
情報持ち出し調査は十分?内部不正の兆候を検知し、未然に防ぐ
リモートワークの普及や業務委託の増加など、現代の多様な働き方が進む中で、企業を取り巻く情報セキュリティリスクは高まっています。特に深刻なのが、組織の内部関係者による情報持ち出しのリスクです。情報の流出経路が特定できなければ、根本的な対策を講じることもできず、類似のインシデントが再発する可能性を常に抱えることになります。
このコラムでは、不十分な情報持ち出し調査がもたらす具体的なリスク、内部不正の兆候を早期に検知する方法、そして外部の専門家を活用して実効性のある対策を講じる重要性について解説します。
目次[非表示]
- 1.情報持ち出し調査で生じる課題
- 2.情報持ち出しが企業にもたらす3つの影響
- 2.1.顧客や取引先との信頼関係の崩壊
- 2.2.ブランドイメージと市場価値の低下
- 2.3.法的責任と経済的損失の発生
- 3.内部不正による情報持ち出しの兆候
- 3.1.権限外のデータアクセス
- 3.2.大量データのダウンロード・送信
- 3.3.勤務時間外の不審な操作
- 4.典型的な情報持ち出し手法
- 4.1.外部記録媒体の悪用
- 4.2.私用クラウドストレージへのアップロード
- 4.3.私用メールアドレスへの送信
- 4.4.印刷・スクリーン撮影
- 5.社内で講じるべき情報持ち出し対策
- 5.1.情報持ち出し規定の策定と教育
- 5.2.ログ管理と監視体制の構築
- 5.3.入退社時に機密保持誓約書の記入
- 6.外部専門家に情報持ち出し調査を依頼するメリット
- 7.平時からの情報持ち出し対策にはエルテスの内部脅威検知サービス
- 7.1.実績と導入企業の声
- 8.まとめ
情報持ち出し調査で生じる課題

情報持ち出し調査では、技術面だけでなく組織的・運用面にも多くの課題が存在します。例えば、証拠となるPC操作ログ、ファイルサーバーへのアクセスログ、クラウドサービスの利用履歴などのデータは企業内の複数システムに分散しており、すべてを突き合わせて時系列で整理するには膨大な工数が必要です。その結果、調査チームは膨大なログに振り回され、インシデントの全体像を把握できないまま調査が長引くことがあります。
また、情報持ち出し調査には高度な専門知識と経験が要求されますが、社内にそのノウハウを持つ人材が限られている企業も少なくありません。そのため、対応が特定の担当者に依存しやすく、管理職や法務部門へ提出する客観的かつ説得力のある報告書の作成にも時間を要してしまいます。
さらに、調査に人的リソースを割くあまり本来業務が停滞すると、他部署から不満が出るなど組織全体に影響が及びます。こうした問題を放置すると、インシデント対応がさらに遅れ企業活動に深刻なダメージを与える恐れがあります。
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情報持ち出しが企業にもたらす3つの影響

情報持ち出しは、単に社内データが外部へ流出するという技術的な問題にとどまりません。ここでは、情報持ち出しが企業にもたらす代表的な3つの影響について説明します。
顧客や取引先との信頼関係の崩壊
顧客情報や取引先機密の漏洩は、長年かけて築いた信頼を一瞬で失う可能性があります。情報漏洩が外部に公表されると「自社の情報を適切に管理できない」という印象を与え、契約の見直しや取引停止など、直接的なビジネス損失につながる場合があります。また個人情報保護法の厳格化もあり、情報漏洩が社会的責任問題となって批判の声が高まりやすい状況です。
ブランドイメージと市場価値の低下
情報漏洩事故が公表されると、企業のブランドイメージは著しく毀損されます。SNS やニュースを通じてネガティブな情報が瞬時に拡散する現代では、長年培った企業価値が短期間で失墜する危険性があります。ブランド価値の低下は企業の市場価値にも直結し、上場企業であれば株価下落、投資家評価の低下を招きます。また、セキュリティリスクを懸念する優秀な人材が応募を避けるようになり、採用活動にも悪影響が及ぶ可能性があります。
法的責任と経済的損失の発生
個人情報や営業秘密が流出した場合、被害を受けた個人や取引先から損害賠償請求を受ける可能性があり、個人情報保護法などの法令に基づく行政指導や罰則の対象となることもあります。経済的損失も大きく、原因究明のためのフォレンジック調査費用や法務対応にかかる弁護士費用、社外説明や謝罪対応に必要な広報関連コストなどの支出が発生します。
加えて、再発防止のためにセキュリティ体制を見直し、システムを再構築する必要が生じるケースも多く、結果として多額の投資が必要となります。さらに、事故対応による業務停止や信用低下に伴う新規顧客獲得機会の喪失、既存顧客の離反といったダメージも考慮しなければなりません。
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内部不正による情報持ち出しの兆候

