
ネット炎上レポート 2025年1月版
2025年1月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2025年1月のネット炎上トレンド
2025年1月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が85%(前月比4ポイント減)となりました。そして、「個人・著名人」は11%(6ポイント増)、「マスメディア」は4%(4ポイント増)という結果になりました。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は、「サービス」が55%(8ポイント減)と半数以上を占めました。続いて、「メーカー」が15%(4ポイント増)、「自治体・団体」が7%(1ポイント増)、IT(2ポイント減)と「インフラ」(1ポイント増)がそれぞれ4%という結果になりました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、「顧客クレーム・批判」が44%(27ポイント減)と大幅に減少しました。これは、企業の関係者の不適切発言による炎上が目立ち、「不適切発言・行為、失言」が31%(8ポイント増)に増加したことと、元従業員が過去のハラスメントを告発する動きがあり、「情報漏えい/内部告発」が17%(14ポイント増)に増加し、相対的に数値が下がったことが要因と考えられます。その他、「不祥事/事件ニュース」(4ポイント増)と「異物混入」(1ポイント減)が共に4%となりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
企業代表の言動に批判が殺到
企業の代表がSNSアカウントや公の場で不適切な言動をしたとして批判が殺到した事例が複数発生しています。
a. とある結婚相談所の代表が、自身のSNSアカウントで35歳以上の女性について否定的なコメントを投稿し、批判が殺到しました。該当の投稿は、35歳以上の女性の婚活について討論する動画を引用した形で発信されました。
SNSユーザーからは、「表現が不適切である」、「結婚相談所を運営する人物が発言すべき内容ではない」といった批判意見が寄せられました。現在、該当の投稿は削除されています。
b. とある企業の代表が企業が主催するイベントに登壇し、女子プロレス選手について「水着の女性が見られる」といった旨の発言をし、批判が殺到しました。代表は発言についてSNSアカウントを通じて謝罪を投稿したものの、過去の言動が掘り起こされるなど謝罪後にも代表に対して批判的な論調が続く結果となりました。
企業の公式SNSアカウントはもちろん、経営層による発信は個人の見解であっても、企業としての見解と認識される可能性があることを認識する必要があります。特に、性別など属性によって役割や特性を決めつけるような発言に対しては、多くの批判が集まる可能性が高いため、発言は避けることが重要です。
また、ジェンダーなど議論が発生しやすい話題については炎上のトレンドや世間的な価値観の変化・論調を把握し、どういった反響があるかを考慮することが求められます。
▼備えておきたい!企業のSNS炎上対応の事例とポイントはこちら
過去、従業員によるハラスメントがあったことをSNSで告発された企業に批判が殺到
とある小売店において、過去にアルバイトをしていたと名乗る人物から、従業員によるハラスメント行為や社内での告発のもみ消しがあったとする告発がSNSで投稿され、運営企業に批判が殺到しました。
告発では、当時セクハラの報告を受けた店長がその事実を隠匿しようとするなど、社内の対応に問題があったことも言及されていました。SNSユーザーからは、ハラスメント行為を非難する意見が多数寄せられ、「今後該当企業の商品は購入しない」といった不買を訴える声もありました。
その後、企業からは「ハラスメント防止のための取り組みを強化していく」等の旨を記載した声明文が公開されましたが、SNSユーザーから謝罪がないことや被害者への対応が不十分であることについて指摘が寄せられました。
前提として、企業にはコンプライアンスやガバナンスに抵触するような事象を発生させないよう従業員に対して教育や啓蒙を実行していくことが重要です。それにあわせて、内部告発がSNS上に表出して拡散・炎上するリスクへの対策として、火種となる投稿を早期発見できる体制の構築を推奨します。
▼拡散リスクを抑えるには?SNSの内部告発の事例と対策はこちら
まとめ
1月は、企業の関係者によるコンプライアンス遵守が求められる行為が炎上する事例が目立ちました。
1つ目の事例においては、特定の属性の人物を否定するような発言を避けることや、議論が発生しやすい話題についてはすぐにSNS上で言動が拡散され、炎上するリスクを孕んでいることを理解し、論調を把握した上で発言に配慮する必要があることを改めて認識できました。
あわせて、企業の発信に対して火種となるような批判投稿があった際に、早期に発見・対応できる監視体制を取り入れることも、炎上のリスクを低減するための対策となります。
2つ目の事例においては、前提としてハラスメントに繋がるような事象が社内で起こらないよう、コンプライアンスを遵守することが求められます。その上で、現状のSNSの炎上トレンドや世間的な価値観を定期的にアップデート・浸透させる取り組みを実施する必要があります。また、今回の告発は現在発生していることではなく、過去に発生した事象が起因となりました。世間的な価値観の変化によって時間を経て炎上リスクとなる可能性を考慮し、万が一、過去事象の告発投稿がSNS上に表出した際に早期発見・早期対応ができる体制を構築することも対策の一つです。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。