ネット炎上レポート 2024年6月版
2024年6月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2024年6月のネット炎上トレンド
2024年6月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が70%(前月比5ポイント減)を占める結果となりました。次いで「個人・著名人」(5ポイント減)と「マスメディア」(2ポイント増)がそれぞれ11%と続きました。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は「サービス」が35%(3ポイント減)、「メーカー」が19%(3ポイント減)となりました。さらに「自治体・団体」が8%(5ポイント増)、「IT」(2ポイント減)、「インフラ」(1ポイント増)がそれぞれ4%と続きました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、「顧客クレーム・批判」が67%(13ポイント増)と前月より多くポイントの増加を見せていますが、イラストコンテストに生成AIを使ったと思われる作品が入選していた事象などが発生したことが影響しています。次いで「不適切発言・行為、失言」(18ポイント減)と「情報漏えい/内部告発」(7ポイント増)がそれぞれ11%と続き、「不祥事/事件ニュース」が6%(2ポイント増)、「異物混入」が5%(4ポイント減)という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
歴史的に負の側面のある人物をコンセプトにした楽曲MVに批判が殺到
とあるアーティストの楽曲MVに対して批判が殺到しました。楽曲とMVは1人の偉人の新大陸への到達という功績に焦点を当てたものでしたが、歴史上でその後に起こった侵略行為などの負の側面を無視しているといった意見やMV内に登場する猿人は先住民をイメージしているのでは?といった批判の声が目立ちました。
批判を受け、アーティストからは謝罪文のリリースとMVの非公開の対応がなされました。迅速な対応にSNS上でもポジティブな意見が見られるようになった一方で、同じく本事象の声明を発表した楽曲のタイアップをされたメーカーは、「楽曲やMVの内容を事前に把握していなかった」と説明していたことで、疑問やグローバル企業がタイアップする企画として不適切とする声が散見されるようになりました。
企業がクリエイティブを作成する際には背景を十分に把握し、今回のケースのように偉人や歴史的な出来事をテーマにする際には十分な調査を行うことが重要です。他社や著名人などとタイアップ企画を実施する際には関わる企業が事前に把握してチェックする段階が必要だと分かった事例でした。
生成AIのイラストを活用したアニメイベントのポスターに批判が殺到
とあるイベントのチラシや公式サイトに使われた画像に生成AIが使用されていたとして、出演予定だったアーティストの出演や協賛企業の辞退を発表したことが話題となりました。
イベントがアニメ音楽を専門とするオーケストラによるもので、生成AIの使用は不適切であるといった批判の声が相次ぎました。生成AIには教師データとなる作品の著作権など法的な整備が追い付いていないなど解決すべきと認識されている問題があるため、企業が活用する場合にもリスクを認識する必要があります。
特に今回はアニメーションに関するイベントだったこともあり、問題が残る現状でのクリエイティブへの起用は、自団体が持たれているイメージや社会的期待を踏まえると炎上のリスクとなりえる事象と言えるでしょう。
まとめ
6月にはPRに使用したクリエイティブへの批判事象が目立ちました。
著名人とのタイアップやコラボなど自社だけで完結しない企画の場合には、企画段階を含めて事前に把握し、炎上のリスクを認識しておくことを推奨します。自社が把握していない場合においても、タイアップ企業として企業名が出ることで批判の対象となりえることを前提に企画をチェックすることが求められます。
また、生成AIの活用については解決されていない課題が多く、活用する企業の属性や社会的な期待によってはクリエイティブの表現に限らず、生成AIを起用すること自体が炎上リスクとなる可能性があります。
今回分析した2つの事例は、どちらも企業の世間からのイメージや社会的な期待に対してクリエイティブにギャップがあったことで批判を受けている側面がありました。自社の置かれている立ち位置や社会的なイメージをSNSの声から分析することで、求められる期待の認識が可能となります。自社の炎上リスクを把握するために定期的に実施することを推奨します。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。