
ネット炎上レポート 2025年11月版
2025年11月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2025年11月のネット炎上トレンド
2025年11月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が78%(前月比4ポイント減)と全体の約8割を占める状況が続きました。次いで、「マスメディア」(前月同数)と「個人・著名人」(4ポイント増)がそれぞれ11%となりました。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は、「サービス」が32%(25ポイント減)、「インフラ」が25%(25ポイント増)とポイントの大幅な増減が見られました。インフラ企業の増加要因としては、鉄道企業の公式キャラクターに関する炎上や設備に関する対応の炎上が見られたことが挙げられます。そのほか、「メーカー」が14%(3ポイント増)、「自治体・団体」が7%(4ポイント減)という結果になりました。(図1)

収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、代表のSNSでの不適切な投稿が炎上した企業の事例などが見られた「顧客クレーム・批判」は59%(14ポイント増)と大幅に増加しました。「不適切発言・行為、失言」が32%(前月同数)となりました。続いて「不祥事/事件ニュース」が5%(9ポイント減)、「異物混入」が4%(前月同数)という結果となりました。(図2)

収集データを元にエルテスが作成
生成AIで出力した画像を使った情報発信が炎上
11月には生成AIで出力した画像を使用した情報発信が複数の組織で炎上しました。
A) あるニュースメディアが発信した写真が生成AIで出力されたものであるとして批判が殺到しました。生成された画像は、被写体を鮮明にする加工を施したものでしたが、メディアの指針として、「報道用の写真、グラフィックス、動画、音声作成に生成AIを原則使用しない」と定められており、違反している点が問題視されました。また、事実を伝えるべきニュースメディアの特性からも逸脱する行為として批判が集まりました。企業は再発防止を発表しています。
B) ある自治体が、公式SNSアカウントで発信したクマ出没情報がAIで画像生成されたフェイク画像であったことが話題を集めました。画像を作成した関係者から申し出があり、フェイク画像であることが発覚したことから、公式SNSアカウントから訂正と謝罪の声明が投稿されました。ユーザーからは、不安を煽る行為であり、悪質だといった画像の提供者への批判の声が多く寄せられました。
画像生成AIを利用した情報発信は企業属性やサービスの特性によって注意しなければいけない点が変動するため、自社のパーセプションを理解した上で画像生成AIを利用することが必要です。また、B)の事例からは、社外で作成されたクリエイティブに生成AIが使われていないか、フェイク画像ではないかというチェックも十分に実施しないと炎上リスクとなり得ることが分かりました。
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ナショナルチームのアンバサダーとクリエイティブに批判殺到
日本のナショナルチームのPRクリエイティブに多くの批判が寄せられました。クリエイティブのデザインが、韓国国旗に似ていると認識された点と、アンバサダーが韓国と日本の芸能事務所の共同出資で設立した企業所属であった点などへの批判が読み取れました。
この事象から、日本のナショナルチームという特性上、「日本以外の国を連想させる要素が含まれているのは適切でない」という意見が寄せられる可能性があることが分かりました。プロモーション企画時には、自社やブランドが社会からどのような期待を寄せられているかを把握した上で、企画を検討・チェックすることが求められます。
また、本来伝えたかった意図とは異なる伝わり方をして拡散・炎上してしまうケースも存在するため、批判が生じた場合には、ストーリーや背景を整理して、いつでも説明責任を果たせるように事前にFAQを準備しておくとともに、クリエイティブが公開後には炎上の火種がないかモニタリングすることを推奨します。
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まとめ
11月に発生している炎上の事象からは自社やブランドのパーセプション理解、その上でのコンテンツのチェックの重要性が改めて分かる事例が複数見られました。
1つ目と2つ目の事例は、2025年の炎上トレンドのひとつとも言える、生成AIの利用と情報発信に関する炎上でした。事例から、外部から提供された素材は生成AIの利用を含めたコンテンツチェックがより一層重要であることが分かりました。また、自社で作成していなくても、情報発信に利用した企業が批判を受ける可能性があり、危機管理に対する指摘が寄せられ、ブランド棄損に繋がるリスクをはらんでいます。
3つ目の事例においては、自社やブランドへの社会的期待からの逸脱が炎上のリスクとなることが分かりました。企画時にユーザーの論調からパーセプションを理解し、リスクを事前に認識しておくことで、逸脱による炎上リスクを低減できる可能性があります。また、国際的な情勢や問題に抵触する可能性がある場合は、多くの批判を呼ぶリスクがあることを認識する必要があります。批判を受けた場合には重度のブランド棄損につながり、事業進出など経営リスクまで発展する可能性があるため、情報を発信する際には、先述のリスクを念頭に置いた上で複数の目線でのコンテンツのチェックが求められます。
さらに、本来意図していない捉えられ方をしてしまうことをリスクとして考慮し、事前にFAQの整備やエスカレーションフローの設定をしておくことで、万が一批判が殺到してしまった場合にも迅速な対応を行うことが可能となります。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。







