ネット炎上レポート 2024年5月版
2024年5月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2024年5月のネット炎上トレンド
2024年5月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が75%(前月比7ポイント減)と全体の4分の3を占める結果となりました。「個人・著名人」が16%(11ポイント増)と大幅なポイント増加を見せていますが、イベントに起用されたインフルエンサーの不適切行為などが要因となっています。次いで「マスメディア」が9%(4ポイント増)となりました。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は「サービス」が38%(6ポイント増)、「メーカー」が22%(4ポイント減)となりました。さらに「IT」が6%(3ポイント増)、「自治体・団体」(15ポイント減)、「教育機関」(前月同数)、「インフラ」(3ポイント増)がそれぞれ3%と続きました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、「顧客クレーム・批判」が54%(14ポイント減)と全体の半分を占めています。次いで「不適切発言・行為、失言」が29%(10ポイント増)、「異物混入」が9%(9ポイント増)、「不祥事/事件ニュース」(6ポイント減)と「情報漏えい/内部告発」(1ポイント増)がそれぞれ4%という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
公式アカウントにおけるユーザーとのコミュニケーションが問題視される
とある企業の公式SNSアカウントの投稿に賛否両論の意見が寄せられました。ユーザーがあるお店の商品を利用したことをX(旧Twitter)に投稿したところ、公式SNSアカウントからコメントが寄せられました。しかし、そのユーザーは、公式SNSアカウントがエゴサーチで投稿を見つけ、反応したことをネガティブに捉えたようでした。
企業のSNS利用は、ユーザーとリアルタイムでコミュニケーションを取れるメリットがある一方、企業がユーザーとの距離感を見極められず不快に思われてしまうリスクもあります。
SNSを通して、自社やブランドに対するユーザーの認知を理解することはもちろん、活用するメディア自体の属性や利用ユーザーを鑑みたメディア選定や、ユーザーとのコミュニケーション方法を設計することが求められます。
起用したインフルエンサーが不適切な行動をしたとして企業にも批判の声
スポーツチームのイベントに登壇予定だったインフルエンサーの言動が不適切であるとして炎上しました。
チームのサポーターを公言しており、過去にはそのスポーツチームの公式YouTubeチャンネルにも登場していました。しかし、自身のアカウントでユニフォームを着て不適切な行動をする動画を掲載したことで、主にチームの他サポーターからコンプライアンス違反であるとの批判が相次ぎました。チームはインフルエンサーのイベント出演を取りやめたうえで、謝罪文を掲載しましたが、そのスポーツチームの管理体制を問題視する声も見られていました。
タレントの起用時には企業やブランドの顧客層とマッチするかを確認するとともに、過去の言動を含めて炎上リスクがないかをチェックし、企業のブランド棄損とならないための対策が求められます。
起用後には、起用タレントに対して企業の看板を背負うことの責任やルールを共有し、不適切な言動が発生しないために管理を徹底することも必要と言えるでしょう。
まとめ
5月に発生した事例では、企業のブランドを棄損しないための対策が求められる事象が発生しました。
1つ目の事例では、自社やブランドの顧客属性だけでなく、運用するSNSのユーザー属性とすり合わせた公式SNS運用や企画が求められることが分かりました。
2つ目の事例では、タレントの炎上リスクを事前に調査することで、自社のブランド棄損を防止する必要があります。それに加え、自社やブランドの顧客属性だけでなく、社会からの期待を理解した起用タレントの選定も重要であると言えます。
自社やブランドに対する世間からの論調や期待されている姿を把握することで、認識のギャップによる炎上を防止する一助としていただくことを推奨します。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。