中国進出を考える日本企業が押さえておきたいデジタルリスクとは
ビジネスを発展させるにあたり、市場選びは大事な要素の1つです。国内のみならず海外市場も検討することで、売り上げや利益の拡大が期待できます。その中でも近年で注目されているひとつが中国市場です。
今回は、中国独自のデジタルプラットフォームや中国進出を考えるうえで押さえておきたいデジタルリスクに焦点を当てて解説します。
目次[非表示]
- 1.なぜ日本企業が中国進出をするのか
- 1.1.中国市場の規模の大きさ
- 1.2.越境EC市場の大きさ
- 2.独自の発展を続ける中国のデジタルプラットフォーム
- 2.1.Weibo(微博/ウェイボー)
- 2.2.WeChat(微信/ウィーチャット)
- 2.3.Taobao(淘宝/タオバオ)
- 2.4.Tmall(天猫/ティーモール)
- 2.5.Baidu(百度/バイドゥ)
- 3.中国進出を目指す企業が気を付けたいデジタルリスク
- 3.1.SNS炎上
- 3.2.文書共有サイトの情報漏えい
- 4.まとめ
- 5.参考情報
- 6.関連情報
なぜ日本企業が中国進出をするのか
世界第2位の経済大国である中国は、その巨大な市場規模で日本企業のビジネス拡大の舞台となっています。また、中国にとっても日本の製品は高いニーズが見込まれています。このような背景から、多くの日本企業が中国市場への進出を戦略的に進めています。
中国市場の規模の大きさ
中国は、国内総生産(GDP)が世界第2位の経済大国であり、人口も14億人以上の世界第2位を誇っています。この中国市場の規模の大きさが、日本企業が中国に進出する理由の1つです。事業を大きくしていくためには国内向けのみならず、さらなる成長が期待できる中国に進出していくのは、企業にとって有効な戦略と言えるでしょう。
さらに、中国国内にはビジネスチャンスに満ちた経済特区や開発区と呼ばれる魅力的なエリアがあります。こういった地域では企業所得税が数年免除されたり、様々な事業支援金が給付されたりと資金面で大きなメリットがあるため、多くの日本企業が制度を活用して中国進出を果たしています。
越境EC市場の大きさ
海外の代表的な越境ECサイトとしては、アメリカの「Amazon」や中国の「Tmall」などがあります。
中国の越境ECの市場規模の大きさも、日本企業が中国進出をする理由として挙げることができます。経済産業省の「令和4年度電子商取引に関する市場調査」によると、中国における2022年度の越境EC購入額は5兆68億円。また、中国消費者による日本企業からの購入額は2兆2,569億円であり、中国における越境ECの取引シェアのおよそ45%を日本が占めています。
日本の巨大なシェアのバックグラウンドには、中国国内では買えない製品のニーズがあるほか、日本製品の値段やクオリティ、ブランドに魅力を感じているユーザーが多いことが要因です。さらに、越境ECでは実店舗を持たなくて良いため、現地で出店するのに比べて出店コストや在庫リスクを抑えられるという利点があります。
このようなメリットの高さから、日本企業の中国市場は注目されています。
独自の発展を続ける中国のデジタルプラットフォーム
ネットが普及した近年では、日本を含め世界的にネットやSNSをビジネスに利用することが当たり前になってきています。一方で、中国は独自のデジタルプラットフォームを発展させていったため、中国進出を考えるうえでは押さえておくべき要素と言えます。ここでは、中国で有名なSNSやWebサービスを紹介します。
Weibo(微博/ウェイボー)
Weibo(微博/ウェイボー)は、X(旧Twitter)に相当するSNSです。中国国内で最も人気のあるSNSの1つで、短いテキストメッセージや写真、ビデオの投稿ができ、ユーザー同士のコミュニケーションやフォロー、シェア、コメントなどの機能があります。月間アクティブユーザー数は6億500万人(2023年9月時点)を超え、多くの人が情報収集やコミュニケーションに利用しています。
WeChat(微信/ウィーチャット)
WeChat(微信/ウィーチャット)は、中国最大のチャットアプリです。中国版LINEとして知られ、メッセンジャー、スタンプ、通話機能を備えています。月間アクティブユーザー数は2023年11月時点で13億人を超えています。ユーザー層は18~35歳が多いとされていますが、近頃は子どもや孫とやり取りをするために55歳以上の利用者も増えていると言われています。また、WeChatPayという電子機能もあり、多くの人が公共料金の支払いやショッピングに利用しています。
