ネット炎上レポート 2024年11月版
2024年11月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2024年11月のネット炎上トレンド
2024年11月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が95%(前月比24ポイント増)となりました。顧客対応に関する批判事象が目立ったことに併せて、「個人・著名人」と「マスメディア」を対象とした炎上が多く見られなかったため、割合として相対的に数値が大きくなったことが要因となります。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は「サービス」が81%(32ポイント増)と大半を占める結果となりました。そして「メーカー」は9%(10ポイント減)、「自治体・団体」は5%(2ポイント増)と続きました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、「顧客クレーム・批判」が67%(21ポイント増)となりました。こちらの増加の要因も、顧客対応に関するクレームによる炎上が多かったことが挙げられます。次いで「不適切発言・行為、失言」は17%(21ポイント減)、「不祥事/事件ニュース」が11%(3ポイント増)、「異物混入」が5%(1ポイント増)という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
商品に虫が混入していたという問い合わせへの対応が遅れ、批判が殺到
菓子の製造・販売を行うとある企業に関して、異物混入の問い合わせへの対応遅延が発覚し、批判が殺到しました。
購入者が菓子の袋の中に虫が混入していることを発見し、お客様相談室に電話で問い合わせました。これに対し、「2週間以内に原因と状況を報告する」という旨の回答がありましたが、その後2週間経っても企業からの連絡はありませんでした。3週間以上が過ぎたため、購入者から再度責任者と話したいと伝えたものの、その機会が設けられることがなかったと投稿されていました。しかし、この一連の流れをマスメディアが取り上げた後に、企業は謝罪文をリリースしました。SNSユーザーからは、「顧客対応が不誠実である」といった批判が寄せられました。
顧客と企業間のトラブルは直接の問い合わせ以外にも、第三者に見られるSNSなどで投稿・拡散される可能性があります。リスク投稿に対しては迅速な事実確認や対応が求められるため、自社やブランド・製品に対する投稿を随時チェックし、早期検知する体制を作ることが重要です。
顧客対応をSNSで批判された後に対応方針を一変させ、さらに批判が殺到
フリマアプリの運営企業が、SNS上で顧客対応を批判された後に対応方針を変更し、批判が殺到しました。
炎上の発端はアプリ内での出品者と購入者のトラブルでした。これに関し、事務局の対応が購入者側に寄り添ったものであるとして、出品者がSNSで事務局とのやりとりを投稿しました。SNSユーザーからは事務局への批判や、「同じ体験をした」といった他のユーザーからの声が相次ぎました。話題が広がった後、事務局は出品者に補償を行いましたが、SNS上では「手のひら返しだ」といった意見が続出しました。
前述した通り、顧客クレームがSNSに表出した場合は拡散前にいち早くキャッチアップし、早期対応できる運用をする必要があります。
▼他のクレーム対応に関する炎上事例や対策ポイントがわかるお役立ち資料はこちら
まとめ
11月は、企業の顧客対応に関する炎上事例が目立ちました。
顧客対応における不満やトラブルは、顧客によってSNSに表出する可能性があります。投稿が他のSNSユーザーに発見され共感を呼ぶと、拡散するリスクがあります。特に、炎上系インフルエンサーが事象に言及した場合は瞬く間に炎上が大きくなり、沈静化に時間と工数を要する場合もあります。そのような事態を防ぐためには、拡散前にリスク投稿を早期検知する仕組みや、検知後にスムーズな初動対応ができる体制を整備することが重要です。
また今回取り上げた2つの事例は炎上後に企業対応が覆ったため、さらなる批判を呼んだという点も特徴でした。顧客一人の声では影響力がないと判断され、真摯な対応をしないのではないかと企業への信用が損なわれる可能性があるため、企業として誠実かつ一貫した顧客対応方針を定めることを推奨します。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。
前回の炎上レポートはこちら