ネット炎上レポート 2023年8月版
2023年8月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
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ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2023年8月のネット炎上トレンド
2023年8月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が86%(前月比18ポイント増)と大きく占める形になりました。前月18%の「マスメディア」が2%(16ポイント減)と大幅に減少したことが要因として挙げられます。「個人・著名人」は12%(5ポイント増)という結果になりました。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は「サービス」が全体の49%(13ポイント増)と約半数を占めています。次いで、「自治体・団体」(3ポイント増)と「メーカー」(11ポイント増)がそれぞれ14%となっています。「教育機関」は7%(4ポイント減)、「IT」は2%(5ポイント減)と続きました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、「顧客クレーム・批判」が46%(7ポイント減)と前月に続いて全体の半数近くを占めています。次いで「不適切発言・行為、失言」が32%(6ポイント増)、「不祥事/事件ニュース」が14%(7ポイント減)、「異物混入」が5%(5ポイント増)、「情報漏えい/内部告発」は3%(3ポイント増)という結果になりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
店舗での対応を批判する投稿に対し、擁護意見が多数寄せられ自浄
ある写真スタジオでの、スタッフの幼児に対する対応に不満を持ったユーザーが、その様子を収めた動画を投稿したことで話題となりました。
投稿者(幼児の両親)は、あやし方が雑で幼児への力加減が強いのではないかという不満を投稿しましたが、SNS上では不満に思うほどではないといった対応を擁護する論調が目立ちました。その後、投稿は削除され、批判の声は勢いを失う一方で、トレンドワードから事象を認識した過去顧客が当時利用した際の従業員の対応は良かったとする企業擁護の意見が多くみられました。
これにより、企業への批判の声は下火となり、企業への批判の声は拡散されず、ブランドへの悪影響は最低限に抑えられた事象でした。
女性従業員の性的消費を助長させるとして企業の公式SNSアカウントが炎上
タクシー会社が運用する公式SNSアカウントの投稿に批判が殺到しました。問題視された投稿は女性従業員の容姿を褒めるものや女性従業員が食べ物を咥える写真が添えられたもので、「性的に見られることを助長させる」「企業の公式として不適切である」といった指摘が相次ぎました。当該のアカウントは凍結され、企業HPから再発防止への言及を含めた謝罪文がリリースされました。
公式SNSアカウントの不適切な運用が継続的に行われていたことに対して、企業の管理体制に多くの批判が寄せられ、適切なSNS運用が企業に求められていることが改めて認識できる事象となりました。
まとめ
8月には「サービス」業界での炎上が約半数を占め、特徴的だった事例としても「サービス」業界のものが目立ちました。
1つ目の事例においては、普段からのファン形成が奏功し、批判意見に対して、企業を擁護する意見が批判論調を上回っていく、炎上の自浄作用が働いたと想定されます。これにより、クレーム投稿からの企業への影響が低減したと言えます。
2つ目の事例では、公式SNSアカウントの不適切な運用やその管理体制が批判され、代表が辞任の考えを示すなど、企業に対して大きな影響を与えることとなりました。公式SNSアカウントは多くのユーザーに発信でき、反応が見やすいといったメリットがある反面、伝えたいメッセージが正しく伝わらない可能性や、火種が多くのユーザーの目に留まりやすいなどのリスクをはらんでいます。
炎上の対策としては、運用のルールを策定・遵守し、発信する内容が企業の公式として適切かブランドイメージを棄損するメッセージが含まれていないかを複数の目で事前にチェックする必要があります。また、投稿したタイミングでは批判されていなかったとしても、時間をおいて注目を浴びる可能性があるため、投稿をウォッチしておくことを推奨します。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。