ネット炎上レポート 2022年9月版
2022年9月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2022年9月のネット炎上トレンド
2022年9月に最も多かった炎上対象は、「企業・団体」で58%(前月比11ポイント減)という結果になりました。「個人・著名人」が29%(4ポイント増)となりました。「マスメディア」が3%(前月と同数)となりました。上位3区分は、前月と同様の結果となり、全体的には例月通りのトレンドとなっています。
また、「企業・団体」の炎上区分の内訳は、「サービス」が全体の26%(21ポイント減)、次いで「自治体・団体」が11%(5ポイント減)を占めています。「メーカー」は13%(7ポイント増)、不適切行為が目立った「インフラ」は5%(5ポイント増)、「教育機関」は3%(3ポイント増)となりました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容では、経営層の不祥事に関する炎上が相次いだ「不祥事/事件ニュース」が50%(32ポイント増)を占めました。次いで「不適切発言・行為、失言」が27%(4ポイント増)を占めました。次いで、「顧客クレーム・批判」が23%(27ポイント減)という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
経営者のプライベートでの不祥事と謝罪対応、事象の炎上発生後の内部告発
9月には経営層の不祥事による炎上がいくつか発生しています。
某食品メーカーの代表がプライベートで交通事故を起こし、相手の運転手に対して声を荒らげる様子を収めたドライブレコーダーの映像がSNSに投稿され、炎上しました。ネット上では、「企業のイメージが悪くなった」といった意見が多く見られました。
動画の拡散を受けて、企業からはHPと公式SNSを通じて謝罪文が掲載されました。しかし、企業名義での謝罪にとどまり、代表からのコメントがないことを指摘する声が見受けられ、再度批判が殺到しました。
今回の事象は、プライベートでの行動によるものでしたが、企業が公式声明を出す事態となったこと。そして、経営層の不祥事はSNSを通じて企業側の対応を求める声が盛り上がり、当事者である経営者が全面に出ない謝罪はさらなる批判に繋がりうることが分かりました。
品質に関して顧客からのクレームが発生している最中にうたい文句を削除して炎上
インターネット接続サービスにおいて、「高速回線」を謳っているにも関わらず時間帯によっては速度低下が顕著にみられるとして、ユーザーから批判意見が投稿され、同じようにサービスの不備を訴えるユーザーが相次ぎました。そのような状況下で、「混み合う時間帯も高速!」という文言を「同時に利用しても快適!」といった回線の速度に関する記述を編集したことで、企業の対応に対して、「都合が悪くなったから削除したのではないか」と批判の声が再度寄せられました。
企業側は、SNS上での苦情は把握しているが、文言の変更は分かりやすさとサービスの訴求事項のバランスを考慮して随時変更していると説明しています。
このことから、Webサイトの修正は、マーケティング・コミュニケーションの効果検証の一貫として、多くの企業がPDCAを回しています。批判が寄せられている内容に関する修正は、より高い効果を求めての変更であっても、批判の対象となりうるため、マーケティング部門もSNSの声を把握することが求められているといえます。
まとめ
9月には事象に対する企業対応が再度批判の声を生んでしまった二次炎上の事例が複数見られました。
早期に検知し、迅速に対応することはもちろん重要ですが、適切な対応であるかをユーザーは重要視していることが分かりました。同様の事象が他社で過去発生していた場合にはどのような対応であったか参考にするとともに、ネット上の論調を把握し、自社の立場や事象の重大性を考慮して対応を検討することが求められます。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。