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カスタマーハラスメントの事例を業種別・罪名別に解説!対応方法もお伝え

多くの企業では、カスタマーハラスメントの問題が頻発しています。これが原因で、精神状態が悪くなったり離職したりする人がいたりと被害は深刻になりつつあり、企業は有効な対策を迫られています。

カスタマーハラスメント対応のガイドラインを作成する際も、詳しい内容や業種ごとの違いなどを把握した上で、自社に適した対策を講じることが大切です。

本記事では、カスタマーハラスメントにおける業種別・罪名別の事例を中心に、対応方法なども解説します。


目次[非表示]

  1. 1.カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?
  2. 2.カスタマーハラスメントの例をご紹介
  3. 3.業種別のカスタマーハラスメントの事例
    1. 3.1.情報通信業
    2. 3.2.運輸業、郵便業
    3. 3.3.卸売業、小売業
    4. 3.4.宿泊業、飲食サービス業
    5. 3.5.生活関連サービス業、娯楽業
    6. 3.6.医療、福祉
  4. 4.犯罪に関わるカスタマーハラスメントの事例
    1. 4.1.傷害罪、暴行罪
    2. 4.2.脅迫罪
    3. 4.3.名誉毀損罪
    4. 4.4.強要罪
    5. 4.5.不退去罪
    6. 4.6.業務妨害罪
  5. 5.精神疾患を発症する恐れのあるカスタマーハラスメントの事例
    1. 5.1.心理的負荷が強いカスタマーハラスメント
    2. 5.2.心理的負荷が中程度のカスタマーハラスメント
    3. 5.3.心理的負荷が弱いカスタマーハラスメント
  6. 6.カスタマーハラスメントへの対応方法を紹介
    1. 6.1.相手を落ち着かせる
    2. 6.2.謝罪して解決策を提示する
    3. 6.3.相手によっては、毅然とした態度をとる
  7. 7.SNSで拡散されるカスタマーハラスメントにも対策を
  8. 8.まとめ
  9. 9.出典


​​​​​

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?

カスタマーハラスメントとは、顧客などからの言動の中で、要求の内容の妥当性に照らして要求を実現するための手段や態様が社会通念上不相当で、それにより労働者の就業環境が侵害されるものを指します。

顧客や取引先から迷惑行為を受けた従業員が正常に働くことができない状態になってしまった場合、その行為はカスタマーハラスメントに値すると言えます。


カスタマーハラスメントについての詳細はこちら

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カスタマーハラスメントの例をご紹介

  • 暴力をふるう

  • 暴言を吐く

  • 大声で怒鳴りつける
  • 長時間拘束する
  • 小さなミスに対して、「今すぐ来い」などと呼び出す
  • インターネットに書き込むなどと言って脅す
  • 会社に従業員を解雇するよう要求する
  • 正当な理由なく金品や特別待遇を要求する


業種別のカスタマーハラスメントの事例

カスタマーハラスメントの事例を業種別にご紹介します。

  • 情報通信業
  • 運輸業、郵便業
  • 卸売業、小売業
  • 宿泊業、飲食サービス業
  • 生活関連サービス業、娯楽業
  • 医療、福祉


情報通信業

  • 製品に異常がなかったにも関わらず、顧客が返品・返金を執拗に要求してきた。
  • 従業員に対して「頭が悪い上に性格悪い」といった人格否定となる発言をした。
  • 従業員に対して「殺す」「家に火をつける」といった脅迫にあたる発言をした。 


運輸業、郵便業

  • 精算機のエラー音が鳴ったため対応しようとした駅員に対し、「早くしろクズ!」「人殺しの会社で働いていて気持ちいいのか」などの暴言を吐いた。

  • 降車後にホームに居座ろうとする旅客を駅員が改札口に行くよう促したが、突然走り出し他の駅員の足の甲を踏みつけ、追いかけた駅員の背後から傘で臀部を突き負傷させた。

