないか見極めることが求められます。SNSとはいえ、企業の発信情報という認識を持った運用やその体制づくりが重要といえる事例でした。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。
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