ネット炎上レポート 2022年6月版
2022年6月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2022年6月のネット炎上トレンド
2022年6月に最も多かった炎上対象は、「企業・団体」で63%(前月比14ポイント増)という結果になりました。前月よりも大きく増加しましたが、平均的な数値に戻っています。次いで「マスメディア」が17%(4ポイント増)「個人・著名人」が9%(29ポイント減)となりました。上位3区分は、前月と同様の結果となり、全体的には例月通りのトレンドとなっています。
また、「企業・団体」の炎上区分の内訳は、「サービス」が全体の39%(17ポイント増)となり、前月より大きく増加しましたが、平均的な数値に戻っております。次いで「自治体・団体」と「メーカー」が9%を占めています。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容では「情報漏えい/内部告発」が24%(24ポイント増)となり、前月より大幅に増加し、複数の企業や団体で情報漏えいが発生した影響が見られました。
また、「不適切発言・行為、失言」が全体の31%(32ポイント減)、「顧客クレーム・批判」も同じく31%(前月と変化なし)を占めました。「不祥事/事件ニュース」は14%(8ポイント増)という結果となりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
社用車での危険運転がSNSに投稿され、炎上
某メーカーの社用車の危険運転がドライブレコーダーの映像に記録され、動画をSNS上にアップロードされたため炎上しました。
ネット上では、企業名とともに映像内に写りこんだ企業ロゴから、企業や従業員に対するコンプライアンス意識の欠如を指摘する批判的な意見が相次ぎました。
企業側は、当日中にこの件について謝罪と再発防止策を公表しました。
情報漏えいが多発、その後の広報対応でも批判
6月には、情報漏えいの事例が複数発生し、事象に関する企業の対応が批判されています。
a) 某自治体では、協力企業が個人情報を入れたUSBを紛失し、情報が漏えいする事象が発生しており、企業の管理体制に対する批判や自治体の会見にてパスワードの桁数を開示してしまったことに対してもセキュリティ意識の低さを指摘する声が多く見られています。
b) 2021年12月に利用客からクレジットカードの不正利用が発生しているとして話題となったECサイトの運営企業が6月に入り情報漏えいを認め、不正アクセスによるものだったと公表しました。企業対応の遅さを指摘する声が相次ぎ、炎上しました。
2つの事例では、情報漏えいという事象自体についての批判はもちろん、企業・団体の対応に対する批判が多く見られています。事象が発生した場合には、迅速で適切な企業対応が求められ、対応の遅延や不適切な対応はさらなる批判を呼ぶことが想定されます。
事象発生後の適切な対応は、企業のブランドイメージ回復や危機管理ができることを認識させることが可能となります。
まとめ
従業員のコンプライアンス違反の様子がネット上で拡散し炎上した事例では、再発防止策を当日にリリースしており、ネット上では迅速な対応であったとの声も上がっています。一方で、情報漏えいの2つ事例では企業・団体の対応が不適切であるという批判が炎上を加熱させており、事象発生後の対応の重要性がうかがえます。
適切なだけでなく、迅速であることも重要となるため、企業としては有事の際に対応できるよう、危機管理広報マニュアルやメディアトレーニングなど体制を構築しておくことが重要と言えます。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。