内部不正による情報持ち出しは、突発的に起こるものだけではなく、事前にいくつかの兆候が見られるケースが多くあります。日常業務の中で現れる違和感を見逃さず、ログや行動パターンとして把握できる体制を整えておくことが、早期発見と被害抑止につながります。
権限外のデータアクセス
営業担当者が経理部門や開発部門の機密データに頻繁にアクセスするなど、業務上の権限に必要のないデータ参照は不自然な動きです。こうした不必要なアクセスは情報持ち出しを企てる準備行動の可能性があるため、PCやサーバーのアクセスログを常時監視し、「誰が、いつ、どの情報にアクセスしたか」を把握する体制を整えておく必要があります。
大量データのダウンロード・送信
短時間に大量のファイルを取得したり、私用クラウドストレージやメールへまとめてアップロードしたりする動きは注意が必要です。例えば、在宅勤務などの理由で自宅から業務データを私用クラウドにアップロードするケースでは、通常の業務量から大きく逸脱したデータ流出につながるリスクがあります。データ転送ログを継続監視し、流出につながりやすいファイル名やパターンを検知する仕組みが有効です。
勤務時間外の不審な操作
深夜や休日、始業前後など通常業務時間外にシステムへアクセスし、多数のデータを操作する行為も典型的な兆候です。例えば退職を控えた従業員が休日の深夜に機密ファイルを大量ダウンロードし、勤怠記録には残っていない操作を行うケースがあります。不審なアクセスは、勤怠ログと照合することで早期に発見できることがあります。
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典型的な情報持ち出し手法

内部不正で実際に使われやすい情報持ち出し手法として、代表的なものは以下の通りです。
外部記録媒体の悪用
USBメモリや外付HDDなどに機密データをコピーして持ち出すケースは依然として多く見られます。企業でUSBデバイス利用の制限が緩いと、退職予定の従業員が私用デバイスに大量データをコピーしても発見が遅れる恐れがあります。PC操作ログにはファイル操作やUSBデバイスの接続履歴が記録されるため、これらのログを監視することで外部記録媒体の悪用も検知できます。
私用クラウドストレージへのアップロード
私用クラウドを経由して社外にデータを持ち出す手法も増えています。私用アカウントなら短時間に大量のデータを外部に移せるため大きなリスクです。したがって、社用以外のクラウドストレージへのアクセスやアップロード動作は特に注意深く監視し制限する必要があります。
私用メールアドレスへの送信
在宅勤務時に業務ファイルを私用メールアドレスへ送信するケースも散見されます。特に退職前後に業務資料が私用メールに送られると、発覚が遅れて対処が困難になります。メール送信ログを適切に記録・監視し、私用メールアドレス宛のファイル送信を抑止する対策が求められます。
印刷・スクリーン撮影
システム上の制限を回避するため、資料を印刷して持ち帰ったり、画面をスマートフォンで撮影したりする行為も確認されています。物理的な管理や操作ログの取得を組み合わせた対策が求められます。
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社内で講じるべき情報持ち出し対策

