ネット炎上レポート 2023年12月版
2023年12月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2023年12月のネット炎上トレンド
2023年12月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が86%(前月比2ポイント増)と前月に引き続き全体の8割以上を占める形になりました。次いで「マスメディア」が9%(4ポイント増)、「個人・著名人」が5%(4ポイント減)という結果になりました。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は「サービス」が全体の58%(10ポイント増)となりました。次いで、「自治体・団体」が12%(5ポイント減)、「メーカー」が9%(3ポイント減)と続きました。「インフラ」が5%(3ポイント増)、「教育機関」は2%(2ポイント増)という結果になりました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、「顧客クレーム・批判」が57%(9ポイント増)と全体の半数以上を占めています。次いで前月代表のSNSでの炎上など事例が散見された影響で大幅に増加していた「不適切発言・行為、失言」が16%(18ポイント減)と前月までの数値に戻っています。また、「異物混入」が14%(5ポイント増)、「不祥事/事件ニュース」が8%(2ポイント増)と続き、「情報漏えい/内部告発」は5%(2ポイント増)という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
過去に掲載していた広告が掘り起こされて批判殺到
介護に関する電車広告がSNS上で話題となりました。広告は、介護に携わる娘がいるから年を取る心配がないと伝えるもので、数年前に掲載されていたものでしたが、ネット上で掘り起こされて、無償介護を助長させるといった批判的な声が多く見られました。
掲載当時は問題視されなかった広告表現であっても、現在の価値観で批判される要素があれば問題視されるケースがあります。企業は企画時点でクリエイティブを複数の視点からチェックし、リスクを低減しておくことが大切です。また、過去の企画が批判されている場合に早期検知できる体制を整えておくことが必要と言えます。
他者作品やデザインを無断で使用したことで炎上
2023年12月には、他者作品やアイデアを無断で使用していたことが指摘されて問題となった事例が複数見られました。
a)百貨店のディスプレイに使われていた作品が、とあるクリエイターのすでに発表しているデザインと酷似しているとの指摘が見られ炎上しました。企業側はイメージとして参考にしていた作品があったことやその作品のクリエイターへの事前確認ができていなかったとして、謝罪文を公式SNSアカウントで発表しました。
b)広告のデザインに使用されていた作品に対して、自身の写真がトレースされていると言及したモデルからの告発投稿や、トレースの検証をするユーザーが現れたことで、批判の声が多く見られました。運営側は、制作のプロセスで複数の写真を参考にしており、その中に指摘を受けたモデルの写真があったと発表し、クリエイティブを取り下げています。
クリエイティブの企画や作成には広告代理店や制作会社など関係者が多く関わることがあり、自社の注意だけで防ぐのは難しいといえます。また、世に出た後は、参考にしたクリエイターのファンを含めた、多くの一般ユーザーの目に留まるため、無断使用が見つからずに済むことは考えにくく、企画に関係する担当者の中で権利などのルールを周知・徹底させることが重要となります。
まとめ
2023年12月には、広告のデザインや表現に関する炎上が多く見られました。商品・サービスの認知や購買を促すための広告のはずが、話題になることを意識しすぎてリスクとなり得る表現を使用し炎上してしまっては本末転倒となります。
一つ目の過去の広告が時間を経て炎上してしまった事例では、クリエイティブ企画時のリスクチェックに加えて、平時からSNSモニタリングで炎上の予兆を早期検知し、一次対応を迅速に行えるようにすることが重要と言えます。
二つ目、三つ目の事例では、多くの関係者が関わるクリエイティブ企画では、携わる担当者の権利やトレンドの認識を揃え、リスク要素を取り除くよう徹底することが求められます。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。