ネット炎上レポート 2023年4月版
2023年4月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
<セミナー案内>
ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2023年4月のネット炎上トレンド
2023年4月に最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が72%(前月と同数)を占めました。次いで、「個人・著名人」は16%(2ポイント減)、「マスメディア」は9%(1ポイント減)となりました。
また、「企業・団体」の炎上区分の内訳は、「サービス」が全体の35%(1ポイント増)となっています。次いで「メーカー」が23%(13ポイント増)となり、製品のステルス値上げや景品表示法の違反などの問題が話題となっていた影響で大きく増加しています。さらに「インフラ」は7%(2ポイント増)、「自治体・団体」が5%(5ポイント減)、「IT」は2%(1ポイント減)と続いています。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容では、「顧客クレーム・批判」が53%(12ポイント増)を占めています。次いで「不適切発言・行為、失言」が37%(4ポイント増)、「不祥事/事件ニュース」が7%(8ポイント減)、「異物混入」が3%(3ポイント増)という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
画像生成AIを活用したPRポスターに批判殺到
イベントのPRポスターのクリエイティブが大きな批判を集めました。画像生成AIで出力したと思われるイラストでは着物が死装束で使われる左前になっており、着物の魅力を伝えるイベントのPRとして不適切だとの指摘が多く見られました。
これを受けて、運営側はメディアの取材に「着物はもっと自由で良いと思っている。ポスターはイメージで、深い意味はない。」と反論しており、公式SNSアカウントにおいても擁護的な投稿をリツイートするなど、炎上後の運営側の対応もSNS上では問題視されました。
直近大きく話題になっている画像生成AIの利用については、教師データに活用されるクリエイティブの知的財産権の保護や模倣などの問題が議論されており、法的な観点での批判リスクも存在します。
製品のステルス値上げを指摘され、炎上
原材料費の高騰などを受けて、多くのメーカーで値上げがなされています。そんな中で、あるお菓子メーカーの商品が、以前より顕著に内容量が減っているとSNS上で話題になりました。企業からは「内容量が減ったことは事実であり、内容量の減少に伴ってパッケージを変えることにもコストがかかってしまうため、パッケージは変えなかった」と取材に対して回答しています。
過去にも実質値上げ(ステルス値上げ)を行ったところ炎上してしまった事象がいくつか見られており、いずれの事例でもユーザー論調としては、「値段では今までと変わっていないと認識させておいて、量が減っているのは優良誤認ではないか」や「こっそり値上げするのではなくてしっかり発表してほしい」といった批判が見られます。
様々な商品・サービスで値上げが行われている状況において、企業がコミュニケーション方法を誤ってしまうと批判が生じることがあります。自社やブランド・製品のユーザー認知がどのようなものなのか把握、値上げや仕様の変更を行った場合に顧客からはどのような反応があるかを事前に想定し、事前にリリースするなどのリスクヘッジをすることを推奨します。一度ステルス値上げを行った企業は、不誠実な企業というレッテルを貼られてしまうリスクもあります。これから自社の商品やサービスを値上げする、仕様の変更を行う計画がある場合には注意したいポイントと言えるでしょう。
まとめ
4月には社会的に注目を集めている話題での炎上が見られました。1つ目の事例として多くの企業でルールが整備されていないであろう画像生成AIのPR利用のトラブルを取り上げ、使用する際には自社で作成する他のクリエイティブよりもさらに既存作品との類似性や自社イメージとそぐわないビジュアルになっていないかなどの一定のルールを設けたうえで活用することを推奨します。
2つ目の事例では多くの企業で相次いでいる値上げや仕様変更時のコミュニケーションの重要性が分かりました。値上げ実施前に、自社やブランド・製品のユーザー認知の論調を調査しておくことに加え、同業他社や類似商品の値上げ時の反応もチェックしておくことで、自社に対してどのような反応があるかを想像することが可能となります。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。