
ログ解析とは?内部不正を早期発見するツールの活用ポイント
ビジネス環境において、リモートワークの普及やクラウドサービスの利用拡大により従来の「境界型防御」だけでは対応が難しくなっているのが現状です。従業員が多様な場所・端末から社内システムやクラウド資産にアクセスする状況では、アクセスや操作の記録であるログを収集・分析することによって内部不正対策を強化し、内部から生じるリスクを早期に検知・対応する仕組みが必要とされています。 
このコラムでは、内部不正対策に不可欠なログ解析ツールの基本概念から、活用ポイントや運用上の留意点まで詳しく解説します。
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ログ解析とは
ログ解析とは、PCやサーバー、ネットワーク機器といったITシステムから出力される操作記録である「ログデータ」を解析ツールを用いて収集し、解析することを指します。ログには「いつ」「誰が」「どこから」「何にアクセスしたか」といった情報が時系列で詳細に記録されており、システムの安定稼働やセキュリティ維持のために不可欠なプロセスです。
特に、ログ解析ツールによる解析を通じて得られる情報は、日常の運用における障害対応やパフォーマンス確認だけでなく、内部不正や外部からの攻撃、異常な振る舞いを把握するための重要なデータにもなります。ログ解析は、こうした潜在的なセキュリティリスク、特に内部不正への対策として非常に有効です。
内部不正対策を強化するログ解析ツールの活用ポイント

内部不正対策を効果的に行うためには、従業員の各種ログを適切に収集・整理し、リスクの兆候を早期に把握することが重要です。以下では、ログ解析ツールを活用した内部不正検知を目的とした主なポイントを整理します。
ログデータの収集と整理
ログ解析ツールを用いた内部不正対策においては、業務端末やサーバー、クラウドサービスなど、多様なログを網羅的に収集する必要があります。収集したログの中から、アクセス権限や操作履歴、ファイルの持ち出しといった内部リスクに関係する情報を整理し、分析しやすい状態に整備することが重要です。
ログの種類や具体的な検知例についてはこちらのコラムで解説しています。
異常検知のルール設定
効果的な内部不正対策のためには、ログデータの中から何を「異常」とみなすか、どのような行動を「不正の兆候」と判断するかをあらかじめ明確にしておくことが重要です。具体的には、ログ解析ツール上で「深夜帯の大量ダウンロード」や「機密情報フォルダへの不審なアクセス」といった典型的な内部不正パターンをルール化し、ルールに基づいてアラートを発する運用を設計します。
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AI活用によるログの異常検知
企業内で生成されるログの量は増加しており、人手だけで全てを解析することは困難です。現代のログ解析ツールに搭載されたシステムやAIを用いることで、従来の業務パターンを学習させ、逸脱する異常な行動を自動的に検知することが可能になります。AIにより大量データの中から不審なパターンを抽出し、複数の操作を横断した相関分析を行うことで、単一のログからは見えにくい内部不正の兆候を検出できます。
ログ解析結果の可視化
ログ解析ツールの主要機能である解析結果のグラフやダッシュボードによる可視化は、内部不正リスクの程度や発生傾向を迅速に把握するために不可欠です。アクセス傾向や異常操作を視覚的に示すことで、リスク部門や関係者を特定しやすくなるほか、経営層や他部署への報告も行いやすくなり、データに基づいた改善や投資判断を促進します。
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企業がログ解析を行う理由
ログ解析に取り組む理由は単にセキュリティ強化だけではなく、複数の側面から企業価値を高められます。
内部不正に対する抑止と早期検知
PC操作ログやアクセスログを継続的に監視・分析することで、従業員に対して「不正行為は記録されている」という認識を持たせ、心理的抑止力を働かせることができます。もし不審な挙動が検知された場合は、ログ解析ツールがアラートを発して管理者に通知し、情報が外部へ流出する前の段階で対応できるようにします。たとえば、退職を控えた従業員が通常業務ではアクセスしない顧客データを大量にダウンロードしようとした場合、その異常を検知して警告を出すことで重大な情報漏洩を防ぐことが可能となります。
さらに、外部からの攻撃に対しても、VPNログイン認証の失敗回数の増加やトラフィック量の異常といった兆候を早期に察知することで、攻撃の初期段階で対応し被害の拡大を防ぐことが可能です。
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インシデント発生時の原因究明と証拠確保
どれだけ内部不正対策を講じてもインシデントが完全になくなるわけではないため、万一トラブルが発生した際に迅速かつ正確に原因を特定する体制が必要です。ログ解析ツールで収集・管理されたログデータは「いつ」「誰が」「どのシステムで」「どのような操作を行ったか」を示す客観的な証拠であり、内部不正を含むインシデント調査や再発防止策の策定に不可欠です。 
また、ネットワーク障害やシステム遅延が生じた際には通信ログを解析することで通信量の急増や特定端末の異常挙動を突き止め、復旧対応を迅速化できます。
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コンプライアンスと業務改善を支える経営インフラ
さらに、ログ解析ツールによるログ解析は法令遵守や監査対応の面でも欠かせない要素です。個人情報保護法や各種業界ガイドラインでは、システムのアクセス記録や操作履歴の取得・保存が求められており、ログ解析ツールによって適切に管理されたログは監査証跡としての役割を果たします。
特に金融業や製造業など監査が厳格な業界では、「誰がどのデータにアクセスしたか」を明示できる体制の整備が不可欠であり、監査時に必要な証拠を提示でき、企業の信頼性維持や法的リスクの軽減につながります。これは内部不正対策の一環としても極めて重要です。
また、ログは業務効率化や経営判断に役立つデータでもあります。従業員の利用傾向を分析することで、業務プロセスのボトルネックや非効率な点を可視化し、改善施策に繋げられます。加えて、IT資産の利用状況を把握することで不要なソフトウェアライセンスの削減やハードウェアの整理といったコスト最適化も可能です。
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ログ解析ツール導入だけでは不十分な内部不正対策

