ネット炎上レポート 2023年2月版
2023年2月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
目次[非表示]
ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2023年2月のネット炎上トレンド
2023年2月に最も多かった炎上対象は、前月大幅にポイントが減少していた「企業・団体」が80%(前月比13ポイント増)を占めました。次いで、「個人・著名人」は14%(5ポイント減)、「マスメディア」は3%(4ポイント減)となりました。
また、「企業・団体」の炎上区分の内訳は、「サービス」が全体の50%(5ポイント増)となっています。次いで「メーカー」が13%(13ポイント増)、「インフラ」(3ポイント増)と「教育機関」(3ポイント増)がそれぞれ7%、「IT」が3%(4ポイント減)という結果になりました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容では、社会的な問題となった様々な業態での顧客による不適切行為の動画拡散などを含む「不適切発言・行為、失言」が48%(9ポイント増)を占めました。次いで、「顧客クレーム・批判」が19%(14ポイント減)、「不祥事/事件ニュース」が14%(14ポイント減)、「情報漏えい/内部告発」が10%(10ポイント増)、「異物混入」が9%(9ポイント増)という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
サービス変更時等の情報発信に批判的な意見が寄せられ炎上
企業が運用する公式YouTubeアカウントに突如今まで投稿されていた動画とは趣旨の異なる動画がアップロードされ、チャンネル名も変更されるという事象が発生しました。
背景には、チャンネルを運用していた担当者の退職に伴い、アカウントの運用方針の変更があったようですが、公式からSNS運用担当者が退職することに関する案内のみがコミュニティ機能へ投稿されたのみだったため、ユーザーからの不安の声が散見されました。担当者の退職情報公開後、担当者当人からチャンネル趣旨の変更についてアナウンスされました。
担当者からは、企業からどのタイミングで情報発信なされるか把握していなかったため、情報発信が遅れてしまったといった投稿もなされました。これらの統制のない情報公開を受けて、企業に対する不信感を表す投稿が相次いで確認されました。
結果的に、企業は改めて謝罪文を掲載する事態となりました。
この事例からは、情報発信のメディアや発信方法、タイミングを誤ることが、ユーザーにネガティブなイメージを与えてしまうリスクがあることが分かりました。
アルバイト従業員による不適切行為の動画が拡散し、炎上
とある宿泊施設のレストランにおいて、従業員が勤務中に商品の飲料を飲む様子など不適切な行動をとっている動画が拡散されました。従業員は制服を着ていたため、ユーザーによってすぐに撮影した施設が特定され、批判が殺到しました。批判を受けて企業が謝罪文を掲載しました。
いわゆるバイトテロ行為の炎上でしたが、コンセプトとしてホスピタリティーを打ち出しているアミューズメント施設の傘下であったこともあり、ユーザーからの批判の声も多いものとなりました。
まとめ
2月は、外食業界を中心に顧客による店舗での不適切な言動を収めた動画拡散に起因した炎上が相次ぎ、社会問題化しました。動画は数年前に撮影されたものであっても炎上し、不適切な言動を行った人物は名前や所属先など個人情報が特定され、デジタルタトゥーとして本人や所属組織にとって、重大な問題となり続けます。
不適切行為の舞台となりうる外食店舗を経営する企業側の観点に立つと、顧客の言動は企業がコントロールできる範囲を超えており、予防が難しいのが実態です。そのうえで、一部店舗では、AIカメラの導入や加害者に対して法的措置を取り、抑止効果を高める動きを見せています。
一方で、投稿者が従業員・顧客にかかわらず、自社の運営店舗での不適切行動があった場合には、企業に対して対応を求めるケースが多いため、事象を早めに把握して適切な対応を検討することが必要といえます。
実際に、1つ目の事例でも適切なコミュニケーションをステイクホルダーと行うことが重要であると分かりました。自社に対してどのような批判が寄せられ、どのような点が問題視されているのかを把握し、対応を検討することが求められます。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。