
情報漏洩対策システムとは?種類・選び方と情報漏洩を防ぐポイントを解説
現代のビジネスにおいて、データは21世紀の石油とも称される最も価値ある経営資源です。企業の競争力の源泉である知的財産、顧客のプライバシーに関わる個人情報、経営戦略の根幹をなす財務データなど、これらが適切に保護されていることが企業活動の前提条件となっています。
しかし、データの価値が高まるにつれ、それを狙う外部の脅威や内部における取り扱いリスクもまた、飛躍的に増大しています。ひとたび情報漏洩インシデントが発生すれば、巨額の損害賠償や制裁金の支払い、原因究明やシステム復旧に伴う莫大なコストが発生します。
さらに深刻なのは、長年築き上げてきた社会的信用が崩れ、顧客離れやブランド価値の低下を招き、企業生命に関わる大打撃を被ることです。
このコラムでは、情報漏洩対策システムの基本的な考え方から、インシデント前に現れる兆候、代表的な対策技術の種類、そして予兆検知の重要性について解説します。
目次[非表示]
- 1.情報漏洩対策システムが必要とされる背景
- 2.情報漏洩インシデントの前に現れやすい兆候とは
- 3.情報漏洩対策システムの主な種類と違い
- 3.1.1.DLP(データ損失防止)
- 3.2.2.EDR(エンドポイントでの検出と応答)
- 3.3.3.CASB(クラウドアクセスセキュリティブローカー)
- 3.4.4.UEBA(ユーザー・エンティティ行動分析)
- 4.なぜ情報漏洩対策にUEBAが重要なのか
- 5.情報漏洩対策システムを選ぶ際のポイント
- 5.1.1.自社の業務環境と守るべきデータの場所に合致しているか
- 5.2.2.現場の生産性とセキュリティのバランスが取れているか
- 5.3.3.導入後の運用体制が自社のリソースに見合っているか
- 5.4.4.生成AIなどの「最新の脅威トレンド」に対応できるか
- 6.情報漏洩対策システムの運用を支援する「内部脅威検知サービス」
- 7.まとめ
情報漏洩対策システムが必要とされる背景
企業において情報漏洩対策システムの導入が急務となっている背景には、時代の変化に伴う「働き方」「技術」「法規制」の3つの大きなシフトがあります。こうした変化により、企業が守るべきデータは増加・分散しており、従来の対策だけでは十分な管理が難しくなっています。
では、なぜ今、多くの企業で情報漏洩対策システムの導入が進んでいるのでしょうか。その背景を見ていきましょう。
1.境界型防御の限界とゼロトラストへの移行
テレワークの定着やクラウドサービス(SaaS)の利用拡大により、企業の業務データは社内だけでなく、あらゆる場所に分散するようになりました。
これにより、社内と社外の境界線に壁を作る従来の「境界型防御」だけでは十分な対策が難しくなっています。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表している「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が組織向け脅威の2位に挙げられており、信頼しているはずのネットワークを経由して侵入されるリスクが高まっています。
順位 | 「組織」向け脅威 | 初選出年 | 10大脅威での取り扱い (2016年以降) |
1 | ランサム攻撃による被害 | 2016年 | 11年連続11回目 |
2 | サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 | 2019年 | 8年連続8回目 |
3 | AIの利用をめぐるサイバーリスク | 2026年 | 初選出 |
4 | システムの脆弱性を悪用した攻撃 | 2016年 | 6年連続9回目 |
5 | 機密情報を狙った標的型攻撃 | 2016年 | 11年連続11回目 |
6 | 地政学的リスクに起因するサイバー攻撃 | 2025年 | 2年連続2回目 |
7 | 内部不正による情報漏えい等 | 2016年 | 11年連続11回目 |
