ネット炎上レポート 2024年1月版
2024年1月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2024年1月のネット炎上トレンド
2024年1月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が74%(前月比12ポイント減)と他の項目がそれぞれ増加している影響を受けて大きなポイント減少が見られました。次いで番組の内容や対応へのクレームがSNS上で多く見られた「マスメディア」が19%(10ポイント増)と大きくポイントを増加させ、「個人・著名人」が7%(2ポイント増)という結果になりました。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は「サービス」が全体の48%(10ポイント減)となりました。次いで、「自治体・団体」が10%(2ポイント減)、「メーカー」が10%(1ポイント増)、「インフラ」が6%(1ポイント増)と続きました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、「顧客クレーム・批判」が52%(5ポイント減)を占めています。次いで「不適切発言・行為、失言」が19%(3ポイント増)、従業員や関係者からの内部告発や漏えいが複数見られた「情報漏えい/内部告発」が14%(9ポイント増)となりました。また、「不祥事/事件ニュース」が10%(2ポイント増)、「異物混入」が5%(9ポイント減)と続く結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
施設での対応不満を訴えたユーザーに対して代表自らが謝罪し、再燃
とあるレジャー施設での対応への不満の投稿が話題となりました。当初、ユーザーの不満に対して同情の声が多く見られ、企業の声明が待たれていました。その後、ユーザーに対して、レジャー施設運営企業の代表から謝罪のDMが届いたことが概要ユーザーから報告され、代表のSNSアカウントからも送付した謝罪内容が公開されました。しかし、DMの公開がユーザーに無断で行われたことや謝罪の内容に対して、SNS上では「企業の対応として不誠実だ」といった批判的な声が多く見られました。
今回の代表の対応は企業のHPなど公式の媒体から発信された声明ではありませんでしたが、SNS上では企業としての見解であると認識されました。事象発生時など特に企業の言動に注目が集まっているタイミングでの情報発信は、方法や内容への十分な注意が求められることが分かった事例でした。
過去に炎上していたクリエイターをキャンペーンに起用し、発言に批判殺到
SNSで実施された、複数の漫画家とコラボレーションしたゲームのキャンペーン企画において、とある漫画家が「炎上するたびにゲームをする」といった旨の投稿を行い、PRとして不適切であるとして問題視されました。発言に対する批判とともに漫画家が過去に炎上していたことも相まって、「過去の炎上を知らずに起用したのか」というような企業が当該の人物を起用したことについて、危機管理の面での批判が多く見られました。
企業が著名人とタイアップで企画を実施する際には、企画との親和性だけでなく過去の言動やファン層といった炎上可能性のリスクを把握しておくことが必要であると言えます。
まとめ
2024年1月は年始から様々な事象が発生しており、関連した炎上も多く発生していました。そのような中でも、企業や上層部が発信したSNSの情報が起因となった炎上が目立ちました。
1つ目の事例では代表の個別対応が企業としての見解と認識され、対応が批判されました。事象発生時の企業対応はブランド棄損等のリスクをはらんでいることを考慮し、SNS上の論調を把握したうえで適切な対応を検討することが求められます。そのために、緊急時のエスカレーションフローを策定しておくなどの対策を事前に検討しておくことを推奨します。
2つ目の事例では、過去に炎上経験のある著名人からタイアップ企画で不適切な言動が見られたため、起用した企業に対して批判の声が寄せられました。この事態を防ぐためには、企画内での投稿内容が不適切でないかチェックするとともに、企業が起用する著名人を選定する際に過去の言動などから炎上リスクを把握しておくことが重要と言えます。
2つの事例は共通して事前の対策によってリスクを低減できる事象です。ぜひ自社の体制やルールなどを今一度見直す機会としていただければと思います。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。