2022年の炎上トレンドと2023年の炎上予測|ネット炎上レポート総集編
今回は、2022年の炎上事例を振り返りながら、企業の広報担当者が炎上を回避するために、今後気をつけるべきトピックスを紹介していきます。
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2022年の振り返り
2022年も残りわずかとなりました。2022年はスポーツの祭典・北京オリンピックが行われる一方で、ロシア軍によるウクライナ侵攻や台湾有事の可能性が囁かれるなど、世界情勢が大きく揺れ動きました。
日本においても、参院選の選挙期間中に起きた安倍元首相の銃撃事件など、大きな混乱が生じました。また直近では、円安やウクライナ侵攻などの影響を受けた物価高騰が私達の生活に大きな影響を与えています。年初では想定もしえなかった変化が数多く見られた1年と言えるのではないでしょうか。
“炎上“や”SNS“という観点で2022年を振り返ってみると、侮辱罪の厳罰化が7月から施行され、SNS上の誹謗中傷への目は一層厳しくなりました。また、実業家イーロン・マスク氏によるX(旧Twitter)社の買収は、SNSのあり方を変える可能性のある動きであり、現在進行形で大きな注目が集まっています。SNSが普及し、私達の生活に浸透しつつあるからこそ、SNSを巡る動きも活発になっていると考えられます。
2022年の炎上トレンド解説の前に、“炎上“の定義についても触れさせてください。エルテスでは、2019年8月より下記を満たすものを炎上と定義し、日々の事例分析等を行っています。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2022年の炎上トレンド
数多の炎上事例の分析を行う中でトレンドとして、2つの要素が見えてきました。
コンプライアンス違反がデジタル空間で拡散し、批判殺到
SNSは、デジタル空間を通じて、あらゆる人々と繋がることが出来ます。今までは、ある特定の知り合いの中で話題になっていたことが、デジタル空間を通じて情報交換がされることで、一気に情報が拡散される可能性があります。インフルエンサーを介して、爆発的に拡散されることも珍しく有りません。
2022年には、コーポレートロゴが描かれた営業車の危険運転がSNS上で拡散され、企業に批判が殺到する事例が複数発生しました。交通マナー違反の炎上は、車両へのドライブレコーダーの普及によってコンプライアンス違反の動かぬ証拠となり、SNS上の動画拡散に影響を与えていると考えられます。
その他にも、某食品メーカーの経営者が交通事故を起こした後に暴言を吐く様子がSNS上で拡散されるなど、私達の行動を直接見ている人々の後ろに、SNSを通じて無数の目があることが浮き彫りになりました。春先の某外食チェーンの役員の不適切発言も同様に目の前にいる受講生への発言がSNSを通じて、全世界に発信され、コーポレートイメージの失墜につながった事例もその一つです。
「小さなコンプライアンス違反だから」「周りには人が多くなかったから」と言っても、それらは重大なリスクの火種となり得ます。改めて、企業は経営陣を含む従業員へのコンプライアンス徹底が求められますし、従業員はコンプライアンス違反に対するSNSを通した影響を正しく認識することが必要です。
Webサイトの情報のサイレント削除や修正による炎上
多くの企業がサービスや商品説明などをWebサイトから発信しています。2022年は、企業にとって都合の悪いことが生じた際に、そっとWebサイト上の情報を修正して、あたかもユーザーからの指摘をなかったように対応することや、批判を避けるために表現を修正するなどの行為がWeb上で指摘され、批判が殺到する事例が複数見られました。
企業としては、Webサイトの情報を実態に即した内容へ近づけるための修正だと推察されますが、プレスリリース等を含む修正した事実の情報発信を行わないことがリスクの火種となりました。ネット上では魚拓やスクリーンショットなどで一部のユーザーが過去の情報の証跡を残していることが多く、いつの間にか修正されていた事実をSNS経由で知った被害を受けていたユーザーなどが一斉に企業側へ批判の声を発し、炎上に至ることが実際に起きています。
サイレントで情報修正することは企業の隠蔽体質を疑う声などにも繋がり、ブランドイメージは大きく毀損されてしまいます。なぜ企業はこのような対応を取ってしまうのでしょうか。
ここからは推測の域にもなりますが、広報部門、マーケティング部門、お客様相談部門などの連携が上手くいかず、意図せず修正している可能性もあると思います。しかし、謝罪会見等で原因等を明確に説明することや随時情報を発信することに称賛の声が出るようなケースも見られることから、企業の情報開示や広報姿勢のあり方は、かつてとは異なり、常に変化していること、担当者にはアンラーニングが求められていることが明白になっています。
サイレントで情報を修正したことで炎上し、ブランド毀損が発生している以上は、インシデント発生時は責任者や責任部門に情報を集め、ユーザーに寄り添った形で対応の判断を行うことが求められています。
2023年の炎上はどうなるのか
これからのSNS炎上を考える上で、最も注視しなければならないのは、イーロン・マスク氏によって買収されたX(旧Twitter)社の動向です。炎上の舞台となってきたX(旧Twitter)サービスの仕様変更はSNS空間の言論に大きな影響を与える可能性があります。公式アカウントの有料化などによって、なりすましの発生などのリスクが高まる可能性も考えられます。また、X(旧Twitter)の仕様変更によりSNS炎上の舞台が異なるSNSやWebメディアに移行する可能性も考えられます。
そういった意味で、X(旧Twitter)の今後の動きは、炎上トレンドに大きな影響を与えうるといえます。
もう一つは、人権問題などを含むESGと呼ばれる領域に関する批判です。投資家を中心にESG活動に力を入れる企業を応援していくという流れが生まれています。上場企業には、2023年3月度の決算開示から人的資本開示の義務化がなされ、インフレの中で従業員への分配が行われているのか等の開示を行う企業も出てきます。
サプライチェーンを含む人権問題や人への投資といった注目が集まる中で、この領域に関する情報発信やリスクマネジメントは大きな注目を集めると想定されるため、炎上の火種となる可能性があります。
エルテスでは、炎上への理解を深めていただくことを目的として、毎月の炎上傾向のレポート発信やウェビナーでの解説セミナーを行っておりますので、チェック頂き、業務にお役立ちできればと考えております。これらの情報をメールマガジンにて発信しておりますので、ぜひご登録ください。