8 | リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃 | 2021年 | 6年連続6回目 |
9 | DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃) | 2016年 | 2年連続7回目 |
10 | ビジネスメール詐欺 | 2018年 | 9年連続9回目 |
出典:IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)「情報セキュリティ10大脅威 2026」
こうした状況を受け、「常に検証し、決して信用しない」というゼロトラストの考え方に基づき、データの動きそのものを24時間監視・制御する情報漏洩対策システムが必要不可欠となっています。
2.生成AIの台頭と高度化するサイバー攻撃
技術の進化はビジネスを加速させる一方で、新たな情報漏洩リスクを生み出しています。先ほどの10大脅威で初めて3位にランクインしたのが「AIの利用をめぐるサイバーリスク」です。
従業員が企業の許可を得ていない生成AIに、機密情報や顧客データを安易に入力してしまうような「うっかり漏洩」は、従来のセキュリティ対策では防ぎきれません。また、攻撃者側もAIを悪用して巧妙なフィッシングメールを作成するなど、手口が高度化しています。
さらに、データを暗号化するだけでなく盗み出して暴露するというランサムウェアの多重脅迫も常態化しており、人間の注意力やこれまでのウイルス対策ソフトだけに頼る防衛は限界を迎えています。
関連記事:生成AIに顧客情報をうっかり入力させないための入力統制ガイド
3.強化される法規制と内部不正への対応
データ保護に対する社会的責任は、年々重くなっています。個人情報保護法の厳罰化をはじめ、企業のコンプライアンス(法令遵守)に対する要求はかつてないほど高まっています。
万が一、情報漏洩を起こしてしまった場合の社会的損失は計り知れません。巨額の罰金や損害賠償だけでなく、ブランドイメージの失墜、取引停止など、企業の存続を揺るがす事態になりかねないのが現状です。
また、10大脅威では、「内部不正による情報漏えい等」も組織が警戒すべき脅威として挙げられています。退職者によるデータ持ち出しやメールの誤送信といったヒューマンエラーは、依然として多くの企業にとって課題です。
これらを従業員のコンプライアンス意識に頼るのではなく、法的なリスクから組織を守るためにも、情報漏洩対策システムによる管理が求められています。
情報漏洩インシデントの前に現れやすい兆候とは

情報漏洩はある日突然発生するものではなく、その前段階には必ずといっていいほどシステムやログに何らかの予兆が現れています。大惨事になる前に食い止めるために、見逃してはならない3つの代表的な兆候を説明します。
1.普段とは異なる時間帯・場所からのログイン
攻撃者がアカウントを乗っ取った際や、内部不正を企てる者が最初に行うのが不審なアクセスです。具体的には、深夜や休日といった通常の業務時間外におけるシステムアクセスや、海外のIPアドレス、普段本人が使用していない端末からのログインなどがこれに該当します。また、短時間の間に国内と海外など、物理的に移動不可能な離れた場所から連続してログインが試行されるケースも警戒が必要です。
これらは従業員のアカウント情報がすでに外部に漏洩して不正アクセスされているか、あるいは内部の人間が周囲の目の届かない時間帯を狙って行動を起こしている強力なサインとなります。
2.重要フォルダへの急なアクセスと大量ダウンロード
実際にデータが外部へ持ち出されたり、改ざん・消去されたりする直前には、データの動きそのものに不自然な変化が生じます。例えば、普段はその業務に全く関わっていない従業員が、機密性の高い共有フォルダに頻繁にアクセスし始めたり、顧客リストや技術仕様書といった重要データを一度に大量にダウンロードしたりする動きが挙げられます。
さらに、ファイル名が短時間に大量に書き換えられたり、持ち出し用に圧縮ファイルにまとめられたりしている場合も緊急性の高い危険信号です。特に、退職予定の従業員が退職の数週間前から急に重要データへアクセスし始める動きは、内部不正による情報持ち出しの典型的な予兆と言えます。