Taobao(淘宝/タオバオ)
Taobao(淘宝/タオバオ)は、中国EC事業のシェアトップを誇るアリババグループが2003年に設立したECプラットフォームです。CtoC(個人間取引)を軸としており、会員数が5億人を超えているショッピングモールです。
Tmall(天猫/ティーモール)
Tmall(天猫/ティーモール)は、Taobaoと同じアリババグループが運営するECサイトです。基本的にBtoCモデルで、Tmall Globalという越境ECプラットフォームがあります。徹底して偽造品や非正規品を排除しているため、非正規品が多く出回っている中国市場においてユーザーの信頼を獲得しています。
Baidu(百度/バイドゥ)
Baidu(百度/バイドゥ)は、中国最大の検索エンジンです。中国ではインターネット検閲があるため、Googleなど国外ネットサービスを自由に使うことができません。そのため中国生まれのBaiduが国内で絶大なシェアを持ち、中国の人々や企業にとって必要不可欠な検索エンジンとなっています。「百度文庫」という文書共有サイトもあります。
中国進出を目指す企業が気を付けたいデジタルリスク
中国マーケティングには欠かせない存在となっているSNSやECサイト。リスクを回避・低減しながら中国進出するには、どのようなことに気を付けたら良いのでしょうか。
ここでは、中国進出を目指す企業が気を付けたいデジタルリスクについて紹介します。
SNS炎上
独自のデジタルプラットフォームを持つ中国にも炎上リスクは存在します。例えばWeiboは他の人の投稿にコメントしたりシェアしたりなど、XやFacebookと似た使い方がされるため、批判的な内容が拡散され炎上するリスクもあります。また、日本では何気ない投稿でも中国の文化・歴史的背景などの配慮不足から、中国国内で敏感に反応され、炎上することがあるため注意が必要です。
SNSで企業が批判を受けると不買運動に発展したり、謝罪や罰金を科せられるケースもあります。
他国でビジネスを行う企業は、その国の歴史をよく知り、現地の人の感情を害さないよう振る舞うことが基本です。中国進出をするうえでは「日本では今まではそれほど問題視されなかったことが、大きな問題として扱われるようになっている」という点を、危機管理として認識しておくべきでしょう。
文書共有サイトの情報漏えい
中国には「百度文庫」や「豆丁网(docin)」、「道客巴巴(DOC88)」といった文書共有サイト・サービスがあります。
文書共有サイトは誰でも自由にWord、Excel、PowerPointなどの電子データをアップロードでき、不特定多数がこれらを検索・閲覧・ダウンロードができるようになっています。
アップロードされている文書の中には「機密」、「Confidential」などと書かれた、企業で秘密情報としてきちんと管理されるべき資料も散見されていることが指摘されています。
サービスによっては、自身の資料をアップロードするとポイントを獲得でき、そのポイントを使用してサイト内の文書・資料をダウンロードできる仕組みになっています。文書をアップロードする動機が生まれやすいうえ、閲覧が可能になるため、情報漏えいが起きた場合は被害が拡大するリスクがあります。
まとめ
中国は日本からアクセスもしやすく、経済大国であることから、日本企業にとっても大きな可能性を秘めている市場です。中国進出を目指すことを考えている日本企業は、多くのメリットやビジネスチャンスに目を向けつつ、中国独自のデジタルリスクへの対策も行うことをおすすめします。
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参考情報
・Weibo Reports Third Quarter 2023 Unaudited Financial Results(Weibo)
・Tencent Announces 2023 Third Quarter Results(Tencent)
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