ネット炎上レポート 2023年5月版
2023年5月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2023年5月のネット炎上トレンド
2023年5月に最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が74%(前月比2ポイント増)を占めました。次いで、「マスメディア」は23%(14ポイント増)と大幅に伸びていますが、誤った情報を掲載していたメディアの炎上などが要因となっています。前月にインフルエンサー起因の炎上が目立った「個人・著名人」は3%(13ポイント減)と前月までの平均的な数値に戻っています。
また、「企業・団体」の炎上区分の内訳は前月の数値から大きな変動があった項目はなく、「サービス」が全体の31%(4ポイント減)、「メーカー」が26%(3ポイント増)で全体の半分を占めています。次いで「自治体・団体」が8%(3ポイント増)、「インフラ」(4ポイント減)、「IT」(1ポイント増)、「教育機関」(3ポイント増)がそれぞれ3%という結果となりました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容では、前月に企業活動に対して炎上が頻発した影響で53%と半数を占めていた「顧客クレーム・批判」が38%(15ポイント減)と前月までの平均的な数値に戻っています。次いで「不適切発言・行為、失言」が35%(2ポイント減)、「不祥事/事件ニュース」が15%(8ポイント増)、「異物混入」が8%(5ポイント増)、「情報漏えい/内部告発」が4%(4ポイント増)という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
プロモーション動画の表現が問題視され、炎上
6月には企業のプロモーションで用いられたPR動画の表現が問題視された炎上が複数発生しています。
A) 飲料メーカーのPR動画内において、草原でインコを鳥かごから放つ様子が描かれていたことに対して、インコは放鳥に向かない種類のため屋外に放つのは不適切であると指摘が散見されました。企業側はネットメディアの取材に対して動画の修正と謝罪のコメントを残しています。
B) 女性向けファッション誌の公式アカウントがInstagramで公開したPR動画で、他社の有名人形やドールハウスを燃やす描写が多くの批判を集めました。他社製品を燃やしていることへの批判とともに、雑誌に抱いていたイメージから逸脱していることが残念だといった論調が目立ちました。自社ブランドのパーセプション理解が及ばず、起きてしまった炎上とも言えます。
その後、企業は動画を公開したInstagramの公式アカウントで謝罪文を掲載しました。しかし、24時間後には閲覧できなくなるストーリーズでの発信だったため、この対応についても「なかったことにしようとしている」といった批判意見も見られています。
LGBTQに配慮した商品PRに批判殺到
スポーツ用品メーカーが発表した水着のPRに注目が集まりました。女性用のカテゴリーで販売されている水着モデルとして、生物学的には男性と思われる人物が起用されており、ネット上では否定的な意見が多く見られています。批判意見では「女性の着用イメージを湧かせることはできず、参考にならない」といったものが散見されました。批判しているユーザーの中には、メーカーの不買を訴える声も見られており、国内でも注目される事例となりました。
6月はLGBTQ+の権利啓発の活動が活発となる「プライド月間」に指定され、世界的にも盛り上がりを見せています。LGBTQなどの性的マイノリティの方々への偏見や差別を無くしていこうという社会的な動きに合わせて、国内でもLGBTQへ配慮したクリエイティブは注目を集めるテーマとなっています。一方で、行き過ぎた演出には、批判的な意見が生じうるケースもあるという理解が大切です。
まとめ
5月には、企業が発信したクリエイティブが問題視される事例が相次ぎました。動物愛護の観点や他社製品への配慮、ジェンダーの問題といった今までと異なる視点での指摘が企業に向けられ、企業は最新の論調に配慮した活動が求められています。
ネットは広く情報を伝えることができるメリットがある反面、様々な価値観やバックグラウンドを持ったユーザーがいるため、ターゲットとしている属性以外のユーザーに意図しない伝わり方をするリスクをはらんでいます。企業として、ネット上で批判を受けうる可能性が想定された場合は、万が一に備えた事前の対応を準備しておくことを推奨します。
また、今回ご紹介した炎上事例から、世間、ネット上ではどのようなトピックスが盛り上がっていて、どのようなリスクに注意すべきなのか最新の情報をキャッチアップし、情報発信を担う部署内で共有しておくことが重要であると言えます。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。