  • コールセンターに同一人物からの入電が短時間のうちに何度もあり、「センターに行く」「殺すぞ」といった暴言や、100回以上の無言電話もあった。その後、顧客は殺人予告によって逮捕された。


卸売業、小売業

  • 顧客が「20年前に購入した商品が壊れた」と無償で修理するよう要求。2日間にわたり企業や商品の輸入元に架電し、「購入時にしっかりとメンテナンスの説明を受けていない」などと長時間主張し続けた。
  •  顧客が揚げ足取りからの謝罪を要求。従業員が対応できないことを伝えると、「土下座して謝らないと許さない」と発言し、従業員は謝罪を行った。
  • 顧客が購入した商品が不良品だったため修理受付を行うも、納得せず従業員は謝罪。翌日に自宅まで来て謝罪することを求め、従業員は4日間にわたり深夜まで謝罪させられた。対応した従業員はトラウマになり、売り場に出ることに恐怖を感じるようになった。


宿泊業、飲食サービス業

  • 自動精算機での事前精算案内に納得しなかった顧客が、従業員に対して「俺は不動産会社の社長だ、お前をクビにしてやる」と大声で発言し、間に入った他の顧客にも暴言を吐いた。上役の従業員に対しては名刺を出させ、その場で破いた上で正座することを要求。従業員が断ると、「キャンセルするぞ」などと言いながらも最終的に精算に応じた。更なる暴言や他顧客とのトラブルに発展しないよう警察に相談し、返金と退館の対応を行った。
  • 汚れがないにも関わらず、宿泊する度に清掃が行き届いていないと指摘。顧客の前で清掃することや、部屋のグレードアップなどを求めた。
  • 顧客が半額値札の付いた弁当を自分の過失で落とし、販売できない状態になった。従業員が衛生の観点から販売不可であることを伝えると、その商品を販売するか、別の商品を半額に割り引くことを要求するなどして騒ぎ立てた。


生活関連サービス業、娯楽業

  • 顧客の安全を考慮してサービスを丁寧に断るも、フロアに響き渡るほどの大声で怒鳴り散らすほか、暴言を吐いたり、椅子を叩いたり、靴を投げるなど、およそ2時間にわたって威圧的な言動をした。以降も、不定期に売り場を訪れては怒鳴る行為が続き、従業員が怖がっている。


医療、福祉

  • 介護士が顧客から、食事介助中に蹴られたり、「胸を触らせろ」と言われるなどした。上司に報告したところ、「触らせれば納得するから、受け入れれば落ち着く。恥ずかしがっても女だから仕方ない」などと言われた。
  • 病院側の些細なミスや職員の言葉遣いについて1時間以上にわたり怒鳴りつけ、「納得できない」と医療費の支払いを拒否した。
  •  調剤薬局で順番に案内されているにも関わらず、「早くしろ」「急げ」と圧力をかけた。薬剤師が薬の説明をしている際には暴言を吐いた。


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犯罪に関わるカスタマーハラスメントの事例

犯罪の種類別にカスタマーハラスメントの事例をご紹介します。

  • 傷害罪、暴行罪
  • 脅迫罪
  • 名誉棄損罪
  • 強要罪
  • 不退去罪
  • 業務妨害罪


傷害罪、暴行罪

「不法な有形力の行使」と呼ばれる、殴る・蹴る・物を投げつけるといった行為により、被害者が怪我を負った場合は傷害罪(刑法第204条)、怪我を負わなかった場合は暴行罪(刑法第208条)となります。

  •  駅員がICカードの入れ方を顧客に教えたところ、逆上して駅員の右胸を殴打した。駅員は身の危険を感じ、警察に通報した。
  • 賃貸保証会社の従業員に家賃支払いを促され、激昂した顧客が従業員の首元をつかみ、壁に身体を押し付けた。従業員はすぐに警察に通報し、男性は現行犯逮捕となった。


