
【事例から学ぶ】使い終わったドメインの転用リスクと管理のポイント
インターネットが企業活動に欠かせないものとなった現在、多くの企業が新商品のプロモーション、イベントの告知、周年記念事業などのために、特設Webサイトを立ち上げたり、公式SNSアカウントを開設したりしています。しかし、プロジェクトが終了した後のデジタル資産の廃棄や管理まで、十分に検討できている企業はそれほど多くありません。
「キャンペーンは終わったから、Webサイトを閉鎖してドメイン契約も更新しなければいい」「イベント用のアカウントだから、投稿を止めればそれで終わりだ」といった認識で運用を終了すると、後から思わぬリスクにつながる可能性があります。
近年では、使い終わって手放したドメインや、長期間利用されていない企業のSNSアカウントが第三者に取得され、企業やブランドとは無関係な用途に使われる事例も発生しています。
このコラムでは、ある大規模イベントの関連事業で使用されていたドメインが、運用終了後に第三者に再取得された事例をもとに、ドメインやSNSアカウントといったデジタル資産の運用終了後に生じるリスクと、企業が取り組みたい管理策について解説します。
運用終了後にドメインが第三者に取得された事例
2026年8月、ある大規模イベントの関連事業で使用されていたドメインが、運用終了後に第三者によって取得され、当初の事業とは無関係なサイトに転用されていたことが報じられました。
対象となったドメインは、イベントのプロモーションや関連企画などで使用されていたもので、Webサイトの運用終了後に運用が停止されていたドメインが第三者に渡り、あろうことかアダルトサイトの運営に悪用されていました。
この現象は、サイバーセキュリティの領域において「ドロップキャッチ」と呼ばれる手法によるものです。JPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)では、以下のように説明しています。
ドメイン名が更新されなかった場合、すぐに再登録が可能となるわけではなく、 一定期間登録ができない状態に置かれた後、再び先願による登録が可能な状態となります。 この再登録が可能になる瞬間を狙って、 目的のドメイン名を登録しようとする行為をドロップキャッチと言います。
使い終わったドメインを手放す際に確認したいリスク

企業や公的機関がドメイン契約を更新せずに手放すと、一定期間を経て、第三者が再登録できる状態になります。
過去に企業や公的機関が使用していたドメインには、他のWebサイトからのリンクや検索結果などが残っている場合があります。Webサイトを閉鎖しても、外部サイトに掲載されたURLまで自動的に消えるわけではありません。
企業名や商品名、イベント名、キャラクター名などを含むドメインの場合、第三者による取得後も、過去の利用先として認識される可能性があります。
第三者が取得したドメインが企業とは無関係なサイトに利用されれば、アクセスしたユーザーが企業との関係を誤認する可能性もあります。そのため、ドメインを廃止する際には、契約を終了するだけでなく、外部サイトからのリンクや検索結果などを確認したうえで、手放した場合の影響を判断することが重要です。
企業SNSアカウントにも残る運用終了後のリスク
ドメインと同様に、企業SNSアカウントも運用終了後の管理が必要です。
数年前のキャンペーン時に作成したX(旧Twitter)のアカウント、特定の採用活動のために開設したInstagramアカウント、期間限定のキャラクターアカウントなど、運用が停止したままのアカウントが社内に残っているケースがあります。
運用していないアカウントは確認の対象から外れやすく、管理者やログイン情報が分からなくなる場合があります。
管理者の異動・退職による管理不能
立ち上げ当時の担当者が異動・退職し、アカウントのログインID、パスワード、登録メールアドレスなどが分からなくなるケースがあります。
二要素認証を設定している場合も、認証に使用していた端末を担当者が持ったまま退職すると、企業自身がアカウントへアクセスできなくなる可能性があります。
防止のためには、担当者個人に管理を依存せず、複数の担当者が必要な情報を確認できる体制を整えておくことが重要です。
SNSの仕様変更によるアカウント管理上のリスク
SNSのプラットフォームでは、長期間利用されていないアカウントの扱いについて、運用方針が変更される場合があります。
アカウントが削除され、使用していたアカウントIDを第三者が取得できる状態になれば、自社のブランド名やキャラクター名を含むIDが第三者に利用される可能性があります。
企業名やブランド名を含むアカウントから第三者が情報発信すると、公式アカウントとの誤認につながるおそれがあります。
▶事例から学ぶSNS炎上から企業やブランドを守る対応のポイント【無料】ダウンロード
放置SNSアカウントで想定される3つのリスク

