
企業リスクの種類とは?|リスクマネジメントの方法・手順からリスク対策のポイントまで紹介
企業活動において「リスク」は避けて通れない存在です。事故や災害、法令違反、従業員のトラブルなど、どの企業にも起こり得るリスクが存在し、一度発生すれば経営への打撃は計り知れません。しかし、日頃からリスクを正しく把握し、備えを講じていれば、いざというときの被害を最小限に抑えることができます。
この記事では、企業が直面する代表的なリスクの種類とともに、リスクマネジメントの基本的な方法や手順、対策のポイントについて詳しく解説します。
リスクへの備えが十分でないと感じている方、改めて自社のリスク対策を見直したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.企業リスクとは?
- 2.企業リスクの種類6選
- 3.そもそもリスクマネジメントとは?
- 4.リスクマネジメントの方法と詳しい手順について
- 4.1.リスクを洗い出し、特定する
- 4.2.リスクを分析・評価する
- 4.3.リスクを対策する
- 4.4.モニタリングおよび改善を行う
- 5.企業リスクを管理する際のポイント5選
- 5.1.経営トップの関与
- 5.2.専任チームの設置
- 5.3.危機管理マニュアルの作成
- 5.4.継続的な教育の実施
- 5.5.定期的な見直し
- 6.デジタルリスクに備えるならエルテス
- 7.まとめ
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企業リスクとは?
企業リスクは、企業の経営活動において将来的に起こり得る「危険」や「その影響」のことを指します。
リスクには「起こる可能性」だけでなく、「実際に起きたときの被害」も含まれます。例えば、新商品を発売した際に品質不良が見つかれば、商品の回収や謝罪対応が必要になり、企業のブランドイメージや信頼が損なわれる可能性があります。
このように、企業の存続や成長に深刻な影響を及ぼすリスクに備えることが重要です。
企業リスクの種類6選
企業が直面するリスクにはさまざまな種類があり、そのどれもが会社の存続や信用に直結する重大な問題です。
ここでは代表的な6つのリスクについて、具体例を交えながら詳しく説明します。
労働災害リスク
労働災害リスクとは、従業員が業務中や通勤途中のケガや、ハラスメントや過重労働によって心身に不調をきたすことで企業が責任を問われるリスクです。
【具体例】
・工場内で安全措置が不十分な状態で作業を行っていた従業員が、機械に巻き込まれて負傷し、会社に対して損害賠償を請求した。
・社内のハラスメント行為により精神的苦痛を受けた従業員が、会社の対応の不備を理由に慰謝料請求を行った。
こうした場合、企業は慰謝料や治療費、最悪の場合は遺族への賠償金まで支払わなければならないこともあります。
賠償責任リスク
賠償責任リスクは、自社の製品やサービス、業務によって他人に損害を与えた場合に発生するリスクです。
【具体例】
・自社が製造・販売した食品に異物が混入していたため、消費者から健康被害を訴えられ、回収や賠償を求められた。
・従業員の不注意により顧客データが漏洩し、被害を受けた顧客から損害賠償を求められた。
賠償責任は、単にお金の問題だけでなく、信頼の失墜にもつながります。さらに法的な対応費用やメディア対応費も発生し、会社の負担は非常に大きなものになります。
財物損害リスク
財物損害リスクとは、火災や地震、水害といった災害や事故で、自社の建物や設備、在庫商品が損害を受けるリスクです。
【具体例】
・工場で火災が発生し、生産に必要な機械や在庫商品がすべて焼失した。
・集中豪雨によって倉庫が浸水し、出荷予定だった商品がすべて水没して使い物にならなくなった。
こうした被害が出ると、復旧のための修繕費や買い替え費用がかかるだけでなく、その間の生産・販売が止まり、売上も大きく落ち込みます。
休業損害リスク
休業損害リスクは、火災や災害、事故などで事業活動が止まることによって生じる収入の減少リスクです。
【具体例】
・台風による浸水で店舗が使用不能になり、数週間営業できなくなった。
・火災によって工場の一部が焼失し、生産が完全にストップしてしまった。
事業を止めざるを得なくなっても、従業員への給与や家賃、リース費用など固定費は変わらず発生します。さらに、取引先への納期遅延や契約破棄、顧客離れといった信用問題にもつながります。
自動車リスク
自動車リスクとは、業務で使用する車が関係する事故で、相手への損害賠償や自社の車両損害が生じるリスクです。
【具体例】
・営業先に向かう途中で従業員が交通事故を起こし、相手にケガを負わせてしまった。
・配送中に社用車が自損事故を起こし、車両が大破して業務がストップした。
事故を起こした場合、治療費や慰謝料だけでなく、自動車の修理費、代車手配、場合によっては営業停止の影響まで出るため、非常に大きな負担になります。
経営リスク
経営リスクとは、経営者の急病や死亡などによって会社の経営が立ち行かなくなるリスクです。
【具体例】
・経営者が急な事故で長期入院し、銀行や取引先との交渉が止まってしまい、資金繰りが悪化した。
・経営者による不祥事が発覚し、企業イメージが急落、取引先や顧客が離れていった。
特に中小企業では、経営者の不在がそのまま経営停止に直結することも多く、経営者個人の健康管理や、代替役員体制の準備が必要不可欠です。
上記のようなリスクは、どの企業でも必ず直面する可能性があるものです。「うちには関係ない」と考えていると、いざ問題が発生したときに多大な損失を受けることになります。だからこそ、これらのリスクについて事前に具体的にどのような影響があるかを把握し、リスクマネジメントが欠かせないのです。
そもそもリスクマネジメントとは?