3.シャドーIT・シャドーAIの利用拡大
社内で使用されているツールやネットワークの通信傾向にも、インシデントに繋がりかねない予兆が潜んでいます。企業が利用を許可していないクラウドストレージやファイル共有サービスなどの「シャドーIT」、あるいは未承認の生成AIサービスである「シャドーAI」へのアクセスが増加しているケースは、その代表例です。
また、業務に不要なフリーソフトやリモートデスクトップツールのインストール試行、あるいは社内PCのセキュリティソフトが一時的にオフにされているといった現象も無視できません。これらは、従業員がセキュリティルールを逸脱した危険な操作をしている兆候であるか、すでにマルウェアに感染して外部の攻撃者からシステムを遠隔操作され始めている危険な状態を示している可能性があります。
関連記事:「シャドーAI」とは?見えないAI利用が招く情報漏洩リスクと企業が今すぐ実施すべき対策
情報漏洩対策システムの主な種類と違い
情報漏洩リスクに対応するための対策は一種類ではなく、複数のアプローチを組み合わせる必要があります。代表的なものとして以下があります。
1.DLP(データ損失防止)
DLP(Data Loss Prevention)は、組織にとって重要な機密データが、安全ではない形や不適切な方法で外部へ転送、共有、使用されることを特定し、防止するためのセキュリティソリューションです。企業が持つ顧客データ、知的財産、財務情報などの機密情報を識別して保護します。
例えば社外秘と設定されたデータを、メールに添付して送信しようとしたり、USBメモリにコピーしようとしたりした際に、システムが自動的にその操作を検知して遮断します。データの持ち出し経路を問わず、情報の中身にフォーカスして一元的にガードを固められるため、うっかりミスから悪意ある内部不正まで幅広く対応できるのが大きな強みです。
2.EDR(エンドポイントでの検出と応答)
EDR(Endpoint Detection and Response)は、従業員が使用するパソコンやサーバーといった端末(エンドポイント)の内部で発生している挙動をリアルタイムに監視・分析するセキュリティソリューションです。従来のウイルス対策ソフトが侵入を防ぐのに対し、EDRは侵入された後の動きを察知し、被害を最小限に抑えるという役割を担います。
どれだけ強固な壁を作っても、巧妙化したランサムウェアなどのサイバー攻撃を完全に防ぐことは困難です。EDRは、端末内に侵入したマルウェアが不審なプログラムを実行したり、データを暗号化しようとしたりする異常な動きを即座に検知し、該当する端末をネットワークから自動で隔離するなどの初期対応を迅速に行います。実害が出る手前の最小限の段階で食い止めるために欠かせない役割を担っています。
3.CASB(クラウドアクセスセキュリティブローカー)
CASB(Cloud Access Security Broker)は、従業員と各種クラウドサービス(SaaS)との間に単一のコントロールポイントを設け、クラウド利用のセキュリティを一元管理するセキュリティソリューションです。テレワークの普及により、業務データが社内ではなく外部のクラウド上に保存されるようになった現代において特に重要視されています。
CASBを導入することで、シャドーITやシャドーAIの利用状況を可視化し、必要に応じてアクセスを制御できます。
4.UEBA(ユーザー・エンティティ行動分析)
UEBA(User and Entity Behavior Analytics|ユーザー・エンティティ行動分析)は、機械学習や統計モデルを用いて、従業員や端末、システムアカウントの日々の行動パターンを学習し、そこから逸脱した異常な挙動を検知するセキュリティソリューションです。
従来のルールベースの監視ではすり抜けてしまう、正規のアカウントを悪用した内部不正やなりすましの予兆を捉えるための強力な手段となります。
▶関連記事:内部からの情報漏洩対策ソリューションを特徴や選定ポイントで徹底比較!
