
2025年の炎上トレンドと2026年の炎上予測|ネット炎上レポート総集編
今回は、2025年の炎上事例を振り返りながら、企業の広報担当者が炎上を回避するために、今後気をつけるべきトピックスを紹介していきます。
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2025年の振り返り
2025年も残すところあとわずかとなりました。2025年には、4月~10月に「大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)」、9月には東京都で「世界陸上(世界陸上競技選手権大会)」をはじめとする国際的なイベントが開催されました。
“炎上“や”SNS“という観点で2025年を振り返ってみると、ショート動画の進化やXにおけるAI機能「Grok」の拡充に代表される、生成AIの活用がSNSにおいても一般化するなど、ユーザーのSNS活用方法の多様化が特徴として挙げられます。
2025年の炎上トレンド解説の前に、“炎上“の定義についても触れたいと思います。
エルテスでは、2019年8月より下記を満たすものを炎上と定義し、日々の事例分析等を行っています。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2025年の炎上トレンド
数多の炎上事例の分析を行う中でトレンドとして、2つの要素が見えてきました。
生成AIの活用で企業の危機管理に指摘
様々なサービスにおいて、要約などの生成AIを活用した機能が拡充されています。これはSNSも例外ではなく、利便性のメリットがある一方で、ファクトチェックが不十分な情報で誤情報が拡散されてしまう、クオリティの面で問題のあるクリエイティブが生成されてしまうなどのデメリットがあることが露見している状況です。
生成AIによるクリエイティブを発信した企業が炎上するトレンドは昨年までも見られていましたが、2025年にも継続して炎上が発生しています。
昨年までと異なる特徴としては、問題視される批判の論点が「AIで生成したコンテンツを活用する企業の危機管理体制」に向けられるケースが目立つという点です。これまでは画像生成などを活用すること自体に「学習データの著作権等の権利問題を度外視している」といった批判が大勢を占めていましたが、「不自然な部分が残っている不完全なクリエイティブをそのまま採用してしまう」、「AIを使うべきでない場面で活用している」といった、企業側の生成AIに対する活用方針やリスク管理への批判や指摘が相次いで見られています。
AIの活用自体は効率化や費用などの面で多くのメリットをもたらし、活用が推進されていますが、炎上のリスクも伴っているのが現状です。リスク低減のためには、「企業が発信するクリエイティブでは必ずアウトプットを人の目でレビューする」などのリスク管理を含めた、企業としての活用方針を策定しておくことを推奨します。また、発信した情報に対する論調がネガティブになっていないかというリスクの早期検知も重要な対策と言えるでしょう。
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タレント起用が起因となった炎上が散見
タレントが不祥事を起こしたことで、企業が起用継続に関する批判を受けた炎上の事例は過去にも多数発生し、企業は対応を余儀なくされてきました。
2025年には、タレントの不祥事以外でも起用リスクで炎上する事象が発生しています。例えば、所謂ハイブランドがインフルエンサーマーケティングを実施したところ、ブランドの性質上、マーケティング手法として適切でないと批判が殺到した事例や、セクシータレントのイベントの衣装としてウェディングドレスを貸し出した企業に対して批判が殺到した事例など、自社やブランドが持たれている「○○であるべき」や「大企業であれば□□のはず」といったパーセプションから逸脱してしまうことによる炎上の事例が散見されました。
対策としては、マーケティング手法や起用タレントの選定の際に、自社のパーセプションを十分に理解し、企画がそこから大きく逸脱しないかといった観点でのチェックを実施することを推奨します。
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顧客対応の不満がSNS上に表出した炎上が散見
SNSの普及により、個別の顧客対応であっても、不満に思った顧客からSNS上に対応内容が晒され、批判の的となってしまうケースは少なくありません。
2025年には、店舗における転売対策が不十分であったことがSNSを通じて表面化し、社会問題化してしまった事例や、企業が発表した声明に対して店舗での顧客対応の不備を告発する投稿が殺到した事例など、現場での問題がSNSで大きく批判されてしまう事例が相次いで発生しました。これまで、企業の本部には現場で発生している問題やクレームが店舗側から伝達されるのが一般的でしたが、誰もが情報発信者となり得るSNSの発達が助けとなって現場から連携される前にSNS炎上で事態を知ることで一次対応に遅れをとってしまう可能性があります。
炎上時にスピード感を持って適切な対応を検討するためには、現場からの情報連携と並行してSNS上からも自社やブランド、店舗での情報をキャッチアップできる体制を構築し、炎上を早期に発見することが重要となります。
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2026年の炎上はどうなるのか
2026年の炎上予測を3つのポイントで解説します。
1つ目は、企業対応に関する炎上リスクです。炎上時の企業対応を誤ることで炎上が発生することは、今までにも多く観測されています。
2025年から特徴的に見られている傾向として、論調を見誤って静観対応を選択した結果、炎上が沈静化せず長期化してしまうケースが見られています。いじめ問題が大きな話題となった教育機関の事例においても、当初の対応で不満を持った世論に対応を一転させています。この動きを狙って、ユーザーがSNSで大きく話題にすることで企業対応を覆そうという動きが見られる傾向があります。
企業としては一次対応の判断を見誤らないために、どのような点が批判され、どのような対応が求められているのかといった論調を見極めて対応を検討する必要があります。
2つ目は2025年のトレンドから引き続き、生成AIの活用による炎上リスクが挙げられます。
要因が複雑化していることは前項の通りですが、企業の属性やパーセプション次第では生成AIを活用すること 自体がリスクになり得ます。企業としては、過去にどのような要因で生成AI活用の炎上が発生し、どのような批判が寄せられたのかといった前例を理解するとともに、自社やブランドがどのようなパーセプションなのかを適切に把握したうえで、生成AIの活用方法や活用場所を企画し、自社としての生成AIに対する方針を整備しておくことを推奨します。
また、批判が寄せられた際の対応方針やQ&Aを事前に準備し、有事に備えて批判が見られないかをウォッチしておくことが重要です。
3つ目は、グローバル化に伴った国内におけるサービスの在り方と対応についての炎上リスクも無視できません。
コロナ禍が明け、日本国内においてはインバウンド需要が急速な成長を見せています。これまでは日本語のみの表記で問題なかった運用を外国語でも対応せざるを得ないといった現場オペレーションの変更に加えて、日本語以外でクレームや批判が拡散されるなどSNSでもリスクマネジメントが求められているのが現状です。場合によっては普及しているメディアが異なるため、国内で使われているメディアに加えて、ウォッチしておくべきメディア自体を増やしておく必要があります。
炎上リスクにおいても国内だけでなく国外も視野に入れたリスクマネジメントを検討することを推奨します。
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