
ネット炎上レポート 2025年2月版
2025年2月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
目次[非表示]
▼2024年下期(7月~12月)の炎上トレンドや目立った炎上事例はこちら
ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
▼新年度の前に押さえたい、2024年の炎上トレンドと2025年の炎上予測はこちら
2025年2月のネット炎上トレンド
2025年2月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が88%(前月比3ポイント増)となりました。そして、「個人・著名人」は8%(前月比3ポイント減)、「マスメディア」は前月と同じく4%という結果になりました。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は、「サービス」が54%(1ポイント減)、次いで「自治体・団体」が19%(12ポイント増)となり、前月から10ポイント以上増加しました。これは、自治体や団体による不適切発言に関する炎上が目立ったことが要因と考えられます。続いて、「メーカー」は15%と前月と同じ数値になりました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、「顧客クレーム・批判」が52%(8ポイント増)と半数を占める結果となりました。そして、「不適切発言・行為、失言」が39%(8ポイント増)、「不祥事/事件ニュース」が5%(1ポイント増)と続きました。「情報漏えい/内部告発」は4%(13ポイント減)と、前月よりも大きく減少する結果となりました。これは、前月の一時的増加から、推移が戻ったと考えられます。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
自治体が配布した性教育に関する冊子の内容が女性蔑視であるとして監修した団体が炎上
ある自治体が配布した性教育に関する冊子の内容について、女性蔑視であるとSNS上に批判の声が殺到しました。
該当の冊子は、プレコンセプションケア(性や将来の妊娠に関して正しい知識を身につけてもらう取り組み)の一環として、県内の高校生や市町村に配布されました。冊子では、ある年齢を過ぎた頃の卵子のことを「熟女」、閉経した状態を「閉店」と表現していました。SNSユーザーからは、「卵子の老化に関する表現が不適切である」、「精子も衰えるはずなのに、老化の表現が使われているのは卵子だけなのはおかしい」などと女性蔑視を指摘する批判的なコメントが相次ぎました。この騒動を受けて、自治体は「冊子を選定する上で配慮が不足していた」とコメントしました。
企画時には、クリエイティブの中で性別によって偏りが生じていないか、不適切と捉えられる表現はないか等、批判のリスクを事前に確認することを推奨します。また、性や妊娠といったデリケートな話題については、直接的な言葉を伝わりやすく表現する場面が多い分、結果的に不適切な表現とならないよう注意が必要です。
アニメーションCMに対し、頬を赤くするなどの演出が性的であるとして批判を受けるも賛否両論に
企業が公開したアニメーションCMについて、性的な演出がされていると批判意見が発生しました。
CMでは、若い女性がその企業の食品を味わう様子が描写されており、その中で女性の頬を赤くするなどの演出がありました。これについてSNSユーザーからは、「女性にのみ描写があるのは性的に見せる意図があるのではないか」「不適切だ」といったコメントがみられました。一方で、「それほど性的な表現ではない」「問題はないように思える」といった、CMへの批判を疑問視する声も上がっており、ネット上で議論が巻き起こる事態となりました。
また、今回のアニメーションCMについては生成AIの使用を疑う声も浮上しました。これを受けて、CMの制作を手掛けた企業は「制作過程で生成AIは一切使用していない」と声明を出しています。
SNSには多様な価値観を持ったユーザーが存在します。そのため、企業の本来の意図とは異なる形でユーザーにコンテンツを不適切だと受け取られ、批判が発生する可能性があります。公開前に、不適切と受け取られる可能性のある要素を確認することとあわせて、ユーザーとの認識のズレが発生した際の対応方針を定めておくことを推奨します。
▼騒動を拡大させないポイントは?企業のSNS炎上への対応事例はこちら
まとめ
2月は、性差別的な表現が指摘されて炎上した事例が複数見られました。
1つ目の事例においては、性別によって偏りのある表現は避けることや、性や妊娠といったデリケートな話題を取り上げる企画の表現方法には特に注意を払う必要性があることがわかりました。あわせて、クリエイティブに対して火種となるような批判投稿があった際に、早期発見・早期対応できる監視体制を取り入れることも、炎上のリスクを低減するための対策となります。
2つ目の事例においては、ユーザーからの批判の可能性を想定し、批判や議論が発生した際の対応方針を制作に携わる関係者と連携して事前に定めておく必要があることがわかりました。炎上を未然に防止するためには、ユーザーが不快感を持つ要素がないか、企画を公開前の段階で確認しておくことも重要です。しかし、どんなコンテンツも、企業の意図通りにユーザーに受け入れられるとは限らないため批判投稿がみられた場合には、定量・定性の両面から論調を見極めて対応を判断する必要があります。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。
▼リスク投稿を早期発見する仕組みとは?Webリスクモニタリングの詳細はこちら