ネット炎上レポート 2023年6月版
2023年6月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2023年6月のネット炎上トレンド
2023年6月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が70%(前月比4ポイント減)となりました。次いで、インフルエンサーの不適切行為での炎上が散見された「個人・著名人」が15%(12ポイント増)となり、「マスメディア」は12%(11ポイント減)と大幅に減少し、前月までの平均的な数値に戻っています。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は「サービス」が全体の40%(9ポイント増)、前月「サービス」と僅差で大きな割合を占めていた「メーカー」が9%(17ポイント減)となり、食品の異物混入や顧客対応に関する炎上が多くみられていた前月からは大きくポイントが減少しました。同じく「IT」が9%(6ポイント増)、次いで「教育機関」が6%(3ポイント増)、「自治体・団体」(5ポイント減)と「インフラ」(前月同数)がそれぞれ3%という結果となりました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、飲食店の提供商品に関するものなど、サービス業でのクレーム事象が多く発生した「顧客クレーム・批判」が54%(16ポイント増)と全体の半数を占めています。次いで「不適切発言・行為、失言」が33%(2ポイント減)、「不祥事/事件ニュース」が13%(2ポイント減)という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
従業員が著名人の来店情報をSNSに投稿し、炎上
6月は、アルバイト従業員による著名人が来店したというSNS投稿が話題となりました。投稿にはレシートの写真が添付されており、著名人のクレジットカード情報や署名が分かる状態となっていました。投稿を見たユーザーからは、個人情報の漏えいでは?といった意見のほか企業の管理体制を問う意見が多くみられました。
その他にも、過去にも同じように著名人の来店をSNSで投稿した従業員が炎上するという事象は多く発生し、従業員の個人情報が特定され晒されるケースが散見されていたため、過去の炎上から学んでいないといった厳しい意見やそれらの対策を講じていないことの批判も見られました。企業は取材に対し、グループ店舗での行為であったことを認め、謝罪を行いました。
従業員が顧客情報をネット上に投稿するような店舗には行きたくないといった意見など企業自体のブランドイメージ棄損、業績への影響にもつながりうる事例となりました。
動画制作のスタッフから障がい者の扱いに関する告発を受けて話題に
食品メーカーの公式YouTubeチャンネルの動画制作を担当する制作会社スタッフからの告発投稿も話題となりました。YouTubeチャンネルで障がい者雇用に取り組むレストランの取材を行ったところ、企業側から「障がいを持つ従業員のインタビューをカットしてほしい」、「障がい者と健常者が働いていると表現することでかえって区別することになるので普通のレストランとして取り上げてほしい」と指示を受けたことは差別的であると告発しました。
これに対し、ユーザーからの反応は様々であり、企業側の指示が不適切であるというスタッフを肯定する意見のほか、「企業側に差別の意図はないのでは?」といった告発への反論や制作スタッフが企業の指示をSNSで明かすことは契約違反に当たらないのかといった制作会社スタッフの行動に対して、不信感を表すユーザーの声も散見されました。
制作会社スタッフ側・食品メーカー側それぞれに別の視点での批判が見られた事例となりました。
まとめ
6月は従業員や関係者からの投稿への批判が複数見られました。紹介した2つの事例においては、どちらも従業員のSNSの使い方やコンプライアンス意識向上を促すことである程度抑止できうる事象と言えます。アルバイトであっても、重要な情報を保有しており、従業員としてふさわしい行動をとることが求められます。企業に所属するすべての従業員へのリテラシー向上の取り組みを行う必要があります。
従業員数が多い、雇用形態が多様化しており、入れ替わりも激しいといった場合には、漫画コンテンツに書き起こすことで浸透のための取り組みを工夫している企業もあります。企業の属性や従業員数、形態に合った形でのリテラシー向上活動を行うことを推奨いたします。
また、マーケティング活動など外部のパートナーと企画を進めるケースも多いかと思います。このような場合には、公開前の企画ややりとりなどの内部情報漏えい事象によって、企業の管理体制が指摘されてしまうこともあります。従業員には、SNSリスク研修やコンプライアンス研修を行っているから大丈夫というものは、本質的な問題の対処とはなっておりません。パートナー企業や派遣として受け入れているエンジニアなど、自社に関わる関係者にもリテラシー向上が求められます。そのために、NDAを巻くなどの法的拘束力を高める取り組みとともに、具体的なリスク行動の説明など関係者のリテラシー確認と、不足している場合の対処などの取り組みが求められます。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。