
ネット炎上レポート 2025年10月版
2025年10月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2025年10月のネット炎上トレンド
2025年10月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が82%(前月比3ポイント減)と全体の8割以上を占めました。次いで、偏向報道を促す発言をしたメディアの炎上などが要因となって「マスメディア」が11%(7ポイント増加)と大きくポイントを伸ばしており、「個人・著名人」が7%(前月同数)と続いています。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は、「サービス」が57%(7ポイント増)と全体の半数以上を占めました。さらに「自治体・団体」と「メーカー」がそれぞれ11%(3ポイント減)となり、「教育機関」が3%(3ポイント増)と続きました。(図1)

収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、「顧客クレーム・批判」は45%(1ポイント減)、「不適切発言・行為、失言」が32%(1ポイント減)となりました。続いて「不祥事/事件ニュース」が14%(1ポイント増)、「情報漏えい/内部告発」が5%(1ポイント増)と「異物混入」が4%(前月同数)という結果となりました。(図2)

収集データを元にエルテスが作成
イラストレーターのトレパク騒動で起用する各社が対応を余儀なくされる
商業施設の広告イラストに自身の顔写真が酷似していることから、無断使用を疑うモデルの女性からの投稿が話題となりました。広告イラストを制作したイラストレーターは、投稿者の写真を無断で利用したことを認め、当該女性と協議し、事後承諾を得たことを発表しました。商業施設は問題を受け、広告の取り下げを迅速に対応しました。
SNS上では、イラストレーターから謝罪がなかったことに加え、この事象を機に過去作品でも多くの無断利用とトレースが疑われたことで話題が大きくなっていきました。中には企業とのタイアップや商品化されている作品もあり、該当企業は対応を余儀なくされる事態となりました。
事例からの学びとして、クリエイターとのコラボ企画を実施する場合には、起用時とコンテンツリリース時に求められる備えが明確になりました。起用時には、クリエイター自身の炎上リスクの事前調査に加えて契約書で法的に順守すべきルールを明確化する必要があります。コンテンツのリリース前には法的に注意すべき点に加えてコンプライアンス上避けるべきリスクも事前に把握した上でクリエイティブのチェックを実施することを推奨します。
また、今回のように過去の企画が、時間が経過してから掘り返されて批判に曝されるリスクも十分に考えられるため、自社について言及する批判意見が出ていないか把握し、火種があった場合には早期に検知・対応を検討できるよう体制を整えておく必要があります。
自治体が発行する婚活指南書が性役割の押し付けとして炎上
ある自治体が公開していた「婚活指南書」の内容に批判が多くみられました。問題となったのは、婚活時に女性は「パンプス」、「スカートかワンピース」が良いとする服装を指定する表現で、相対する男性側へのアドバイスが見当たらなかったことから「前時代的な価値観の押し付け」との指摘が相次ぎました。服装のアドバイスのほかにも男性側にはない「婚活力のセルフチェック」項目が女性版のみに記載されており、容姿への言及があったことにも批判が寄せられました。
企画時には、クリエイティブの中で性別によって偏りが生じていないか、不適切と捉えられる可能性のある表現はないか等、批判のリスクを多角的に事前に確認することを推奨します。
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まとめ
10月に発生している炎上の事象からはコンテンツのチェックの重要性が再度認識できる事例が散見されました。
1つ目の事例においては、当該商業施設以外にも、同一のイラストレーターの作品に関与する複数の企業が対応を実施しており、進行中の企画の差し止めや今後の起用を控える旨、過去のクリエイティブに関するトレースの有無の確認結果などが公表されています。
企業対応でも賛否が分かれており、対応への賞賛意見が多くみられた企業は、自社の過去企画について調査中であること、調査後の結果報告の二段階でリリースが公開されました。まずは調査中であることを公表することで、企業が事象を把握していることを認識させ、ユーザーからの問い合わせ対応工数を一定数削減することが可能となります。調査に時間がかかってしまうと、ユーザーからの関心度が低下し、企業が対応したかどうかを認識されないままとなってブランド棄損に繋がるリスクをはらんでいます。
企業は事象を早期に把握すると同時に、適切な対応を検討する必要があります。内容だけでなく、公表するメディア(HPやSNSなど)や方法次第でユーザーからの反応は異なるため、適切な見極めができるよう、他社の炎上時の謝罪や声明をユーザー論調の変化も含めて、ノウハウとして蓄積することを推奨します。
2つ目の事例においては、性役割の押し付けや容姿への必要以上の言及は炎上の火種となる可能性があるため注意が必要です。どのような表現が炎上リスクとなり得るかは、他社事例からデータを蓄積することを推奨します。
さらに、コンテンツのターゲットや公開範囲が限定的なケースであっても、SNSに表出してしまうことでターゲット外からの認知や背景などを除外した一部を切り取った拡散が想定されます。本来意図していない捉えられ方をしてしまうことをリスクとして考慮し、事前にFAQの整備やエスカレーションフローの設定をしておくことで、万が一批判が殺到してしまった場合にも迅速な対応を行うことが可能となります。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。