脅迫罪

被害者あるいはその親族の生命・身体・自由・財産・名誉などを侵害する発言を行った場合、脅迫罪(刑法第222条)となります。

  • 役場での職員の対応に顧客が不満を持ち、夜間に職員を自宅に呼びつけ、「家はわかる。いなくても嫁もいるだろうから待たせてもらう」「木刀で後ろからぶち破ってもいい」などと8時間にわたり脅迫し、謝罪を強要した。
  •  飲食店の常連客だった顧客が、トッピングを大量に注文して残す嫌がらせを始め、店主が追加注文を断ると、卓上の調味料や爪楊枝をラーメンの中に入れ、椅子を蹴って立ち去った。店側が顧客を出入り禁止にしたところ、「店を壊す」「殺す」といった脅迫を電話でしつこく行った。警察に通報後、被害届が受理され顧客は罰金10万円の判決を受けたが、結果的に店舗は閉店に追い込まれた。


名誉毀損罪

公然に事実を摘示し、他人の社会的な評価を下げる行為は名誉毀損罪(刑法第230条)となります。

  • 衣料品店で、顧客がタオルケットに穴が空いているとクレームをつけて従業員に土下座させ、その様子を撮影し、SNSに画像とともに店舗と従業員の実名を載せて投稿。瞬く間にインターネットで拡散され、顧客を批判するコメントが相次いだ。顧客は名誉毀損罪で略式起訴され、30万円の罰金刑が科された。


強要罪

脅迫や暴行によって他人に義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害する行為は強要罪(刑法第223条1項)となります。

  • 宅配便の誤配送トラブルが連続で起きたことに対し、顧客が運送会社の所長に「どう責任をとるんだ」「ミスした従業員をクビにしろ」などと怒鳴って土下座を要求し、その様子を撮影。顧客は強要罪で起訴され、懲役10か月、執行猶予3年の有罪判決が言い渡された。


不退去罪

店舗や施設から退去を求められたにも関わらず、正当な理由なしに退去しなかった場合、不退去罪(刑法第130条)となります。

  • 飲食店にて、注文品を出す順番を間違えられたことに顧客が激怒。店側が退去を求めるも顧客は居座り続け、不退去罪で現行犯逮捕された。
  • 病院施設にて、利用者が職員から幾度も退去を求めた上、退去命令書を交付したものの無視して居座り現行犯逮捕された。


業務妨害罪

威力(他人の自由意思を制圧することに値する勢力)や偽計(他人の不知や錯誤を利用して欺くこと)によって業務を妨害した場合、業務妨害罪(刑法233条・234条)となります。

  • 飲食店にて、顧客が他の顧客の注文品である寿司にワサビを乗せて、撮影した動画をSNSに投稿。動画が拡散され、店側は信用を落とし売り上げが減少した。顧客は威力業務妨害で送検となった。
  • ラジオ番組への電話が通じなかったという理由で、顧客が通信会社に1週間に400回を超えるクレーム電話を行った。内容は「不当な業務の謝罪に来い」など嫌がらせに近く、会社側は警察に相談。顧客は業務妨害罪で逮捕された。


精神疾患を発症する恐れのあるカスタマーハラスメントの事例

カスタマーハラスメントを受けた従業員は、精神疾患を発症する可能性もあります。

下記のレベルによって「心理的負荷を強く受けた」と判断された場合、また半年以内に適応障害やうつ病といった精神疾患を患った場合は、基本的に労災が認められます。

  • 心理的負荷が強いカスタマーハラスメント
  • 心理的負荷が中程度のカスタマーハラスメント
  • 心理的負荷が弱いカスタマーハラスメント


心理的負荷が強いカスタマーハラスメント

  • 反復・継続的に、人間性や人格を否定するような言動受けた
  • 反復・継続的に、治療が必要になるほどの暴行などを受けた
  • 主張を訴えるための手段や態様が社会通念に鑑みて許容される範囲を超えるほどの迷惑行為をしつこく受けた など


心理的負荷が中程度のカスタマーハラスメント

  • 反復・継続的ではないが、人間性や人格を否定するような言動を受けた
  • 反復・継続的ではないが、治療が必要ない程度の暴行を受けた
  • 反復・継続的ではないが、主張を訴えるための手段や態様が社会通念に鑑みて許容される範囲を超えるほどの迷惑行為を受けた など