なぜ情報漏洩対策にUEBAが重要なのか
UEBAが内部不正の決定的な対抗策になる最大の理由は、現場の利便性や生産性を損なわずに、通常業務の裏で進行する見えないリスクを可視化できる点にあります。
システム検知を避けるためにデータを少しずつ小分けにして持ち出したり、ファイル名を変えたりする巧妙なカモフラージュ行動であっても、UEBAは過去のログを時系列で分析し、一連の行動として捉えることができます。
さらに、信頼されていた従業員が、退職や処遇への不満などをきっかけに突発的に不正へ手を染めるケースであっても、通常時との行動の変化から異変を客観的に捉え、実害が出る前に先手を打つことが可能になります。
情報漏洩対策システムを選ぶ際のポイント

自社に最適な情報漏洩対策システムを選定するためには、単に知名度や機能の豊富さだけで選ぶのではなく、自社の現在のビジネス環境や運用体制を客観的に見極める必要があります。システムの導入を成功させ、確実に情報を守るために注目すべき4つの重要な視点を説明します。
1.自社の業務環境と守るべきデータの場所に合致しているか
システムを選ぶ上で最も重要なのは、自社のデータが現在どこに存在し、従業員がどこからアクセスしているかを正確に把握することです。
例えば、業務のほとんどをクラウドサービスで行い、テレワークがメインである企業であればCASB、社内サーバーや端末内の機密情報を保護したい場合はDLPやEDRが有効です。
しかし実際には、多くの企業でクラウドとオンプレミス環境が混在し、複数のセキュリティ製品が導入されています。そこで重要となるのが、UEBAです。点在するシステムを横断してユーザーや端末の普段と違う怪しい振る舞いを検知し、全体のセキュリティの隙間を補完します。自社のインフラ環境に最適な防御層を見極めることが導入の第一歩です。
2.現場の生産性とセキュリティのバランスが取れているか
セキュリティを厳しくしすぎた結果、日常の業務が滞ってしまっては本末転倒です。過剰なアクセス制限やファイルの持ち出し禁止ルールは、現場の生産性を低下させるだけでなく、シャドーITを誘発する原因にもなりかねません。
全ての操作を一律でブロックするのではなく、怪しい挙動に対して柔軟に警告(アラート)を出したり、行動を可視化して抑止力を働かせたりできるなど、自社の業務プロセスに合わせて柔軟にポリシーを調整できるシステムを選ぶことが大切です。
3.導入後の運用体制が自社のリソースに見合っているか
どれほど優秀なシステムであっても、導入後に発生する膨大なアラートやログを正しく分析し、適切に対処できなければ宝の持ち腐れになってしまいます。社内に専任のセキュリティ担当者がいない、あるいはIT人材が不足している企業の場合、運用の難易度が高すぎるシステムを選んでしまうと、管理の手間が回りきらずに形骸化するリスクがあります。
直感的に操作できる分かりやすい管理画面を備えているか、不審な挙動をシステムがどこまで自動で判断・対処してくれるか、また必要に応じて外部の専門業者(運用代行サービスなど)に監視を委託できるかといった、運用の持続可能性も重要な判断基準です。
4.生成AIなどの「最新の脅威トレンド」に対応できるか
サイバー攻撃の手口やITのトレンドは日々変化しており、昨日まで安全だった方法が明日には通用しなくなることも珍しくありません。特に近年は生成AIの普及により、機密情報の不用意な入力や、AIを悪用した高度な攻撃への対策が急務となっています。
そのため、検討しているシステムがこうした新しいテクノロジーに伴うリスクに対して、迅速にアップデートや新機能の提供を行っているかという拡張性も、長期的な投資において見落とせないポイントです。
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情報漏洩対策システムの運用を支援する「内部脅威検知サービス」
UEBAが情報漏洩の予兆を発見するうえで有効であることは、お分かりいただけたのではないでしょうか。とはいえ、自社でUEBAツールを運用するには、ログ収集基盤の構築や分析シナリオの設計、誤検知を抑えるための継続的なチューニング、さらに検知されたアラートを適切に評価できるセキュリティ人材の確保など、高い運用負荷を伴います。
そこで有効なのが、UEBA技術を活用した分析を専門家が支援する「内部脅威検知サービス」です。
「内部脅威検知サービス」では、AIによる異常検知と専門アナリストによる状況判断を組み合わせることで、内部不正によるデータ持ち出しの予兆を早期に捉え、具体的な対策を講じることが可能です。
また、翌営業日には分析を完了し、タイムリーにリスクを把握することが強みとなっており、転職市場の拡大、テレワークなど働き方の多様化、経済安全保障リスクの高まりを背景に、大手製造業や金融機関を中心に幅広い業種での導入が進んでいます。
まとめ
「情報セキュリティ10大脅威 2026」が示す通り、現代のリスクは外部攻撃から生成AI、内部不正まで多岐にわたります。これらに対抗するシステムは不可欠ですが、UEBAのような高度な仕組みを自社で運用するのは、人材不足で悩む企業にとって容易ではありません。
だからこそ、専門家のノウハウを凝縮したエルテスの「内部脅威検知サービス」のような外部リソースの活用が、現実的で確実な選択肢となります。UEBAを活用した内部脅威対策にご興味のある方は、ぜひお気軽にエルテスへお問い合わせください。
内部不正対策は、エルテスへ





