ネット炎上レポート 2024年上期版
エルテスでは、毎月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとして報告しております。今回は、それら2024年上期(1月~6月)の炎上事例を時系列にまとめ、どのようなネット炎上の傾向があったのか。また、過去と比較して、どのような変化があったのかをまとめました。
目次[非表示]
- 1.炎上レポートの主旨
- 2.2024年上期全体の炎上傾向
- 3.炎上対象からみる上期炎上のトレンド
- 3.1.1)サービス企業の炎上
- 3.2.2)メーカー企業の炎上
- 3.3.3)クレームや批判による炎上
- 4.まとめ
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炎上レポートの主旨
エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上事例の傾向をお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
本レポートでは、炎上事例の変化を “炎上対象”と“炎上要因”の2つの観点から見ていきたいと思います。
2024年上期全体の炎上傾向
2023年下期(2023年7月~12月)と比較して2024年上期(2024年1月~6月)のネット炎上件数は5.6%減少しました。図1で記載している通り、業種ごとに分類するとサービスと自治体・団体の炎上件数が減少しております。
また、毎月の炎上件数では、上期を通じて2024年3月が最多になりました。3月には過去に炎上した著名人を起用したCMへの批判事例や公式SNSアカウントでの不適切な運用が複数炎上しています。
炎上対象からみる上期炎上のトレンド
図2は、2024年上期の炎上件数を月次で炎上対象別に整理したものです。ここからは、炎上対象の軸で2024年上期の炎上の特徴を見ていきたいと思います。
1)サービス企業の炎上
全体の炎上件数は2023年下期と比較して減少している一方で、サービス企業の炎上は6か月間の平均でも全体の40%を占めています。
サービス企業は、顧客対応の不満がSNSで拡散する事例が散見されたことが炎上事例の特徴でした。ユーザーの中で、直接企業に問い合わせるよりも先にSNSで発信し、自身の不満が第三者目線で同意を得られるものなのかを確認する動きがみられます。また、その事象に伴って発生した二次炎上の事例も散見されます。
<サービス企業で発生した主な炎上事例>
〇車椅子で施設を利用した客が次回来店を断られたとして批判殺到
〇イラストコンテストにおいて生成AIで出力された作品が入賞したとして炎上
〇施設の入園料について対応不満を投稿し炎上に加え、代表から届いた謝罪のDMが不快と再炎上
サービス企業の炎上として目立ったのは店舗や施設などでの対応不満がSNSで表出してしまうケースでした。批判を受けた後の企業対応がさらなる批判を生むケースも見られており、企業側の対応が事象の燃焼期間や話題の拡散を左右していると言えるでしょう。
以前であれば各店舗でのインシデントやトラブルは店舗から本部に対して伝達されるルートが一般的でしたが、店舗からの連絡よりもSNSでの投稿を通じて本部が事象を把握する方が早い場合も想定されます。企業としてはSNSで自社やブランドに対して炎上の火種となる投稿がないか、常時からキャッチアップできる体制を構築しておくことも一つのリスクマネジメントです。
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2)メーカー企業の炎上
2024年上期には、メーカーの炎上も下期と比較して多く見られたことも特徴と言えます。2023年下期には全体の12%でしたが、2024年上期には19%まで増加しています。増加の要因として、従業員の投稿による炎上が複数見られました。
<メーカーによる主な炎上事例>
〇同僚の私物に異物を混入させるなどの迷惑行為を行った従業員が炎上
〇新入社員が配属先などを明かし、入社式での写真を掲載したとして炎上
従業員のSNS投稿による炎上はこれまでにも多く見られてきました。
特に新入社員の世代はデジタルネイティブと言われ、SNSでの情報発信を日常的に行っている傾向があるため、SNSの利用を制限することは難しいのが現状です。企業としては社会人として自身の不適切な言動が企業に影響を及ぼすことを認識させる必要があります。また、自身の所属する社名を明かしていない場合でも、過去の投稿情報から所属先だけでなく、自身の身元などの情報が特定されてしまうケースも見られ、同様のリスクがあると言えます。
所属企業への悪影響だけでなく、自身へも悪影響を及ぼす可能性を認識してSNSの利用方法を改めて考える機会を作ることがリスク低減の一助となるでしょう。
※”企業・団体”は図1の「メーカー」「サービス」「IT」「インフラ」「自治体・団体」「教育組織」を指します。
3)クレームや批判による炎上
2023年通年の傾向として見られていた「顧客クレーム・批判」を起因とした炎上が2024年上期にも継続的に散見されました。
<主な顧客クレーム・批判による炎上事例>
〇PRに生成AIを活用したクリエイティブを起用したアニメイベントが炎上
〇イラストコンテストに生成AIで出力した作品が入賞し炎上
生成AIを取り巻く対応に関する事例が複数見られ、世間の注目度が高いトピックであることが分かります。生成AIでの作品の出力においては、教師データとなる作品の著作権など法的に整備できていない点など課題が残っており、企業がPRのクリエイティブに活用する場面においては批判を受けるケースが多くみられています。
イラストコンテストなどの企業が実施する企画においては、ユーザーからの不満のリスクマネジメントとして、生成AIを活用したものとそうでないイラストとの部門を分ける、AIで生成した作品の出品を禁止とするなどのルールを決めることを推奨します。
また、PRでの生成AIの利用で批判的な意見が少なかった企業・団体の例も存在します。企業が元来有するパーセプションによって、賛否が分かれると考えられます。自社の企画についてSNS上でどのような意見が出ているのか、万が一、火種となる投稿があった際に迅速に検知して、適切な対応を検討できる体制の構築を推奨します。
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まとめ
2024年上期の炎上トレンドを見ていくと企業の対応や方針についての炎上が多くみられる傾向がありました。自社やブランドがSNS上で話題に上がった場合に、企業がどのように対応をとるのか、どのような声明を出すのかがユーザーから注目されています。今まで炎上した企業の様々な対応や、それに対する批判が起きる事例も含め、ユーザーの中で経験として蓄積され、比較されてしまいます。企業はそれらを踏まえた対応や声明内容の検討が求められます。
特に企業への擁護も見られるような賛否両論となった場合には、必ずしも投稿や企画の取り下げや謝罪が適切でない可能性もあります。どのような点が問題視され、本当に訂正・謝罪の必要があるのかをSNSの論調把握と事実確認を掛け合わせて対応を検討することを推奨します。
また、炎上の要因としては「顧客クレーム・批判」が最も多く見られました。4月に施行された「合理的配慮の提供」の義務化などの法改正、未だ国際的にもルール整備が追いついていない生成AIの活用など、最新の情報をもって企画や対応の検討が求められます。
上記のトレンドから見ても、今までにどのような炎上が発生して、現在はどのようなトピックスが炎上しやすいのか、企業はそれに対しどのような対応をとり、SNSではどのような反応が見られたのか定期的に情報を取り入れる、その体制を作っておく必要があると言えます。同様の事象での炎上であっても企業のイメージや社会的な期待によっても論調が異なる可能性があるため、平時から企業・ブランドがどのようなイメージや期待を持たれているのかを把握しておくことを推奨します。
エルテスでは、引き続き月次で炎上傾向をまとめた炎上レポートを配信していきます。炎上のトレンドを把握頂き、企業のリスクマネジメントに役立てて頂ければと考えております。
また、毎月炎上レポートを配信するとともに、1つ炎上事例を取り上げて、炎上理解を深めるセミナーを開催しておりますので、ぜひご参加ください。
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引き続き、よろしくお願いいたします。
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