一般的にリスクというと「損をする危険」と考えられがちですが、ビジネスの現場では「事業活動の中で起こりうる不確実な事象」を広く指します。
つまり、企業が直面するさまざまなリスクとその影響を正しく把握し、あらかじめ対策を講じることで、危機の発生を防ぎ、万が一発生した場合でも損失を最小限に抑えるための経営管理の手法であるといえます。
リスクマネジメントの方法と詳しい手順について
続いて、企業がリスクマネジメントを実際に進めるうえで必要となる具体的な手順について解説します。ただリスクに備えようとするだけなく、きちんと段階を踏んで対策を進めていくことが重要です。
以下の5つのステップを意識して、体系的にリスクマネジメントを行いましょう。
リスクを洗い出し、特定する
最初に行うべきことは、企業が直面しうるあらゆるリスクを洗い出すことです。
事業に関わるすべての部門から情報を集め、大小問わず考えられるリスクを徹底的に挙げていきます。この段階では「起こるかどうか分からない」「小さなことかもしれない」と思うリスクも含め、リストアップすることが重要です。
リスクを分析・評価する
次に、特定したリスクを「リスクの発生確率」及び「リスクが顕在化した場合の企業への影響度」という二つの軸で、企業にとっての重要度を分析・評価していきます。
すべてのリスクに対して一度に対策を取ることは難しいため、分析した結果をもとに「優先順位」をつける必要があります。
この二つの軸について定量評価が困難であれば、定性評価により「大」、「中」、「小」に区分することや、専門家の意見や公的な統計などを参考にして優先順位をつけましょう。
リスクを対策する
評価によって優先度が決まったら、実際にリスクに対して具体的な対応策を講じます。リスク対策には「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」の2つの手法があり、更に六つに細分化されます。
区分 |
手段 |
内容 |
リスク
コントロール
|
回避 |
リスクを伴う活動自体を中止し、予想されるリスクを遮断する対策。 リターンの放棄を伴う。 |
損失防止 |
損失発生を未然に防止するための対策、予防措置を講じて発生頻度を減じる。 |
|
損失削減 |
事故が発生した際の損失の拡大を防止・軽減し、損失規模を抑えるための対策。 |
|
分離・分散 |
リスクの源泉を一箇所に集中させず、分離・分散させる対策。 |
|
リスク ファイナンシング |
移転 |
保険、契約等により損失発生時に第三者から損失補てんを受ける方法。 |
保有 |
リスク潜在を意識しながら対策を講じず、損失発生時に自己負担する方法。 |
出典:「稼ぐ力を支えるリスクマネジメント 第4章」(中小企業庁)から引用
- リスクコントロール
リスクコントロールとは、損失の発生頻度と大きさを削減する方法です。
たとえば、リスクのある業務をやめる、リスク発生の頻度を減らすためのルールを作る、発生しても被害が小さくなるように対策する、などがあります。
- リスクファイナンシング
リスクファイナンシングとは、損失を補てんするために金銭的な手当てをする方法です。
具体的には保険への加入や、リスクが発生した場合のための予備資金の確保といった対応が該当します。
モニタリングおよび改善を行う
リスクへの具体的な対策を行った後は、その対策が機能しているか、時間の経過とともに効果が薄れていないかを定期的にモニタリングすることが重要です。
リスクは社会環境や事業内容の変化とともに変わっていくため、リスクが顕在化したとき以外にも、タイミングを決めて定期的に行うようにしましょう。
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企業リスクを管理する際のポイント5選
次に、リスクマネジメントの手順を踏まえたうえで、企業が日頃からどのようにリスク管理の仕組みを作っておくべきか、具体的に確認していきましょう。