ログ解析は内部不正対策の有効な手段ですが、ツールを導入しただけで十分とは限りません。ツールはデータを収集・分析する手段であり、得られたデータを適切に解釈して判断に結びつける運用体制が不可欠です。
ログ解析ツールの課題
内部不正対策のためにログ解析ツールを導入したものの、期待した効果が得られずに形骸化してしまうケースは少なくありません。その大きな原因は、ツールが生成する膨大なアラートの量にあります。日々発生する大量のアラートに対して個別に対応する余力がないと、本当に重要な内部不正の兆候やインシデントの兆候が誤検知と混在して見過ごされるリスクが高まります。
加えて、ログ解析ツールが出すアラートが「正常な操作」なのか「異常な操作」なのか、その判断に迷うことも少なくありません。特に、企業固有の業務プロセスやシステムの特性を理解していないと、不審に見える操作が実は正規の業務であるという誤検知や、逆に巧妙な内部不正操作を見逃してしまう危険性があります。
さらに、ログ解析ツールを効果的に運用するには、高度な専門知識を持つセキュリティ担当者が必要ですが、多くの企業では専任担当者を配置するリソースが不足しているのが現状です。
これらの課題を放置すると、導入した内部不正対策のためのログ解析ツールが十分に機能せず、情報漏洩などの重大なインシデントの兆候を見逃してしまうことになりかねません。したがって、ログ解析ツールは「導入して終わり」ではなく、継続的な監視と判断を行う運用体制を構築することが重要です。
情報漏洩対策について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「AI×専門家」よる高度なログ分析・監視サービス

ログ解析ツールの運用課題を解消し、より精度の高い内部不正対策を実現する一つの手段は「AI×専門家」のハイブリッド体制の運用です。
まずAIが膨大なログデータから不審な行動パターンや異常値を自動で検知し、人間では処理しきれない量のデータを高速で分析し、単一のログだけでは発見が難しい複数の操作を横断した相関分析から、内部不正の兆候を洗い出します。しかし、AIによる検知だけでは誤検知のリスクを完全に排除することはできません。
そこで重要となるのが経験豊富な専門アナリストが精査・分析するプロセスです。専門アナリストは、AIによる分析結果を独自の視点と知見に基づいて再評価し、企業の業務内容や環境を考慮しながら、内部不正の兆候であるかを判断し、誤検知を大幅に削減し、対応すべきリスクだけを的確に企業へ報告することができます。 このようなサービスを利用することで、自社に高度なセキュリティ専門家が不足していても、高精度な内部不正対策を実現できるようになります。
エルテスの内部脅威検知サービス(Internal Risk Intelligence)

エルテスが提供する内部脅威検知サービス(Internal Risk Intelligence)では、AIによる異常検知と専門アナリストによる状況判断を組み合わせることで、内部不正による情報漏洩の予兆を早期に捉え、具体的な対策を講じることが可能です。
内部脅威検知サービスは、高度なログ解析ツールとしての機能も持ち、IT資産管理ツールやグループウェアのログデータをもとに、単なるログ管理ではなく、ログデータを元にユーザーの行動意図を分析・推測して怪しい行為を抽出するログプロファイリングをおこなうマネージドサービスです。具体的には、他のユーザーや普段の行動と比較した異常ユーザーの検知や、職域を超えた重要情報への接触などから、営業秘密の持ち出しの検知などが可能です。
また、翌営業日には分析を完了し、タイムリーにリスクを把握することが強みとなっており、転職市場の拡大、テレワークなど働き方の多様化、経済安全保障リスクの高まりを背景に、大手製造業、金融機関を中心に幅広い業種での導入が進んでいます。
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内部脅威検知サービスの導入事例:三菱UFJ eスマート証券株式会社様
内部脅威検知サービスを導入していただいている三菱UFJ eスマート証券株式会社様では、導入前は内部不正および情報漏洩リスクのモニタリングを独自で行っていました。しかし、膨大なログの分析は、コア業務に携わる担当者にとって大きな負担となり、多くの時間を要することが課題となっていました。
内部脅威検知サービスでは、ログの量によらず内部リスクを分析できるので、月次単位で行っていたログ分析を導入以降は日次で行えるようになりました。結果として、現場の負担は大幅に軽減されました。
▶ 三菱UFJ eスマート証券株式会社様の導入事例ページはこちら
まとめ
これまでお伝えしてきたように、内部不正対策を強化し、効果的なセキュリティを実現するためには、ログ解析ツールを用いたログ解析を効果的に行うためには、ただツールを導入するだけでなく、何のためにログを解析するのかという目的を明確にし、自社の環境やリソースに合わせた最適な運用を選ぶことが重要です。
企業の内部不正対策や情報漏洩対策について、より詳しい情報が必要な方や、具体的な相談をご希望の方はこちらからお気軽にお問い合わせください。
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