心理的負荷が弱いカスタマーハラスメント

  • 心理的負荷が中程度のカスタマーハラスメントの事例に至らない程度の言動を受けた


カスタマーハラスメントへの対応方法を紹介

主に顧客とやりとりする立場の従業員には、できる限りカスタマーハラスメントに発展させないこと、発展してしまった場合は落ち着いて対応させることが大切です。

現場で役立つカスタマーハラスメントへの対応方法をご紹介します。

  • 相手を落ち着かせる
  • 謝罪して解決策を提示する
  • 相手によっては、毅然とした態度をとる


相手を落ち着かせる

顧客が興奮している場合、まずは相手を落ち着かせる必要があります。

しっかり傾聴することはもちろん、言葉遣いを丁寧にし、低めのトーンでゆっくり話すことを心掛けましょう。相手の勢いに乗ってしまうとヒートアップする可能性があります。

また、勘違いや聞き間違いなどがきっかけで通常のクレームがカスタマーハラスメントに発展する場合もあるため、慎重に対応することが大切です。


謝罪して解決策を提示する

顧客のクレーム内容を聞き、状況や事実を確認した上で、企業・従業員側に非がある場合はしっかり謝罪し、解決策を提示しましょう。

ここで重要なのが落ち度に合わせた謝罪であり、行き過ぎた謝罪を行うと相手も過剰な要求をしてくる可能性があります。

また、顧客の要求に応えられない場合も、可能な限り会社の決まりを理由にせず、相手に寄り添って発言することが大切です。


相手によっては、毅然とした態度をとる

相手次第では毅然とした態度をとることも大切です。相手の勢いに折れてしまわないよう、気持ちを強く持って断り続ける姿勢を見せましょう。

悪質なカスタマーハラスメントの場合は、相手を上の立場だと思わず、対応な立場でひるまず話を進めることが重要です。

カスタマーハラスメントを行う人は、自分の立場が上だと考えていることが多いです。そのため、対等な関係として冷静に応じれば、相手の気持ちにも変化が起こり落ち着く可能性もあります。


SNSで拡散されるカスタマーハラスメントにも対策を

SNSの普及によってお客様対応を行う従業員の顔や名前をSNSで拡散する、あるいは拡散することを材料に脅される事例が増えており、カスタマーハラスメントから従業員を守るためには、SNSの対策も重要になっています。

株式会社エルテスではSNSをはじめとしてネット上の投稿を24時間365日モニタリングするサービスを提供しております。SNSで拡散されるカスタマーハラスメント投稿を監視・対応したい方はお気軽にご相談ください。

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まとめ

顧客との頻繁なやりとりが生じる仕事をしている場合、カスタマーハラスメントが原因でストレスを抱えている人もいるでしょう。そのような人は、カスタマーハラスメントへの対応方法を事前に把握し、実践していくことが大切です。

業種別・罪名別の事例や対応方法を紹介している本記事を参考にしていただき、カスタマーハラスメント対策として役立てはいかがでしょうか。


出典

厚生労働省「カスタマーハラスメント事例集」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001266535.pdf 

民法「e-Gov法令検索」
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045

厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準について」
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/001140929.pdf

咲くやこの花法律事務所「カスハラの事例!実際にあったカスタマーハラスメントの例を詳しく解説」
https://kigyobengo.com/media/useful/3732.html

    著者・監修|株式会社エルテス編集部
    著者・監修|株式会社エルテス編集部
    株式会社エルテスは、これまで多種多様な企業のデジタルリスク対策に尽力してきたノウハウを生かし、企業のリスク課題・デジタル課題に役立つコンテンツを提供しています。 編集部ではネット炎上やSNS運用トラブル、ネット上の風評被害・誹謗中傷、情報セキュリティ対策など様々なビジネスのリスク課題に関するコラムを発信しています。
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