ネット炎上レポート 2023年1月版
2023年1月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2023年1月のネット炎上トレンド
2023年1月に最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が67%(前月比22ポイント減)を占めました。前月比での大幅な低下は、昨年12月がイレギュラーな増加であり、平均的な数値に戻っているといえます。次いで、「個人・著名人」は19%(12ポイント増)、「マスメディア」は7%(3ポイント増)となりました。
また、「企業・団体」の炎上区分の内訳は、「サービス」が全体の45%(19ポイント減)となっています。次いで「自治体・団体」(前月同数)と「IT」(3ポイント増)がそれぞれ7%、「教育機関」(3ポイント減)と「インフラ」(4ポイント増)がそれぞれ4%という結果になりました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容では、「不適切発言・行為、失言」が39%(1ポイント減)、「顧客クレーム・批判」が33%(15ポイント減)を占めました。次いで、従業員の不祥事が相次いだ「不祥事/事件ニュース」が28%(20ポイント増)という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
社外のコンプライアンス違反行為の表出と過去事象の掘り起こしによる炎上
公共交通機関内で撮影された、ある動画がSNS上で拡散されました。その動画は、数年前に撮影されたもので、寝ている女性の隣に座る男性が女性の体に触れる様子、いわゆる痴漢行為が収められており、男性の不適切な行動がユーザーから批判されました。動画が拡散される中で、痴漢行為を行った男性の知り合いを名乗るユーザーからの情報も助けとなり男性の個人情報や所属企業が特定され、企業に対しても批判が寄せられました。
企業から本件に関する声明は出されていませんが、この対応についても所属企業に対してユーザーからは再度批判の声が散見されました。
抽選の当選者に対して景品の返還を求めた企業に批判が殺到
あるゲームブランドの公式SNSアカウントがパネルプレゼントのキャンペーンを実施したところ、当選者が、「当選したが、キャラクターを知らない」という趣旨の投稿を行い、SNSアカウントが一方的にその投稿をもとに、当選者への景品の返却の要請と再抽選の実施を投稿しました。これら一連の動きに対して、規定に違反しているわけではなく理不尽であると、公式SNSアカウントに対して、批判的な反応が相次ぎました。
批判を受けて企業からは不快な思いをさせたことについて謝罪の声明が公式Webサイト上でリリースされ、規定の見直しや公式アカウントの投稿ルールの見直しを行うといった再発防止にも言及がありました。
まとめ
1月にはユーザーが炎上事象の原因やその後の追求に大きく関わった事例が目立ちました。
コンプライアンス違反行為がSNS上に表出した事例では、撮影された動画が数年前であったにも関わらず多くの批判を集め、企業に対しても対応を求める声が散見されました。この事象からは、SNS上に表出した従業員のコンプライアンス違反行為に炎上の時効はなく、炎上を防止するためには、コンプライアンス違反となる行為自体の抑制に企業が取り組むことが重要であると分かりました。
先月末から今月に外食チェーンや小売店で頻発する顧客の不適切行為による炎上にも通じます。動画や画像さえあれば、多くのユーザーによって、個人情報が特定され、その所属組織にまで批判は波及します。
また、抽選の不適切な返却要請の事象においては、作品を知らないと投稿したユーザーが当選したことに対して批判が企業に寄せられていたことを公式声明で明かしており、ユーザーの声を反映した判断でしたが、当初企業側が定めていた抽選に関する規定には違反しておらず、不当であると批判が寄せられました。企画途中での当初の規定からの逸脱行為は批判を受ける可能性があるため、適切な対応といえる根拠や想定QAを事前に準備しておくことが必要であると言えます。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。