ここでは、リスクマネジメントを成功させるために欠かせない5つの重要なポイントを紹介します。
経営トップの関与
リスクマネジメントを効果的に進めるには、経営トップが自ら関わり、会社全体にリスク管理の重要性を示すことが欠かせません。
企業活動を続ける以上、すべてのリスクを完全になくすことはできません。だからこそ、経営トップがリスクを正しく理解し、先頭に立ってリスク管理体制の構築を進めることが重要です。
さらに、経営者が自らリスク対策に取り組む姿勢を示すことで、ステークホルダーからの信頼を高める効果も期待できます。
専任チームの設置
リスク対策を行うには、企業全体の状況を踏まえて危機管理体制を整える必要があり、その役割は経営企画や経営戦略部門が担う場合もあれば、リスク対策に特化した専任部署を設ける場合もあります。
専任チームは、平時にはリスクの未然防止や従業員向けの教育を行い、緊急時には経営陣の補佐や危機管理対策本部の中心的な役割を担います。
ただし、専任チームにリスク管理を丸投げするのではなく、全社で連携してリスク対策にあたれるようにするため、日頃から情報を共有しておきましょう。
危機管理マニュアルの作成
危機管理マニュアルの作成は、企業が予期せぬ危機的状況に迅速かつ効果的に対応するための基盤となります。
現在、厚生労働省のホームページでは、「危機管理対策マニュアル策定指針」が公開されています。定期的な改訂が行われており、自社の危機管理マニュアルを作成時に活用する場合は、最新版を参照しましょう。
継続的な教育の実施
事業活動では、従業員の小さなミスが甚大なリスクへとつながる恐れもあります。そのため、リスク対応の定期的な教育や訓練を継続して行いましょう。
特に、ちょっとした「判断ミス」「連絡ミス」「対応ミス」が結果的に大きなリスクを招いてしまうことを、従業員に自覚してもらう必要があります。
従業員のリスク対応力を強化する訓練として、「シミュレーショントレーニング」と「メディアトレーニング」が効果的です。
シミュレーショントレーニングは、具体的な状況を再現しながら行う訓練です。これにより、従業員はリスク発生時の判断力や行動力を身につけることができ、緊急時にも冷静かつ迅速に対応する力が養われます。
一方、メディアトレーニングは、記者会見などで報道陣に対応するスキルを高める訓練です。業務災害や施設の事故等、人命に関わるようなリスクが発生した場合、企業に対する反感は非常に強まります。そのため、誠意のある的確な対応ができるように準備しておきましょう。
定期的な見直し
リスクマネジメントの効果を最大化するためには、定期的な見直しも欠かせません。消費者行動の変化や法改正など、新たなリスク要因は次々に発生します。
そのため、現在進めているリスク対策だけでなく、まだ対策が講じられていないリスクについても、外部環境や事業環境の変化に応じて見直す必要があります。
定期的にリスク対策の進捗を確認しつつ、必要な対応を講じましょう。
▼リスク管理部門向け、企業のSNSデータを活用したリスクマネジメント事例
デジタルリスクに備えるならエルテス
エルテスは、中小企業から大手企業まで1,000社以上の導入実績を誇るデジタルリスクマネジメントを強みとする企業です。
デジタル領域のリスクを把握する実態調査やリスク発生時に備えた体制構築、リスクを予防する研修の実施など、リスク対策をサポートします。リスクマネジメントに必要な社内体制の整備からリアルタイムでのリスク検知、リスク発生後の対応や評判回復まで、一貫して支援します。
詳しくは、お気軽にお問い合わせください。
WEBリスクマネジメントの相談は、エルテスへ
まとめ
今回は企業リスクについて紹介しました。
企業活動にはさまざまなリスクがあり、「もし起きたらどうするか」ではなく、「起きる前にどう備えるか」が重要です。
Webリスクマネジメントについて知りたい方は、こちらのコラムもぜひ併せてご覧ください。