ネット炎上レポート 2023年11月版
2023年11月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2023年11月のネット炎上トレンド
2023年11月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が84%(前月比2ポイント減)と前月に引き続き全体の8割以上を占める形になりました。次いで「個人・著名人」が9%(9ポイント増)、「マスメディア」が5%(2ポイント減)という結果になりました。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は「サービス」が全体の48%(9ポイント増)となりました。次いで、「自治体・団体」が17%(1ポイント減)、前月大きなポイントの増加が見られた「メーカー」が12%(17ポイント減)と前月までの平均的な数値に戻っています。「IT」は5%(5ポイント増)、「インフラ」が2%(2ポイント増)と続きました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、「顧客クレーム・批判」が48%(10ポイント減)と全体の半数近くを占めています。次いで代表のSNSでの発信が炎上するなど事例が散見された影響で「不適切発言・行為、失言」が34%(17ポイント増)と大きく増加しました。「異物混入」が9%(9ポイント増)、「不祥事/事件ニュース」6%(2ポイント減)と続き、前月複数の事例が見られたことで大幅に増加していた「情報漏えい/内部告発」は3%(14ポイント減)という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
他施設と比較し、自施設が優れていると認識させる比較広告を行った企業に批判殺到
とある宿泊施設のPR動画に批判が殺到しました。動画の内容は、競合となる旅館での従業員の対応を取り上げて、ゆっくり過ごすことができないと表現した上で、自施設では時間の縛りなく過ごすことができると謳った所謂「比較広告」でした。これに対してユーザーからは、「他社をおとしめる広告は不快である」という声が多く見られる事態となりました。
企業側は批判を受け、動画を非公開とした上で「誰かをおとしめる意図や否定的な印象を与える意図はなかった」とコメントを残しています。
自社で比較広告を採用する場合には、比較対象の批判になっていないか、ユーザーからの第三者視点でチェックすることが必要であるといえます。
イベントに出店した商品が腐っていたことによる店舗対応が炎上
イベントに出店していた手作り洋菓子店の商品の購入者から、食中毒症状が発生したことがSNSで話題となりました。食中毒症状は複数人で発生していましたが、会場で問い合わせた購入者に対しては商品の交換を打診する、イベント終了後には絵文字を使った謝罪文をSNSに投稿するなど、店舗側の対応に批判が殺到しました。
今回の事象については厚生労働省からリコールが発表されており、大きな話題となりました。しかし、店舗側の対応が二転三転したことや対応の不手際などで、炎上が長く尾を引く事態となりました。
購入者の健康を害する可能性のある製品の不具合は、企業や店舗の規模に関係なく、迅速かつ適切な対応を求められることが分かる事例となりました。
まとめ
11月に特徴的に話題となった事例のうち、1つ目の事例は広告表現についての炎上でした。
比較広告は国外では珍しい手法ではなく話題になることもありますが、今回のようにネガティブな意見が目立つケースは少ないように見受けられます。国内では、比較広告自体が話題になることが多くないこともあり、競合他社と比べて自社の優位性を表現する際に、他社が劣っていると認識される表現には不快と思うユーザーが多いように感じました。
対策として、自社の優位性を表現したいために他社を批判していると認識されるクリエイティブとなっていないかを企画時からチェックしておく必要があることに加え、クリエイティブの露出に合わせてユーザーの論調を定点観測することを推奨します。
2つ目の事例では、店舗の対応に関する炎上が見られましたが、返金等の対応方針に一貫性がないことや食中毒症状に関する体調を心配する声がないなどの批判から、購入者に寄り添った適切な対応を迅速に実施することの必要性が表面化しています。
クライシス事象は頻繁に発生するものではないため、適切に対応するためには発生時に備えた事前のリスクマネジメントが求められます。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。
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