休眠アカウントが第三者に取得されたり、不正利用されたりした場合、企業側では複数のリスクが考えられます。
① ブランドを利用したなりすましや詐欺
第三者が取得したアカウントで、自社のロゴや過去の投稿画像を利用し、公式アカウントを装った情報発信を行う可能性があります。
さらに、キャンペーンを装ってフィッシングサイトへ誘導し、顧客の個人情報やクレジットカード情報を取得する行為につながる可能性もあります。
第三者による行為であっても、顧客から企業への問い合わせや批判が寄せられ、企業側の対応が必要になる場合があります。
② 不適切な広告や投稿への利用
第三者に取得されたアカウントから、企業とは無関係な不適切な投稿が行われる可能性があります。
過去に企業の公式アカウントとしてフォロワーを集めていた場合、以前からアカウントをフォローしていたユーザーにも投稿が表示される可能性があります。
企業名やブランド名を含むアカウントから発信されることで、企業自身による投稿と誤認されるおそれもあります。
▶SNS別なりすましアカウントの報告方法【無料】ダウンロード
③ 過去の企業活動と関連付けられるリスク
第三者による投稿であっても、企業名やブランド名を含むアカウントが使用されていれば、企業の過去の活動と関連付けられる可能性があります。
また、休眠アカウントは日常的な確認の対象から外れやすく、不正利用の発見が遅れる場合があります。
▶関連記事:偽アカウントとは?|実例から学ぶ偽アカウントへの対策
広報・リスク・コンプライアンス担当者が実践したいデジタル資産管理

WebサイトやSNSは、開設時だけでなく運用終了後まで適切に管理することが重要です。ドメインやアカウントの管理に加え、終了後に発生するWeb上のリスクにも備える必要があります。
① デジタル資産を棚卸しし、一元管理する
まず、自社が過去に取得したドメインやサブドメイン、開設したSNSアカウントを洗い出します。台帳には、ドメインの契約満了日、管理担当者、SNSの登録メールアドレス、現在の運用状況などを記録します。
情報システム部門だけでなく、法務・コンプライアンス部門や広報部門など、関係部署が必要な情報を確認できる状態にしておくと、担当者の異動や退職時にも引き継ぎやすくなります。
② ドメインの維持・廃止を判断する
キャンペーンやイベントが終了した後も、すぐにドメインを手放さず、一定期間維持する方法があります。運用終了後もドメインを維持し、アクセスしたユーザーをコーポレートサイトや「サービス終了のお知らせ」ページへリダイレクトする方法もあります。
また、企業名やブランド名、キャラクター名など、長期的に価値が残るドメインについては、継続して契約を維持する選択肢もあります。
一方、すべてのドメインを継続して保有する必要があるとは限りません。外部サイトからのリンクや検索結果などを確認し、第三者に取得された場合の影響を踏まえて、維持・廃止を判断できる基準を設けておくことが重要です。
③ SNSアカウントの終了手順を決める
不要になったSNSアカウントは、そのまま放置せず、削除や運用終了の手続きを行うフローを整備します。
ただし、ブランド名などが直接入ったアカウントIDは、削除によって第三者が再取得できる可能性もあるため、削除が必ずしも適切とは限りません。
たとえば、アカウント名を「キャンペーン(公式・終了しました)」などに変更し、過去の投稿を整理したうえで非公開化する方法や、「アカウントを移行しました」という案内を固定した状態で維持する方法があります。
SNSについても、開設時に運用方法を決めるだけでなく、運用終了時の対応まであらかじめ定めておくことが重要です。
▶関連記事:企業のSNS運用に重要なマニュアル策定は?そのメリットや策定のポイントを解説!
④ 運用終了後もWeb上のリスクを確認する
デジタル資産の棚卸しや運用終了時の手続きを整えても、企業やブランドに関する情報がインターネット上からなくなるわけではありません。
過去に使用していたドメインやSNSアカウントに関連する情報が残っていたり、第三者が企業名やブランド名を利用して情報を発信したりする可能性があります。そのため、デジタル資産を適切に管理するだけでなく、運用終了後にWebやSNS上で企業・ブランドに関する情報がどのように発信されているかを継続的に確認することも重要です。
特に、なりすましアカウントや企業とは無関係な投稿などは、企業側が把握していなければ対応が遅れる可能性があります。自社だけで継続的に確認することが難しい場合は、外部の監視サービスを活用する方法もあります。
エルテスのWebリスクモニタリングでは、SNSやWeb上に投稿される企業・ブランドに関する情報を監視し、リスクの早期把握を支援しています。デジタル資産の管理体制を整えるだけでなく、運用終了後にインターネット上で何が起きているのかを把握する体制まで整えることで、なりすましや風評リスクへの早期対応につなげられます。
▶SNS・ネット上のリスクを監視する「Webリスクモニタリング」でできること【無料】ダウンロード
まとめ
WebサイトやSNSの運用終了は、公開を停止した時点で完了するものではありません。ドメインやアカウントを今後どう扱うのかまで決めておく必要があります。
企業が保有するデジタル資産は、運用期間だけでなく、プロジェクト終了後や担当者の異動・退職後も適切に管理することが重要です。
まずは自社が保有するデジタル資産を棚卸しし、現在使っていないドメインやSNSアカウント、管理者が不明確になっているものがないかを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。
ネット炎上の対策・相談は、エルテスへ