内部不正による情報持ち出しを未然に防ぐには、組織全体で以下のような多角的な対策を講じることが必要です。
情報持ち出し規定の策定と教育
まず、情報の取り扱いルールを明文化し、全従業員に周知徹底します。機密情報の持ち出しには申請・承認を必須とする、USBデバイスは原則禁止とする、退職時に私物端末や媒体の有無をチェックする、など具体的な手順を規定します。併せて定期的なセキュリティ教育を実施し、情報漏洩リスクと違反時の社内処分について明確に伝えることで、従業員の意識を高めることが抑止効果につながります。
ログ管理と監視体制の構築
情報持ち出し対策の技術的な要は、各種ログの取得と監視にあります。PC操作ログやファイルサーバーアクセスログ、メール送受信ログなど、多様なログを継続的に収集・保管することで、インシデント発生時に「誰が、いつ、何を」したかを追跡できます。例えば、PC操作ログにはファイル操作やUSBデバイス接続の履歴が、サーバーアクセスログには機密データへのアクセス記録が残ります。
しかし、実際には多くの企業がログを個別にしか管理せず、膨大なデータを分析しきれていないのが現状です。このままでは情報持ち出し調査が長期化し見落としのリスクが高まるため、統合ログ管理システムを導入し、UEBAのような仕組みで異常行動を自動検知できる環境を整えることが重要です。
入退社時に機密保持誓約書の記入
情報持ち出し対策として、機密保持誓約書の運用も非常に重要です。入社時に従業員から機密保持誓約書への署名を得ることは、企業秘密や個人情報の重要性を従業員に認識させ、違反時の法的責任を明確にする役割を果たします。さらに、退職時には改めて機密保持義務を通知することで、万が一情報持ち出しが発生した場合に、生じた損害について損害賠償請求を行うことも可能です。
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外部専門家に情報持ち出し調査を依頼するメリット

内部リソースだけで情報持ち出し調査を完結させることが難しいケースでは、外部の専門家を活用することも有効です。特にインシデントの規模が大きい場合や、不審なマルウェアの解析など高度な調査技術が必要な場合、社内だけでは対応が困難です。専門の情報持ち出し調査会社は豊富な経験と高度な技術を備えており、自社では気付けない痕跡も検出できます。また、外部の独立した視点により、調査に公平性・客観性が保たれる点も大きな利点です。
平時からの情報持ち出し対策にはエルテスの内部脅威検知サービス

エルテスの内部脅威検知サービス(Internal Risk Intelligence)は、内部不正や情報漏洩につながるリスク行動を早期に捉え、迅速な対応につなげるためのマネジメントサービスです。不正なデータアクセスや情報の持ち出し、不審なメール送信といった兆候を検知した段階でアラートを発し、被害が顕在化する前の初動対応を支援します。
内部脅威検知サービスは主に次のような特徴があります。
・既存のログをそのまま活用でき、追加ソフトウェアの導入が不要
・ログの収集体制が未整備な企業に対しては、構築支援から対応可能
・業務を逸脱した操作や、機密情報への不自然なアクセスを特定
これにより、従来のルールベースのログ監視では把握しきれなかった内部リスク行動を捉え、重大なインシデントに発展する前段階での対応を可能にする体制を構築できます。
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実績と導入企業の声
内部脅威検知サービスは、大手製造業や金融機関、IT企業、研究機関など幅広い業種で採用されており、解析対象ユーザーID数は30万IDを超えています。株式会社アイ・ティ・アールが提供する調査レポート「ITR Market View:エンドポイント・セキュリティ対策型/情報漏洩対策型SOCサービス市場2025※1」でも、エルテスの内部脅威検知サービスがUEBA運用監視サービス市場シェアNo.1を獲得したと報告されています。
導入企業様からは、以下のような評価をいただいております。
ログ分析の負担が軽減され、従業員の振る舞いが可視化されたことで意識向上につながった。
日常的にログを確認できるようになり、退職予定者だけでなく現職の不正行為者を追跡できるようになった。
<参考情報>
※1出典:ITR「ITR Market View:エンドポイント・セキュリティ対策型/情報漏洩対策型SOCサービス市場 2025」UEBA運用監視サービス市場:ベンダー別売上金額シェア(2024年度)
まとめ
社内からの情報持ち出しは、企業の社会的信用やブランド、財務面に多大なダメージを与える深刻なリスクです。不十分な情報持ち出し調査で「誰が、いつ、何を」したのか特定できないままでは被害を拡大させるだけでなく、将来的な同様事件の再発リスクも高めてしまいます。
有効な対策としては、従業員の不審な行動パターンや持ち出し手法の兆候を押さえたうえで、明確な持ち出し規定の策定と徹底教育、PC操作ログやアクセスログなどの技術的監視体制の構築、機密保持誓約書の活用など、多角的なアプローチが求められます。
エルテスでは、情報持ち出しに対して高度な調査・解析ノウハウと専門サービスを提供しています。お客さまの環境に最適な監視体制や運用方法について相談があれば、ぜひお気軽にエルテスにお問い合わせください。
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情報漏洩・内部不正対策のご相談は、エルテスへ







