
内部不正管理の課題とは?事例から学ぶ原因と対策、UEBAによる解決策まで解説
内部不正は、社会的信頼やブランド価値を損なうだけでなく、事業継続や経営判断そのものに影響を及ぼす重大なリスクですが、現場では「どこから手を付けるべきか分からない」「ルールはあるが十分に機能しているか不安」といった声が多く、内部不正管理の方針を明確にできていない企業も少なくありません。
このコラムでは、企業が直面しやすい内部不正管理の課題を整理し、どのように解決していくべきかを具体的な課題解決事例とともに解説します。
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事例から見える内部不正管理の課題とは

内部不正の手口は多様化していますが、不正を許してしまう管理体制には共通する課題が存在するため、具体的な事例を通じて、なぜ不正が発生し、なぜ発見が遅れるのかを整理することが重要です。次に、実際に発生した代表的な事例を紹介します。
情報管理の甘さから生じた個人情報の持ち出し
個人情報を扱う現場では、アクセス制御や端末利用ルールが不十分だと情報の持ち出しリスクが高まります。
ある地方自治体では、職員が業務文書を私用端末に保存し、外部へ持ち出した事例が報告されています。この事例では、担当部門がアクセス制限を適切に設定していなかったことに加え、私用端末の利用ルールが明確に定められていなかったことが問題となりました。その結果、市民からの信頼が損なわれ、組織に厳しい目が向けられる事態になりました。
長期間見過ごされた不正なデータ操作
品質管理や業務データの正確性が求められる部門でも、監査体制やチェックの仕組みが十分に機能していないと、不正が見過ごされる可能性があります。
ある製造業の事例では、品質検査データが長期間にわたって書き換えられていました。この事例では、現場の管理部門が過去の慣行を疑問視せず、内部監査部門や外部のチェック体制も十分に働かなかったため、不正が検出されないまま進行していました。結果として最終的に経営陣の説明責任が問われ、企業全体の信用に大きな影響が出ました。
なぜ内部不正は起きるのか

内部不正の背景には、行為者個人の問題だけでなく、組織構造や文化、管理体制など複数の要因が重なったときに起こる可能性が高まります。
ここでは、不正のトライアングルと呼ばれる「動機・機会・正当化」という3つの観点から内部不正が起こる理由を整理した上で、自社が抱える管理上の課題を具体化するためのチェックポイントを解説します。
関連記事:不正のトライアングルとは?企業の内部不正に繋がる要因と対策を解説
動機(プレッシャーや誘因)
プレッシャーが強い職場では、結果重視の風土が形成されることがあります。特に厳しい収益目標や品質目標、対株主対応などが優先される環境では、ルール遵守より「結果を出すこと」が優先されやすくなります。
このようなプレッシャーは従業員の行動判断に影響を与え、不正行為を誘発する一因になる場合があります。実際に、海外で発覚した大手企業の会計不正事件では、利益水準の維持が内部不正の誘因となっていたと指摘されています。
機会(不正を実行できる条件)
内部不正が発生した多くの事例では、従業員や関係者がシステムやデータへアクセスできる「機会」が存在していました。
具体的には、企業における閲覧権限や操作権限が、業務上必要な範囲を超えて広く設定されているケースがあります。例えば、他部署へ異動した後も旧権限が残っている、退職者のアカウントが停止されていない、委託先に付与した権限の範囲が明確でないまま運用されているといった状況が該当します。
こうした権限管理の不備は、従業員や委託先が不正行為を実行できる機会を生み出します。さらに、このような権限管理の隙は、人手不足や現場の負担が大きい部署ほど見過ごされがちです。
正当化(不正を合理化する心理・制度の弱さ)
企業の中には、形式的には規則や監査体制が整備されているものの、現場の雰囲気として「多少のルール違反は許容される」という意識が残っているケースがあります。そのような職場環境では、小さな不正が繰り返されて大きな問題に発展する可能性があります。
また、内部通報制度が設けられていても、実際の運用で通報後の対応が遅い、通報者が報復を恐れて声を上げない、制度の周知が不十分などの理由で機能していない場合、抑止力として十分に働きません。こうした状況が、不正を心理的に正当化する背景になります。
関連記事:内部不正検知の重要性とは?従来対策の限界とログ分析による早期発見のポイント
企業が直面する「内部不正管理」の課題

多くの企業が内部不正へのリスクを重大な経営課題と認識し始めていますが、どのように管理体制を整えるべきか判断に迷っているという声も少なくありません。ここでは、実際の現場で聞かれる課題を取り上げていきます。
① 対策の優先順位が定まらない
企業は内部不正対策として、アクセス管理・ログ管理・監視体制・教育・通報制度など複数の要素を組み合わせる必要がありますが、どれを優先すべきか判断しづらいという課題があります。その結果、「必要な対策であることは分かっているが、具体的な計画が進まない」という状態に陥りがちです。
② 委託先との管理責任の線引きが難しい
業務委託や外部パートナーを利用する企業では、自社がどこまで管理し、どこから委託先が責任を負うかの判断が困難なケースがあります。委託先の管理体制が十分でなければ、自社の弱点となる可能性があり、適切な線引きと運用ルールの明確化が求められます。
③ 組織文化や教育が追い付かない
制度やルールを整備しても、内部不正対策の意図が従業員に正しく伝わっていないと、効果は限定的になります。内部不正を「自分には関係ない」「ばれなければ問題ない」と考える意識が残ると、不正行為は繰り返されやすくなります。こうした意識改革には時間がかかるため、制度整備と教育を同時に進める姿勢が重要です。
④ ログ管理や権限管理が複雑化している
内部不正は表面化しにくいため、アクセス権限やPC操作ログの管理が不十分な場合、「見えない部分」が不正の温床になるリスクがあります。特に、長期在籍者・異動後の管理がされていない従業員・退職者のアカウントが残っていると、不要なアクセス権が放置されてしまいます。こうした状況は、内部不正を見逃す大きな要因です。
⑤ 通報制度の運用が形骸化している
通報制度を設けていても、通報後の対応が遅い、通報者が報復を恐れて活用されないといった状況では、制度は抑止力になりません。抑止力を高めるには、通報内容の調査結果を基にした是正措置・類似事象の再発防止に向けた仕組みなど、迅速かつ実効性のある運用が不可欠です。また、経営トップや外部委員会による監視が効果的に機能していないと、内部不正が長期化するリスクが高まります。
内部不正管理を成功させる効果的な対策

内部不正管理を形だけの取り組みで終わらせないためには、ルール整備だけではなく、日常業務の中で機能する仕組みを構築することが重要です。
実際の現場では、単一の施策では不正の機会をうまく制御できないことが多く、複数の対策を組み合わせて運用することが求められています。ここからは、現場で効果が出ている対策と実践方法を紹介します。
① ログ管理とID管理による不正行為の抑止と検知
内部不正を抑止し早期に検知するためには、企業が日常的に使用しているアプリケーション、社内システム、データベース等における操作について、誰がいつどのような操作を行ったのかを後から確認できる状態にしておくことが重要です。
具体的には、パソコンの操作履歴、ファイルの閲覧・持ち出し状況、ネットワークへの接続状況や外部機器の利用記録などを漏れなく記録し、一定期間保存できる仕組みを整える必要があります。
こうしたログの収集・保存は、不正の実行を根本から抑止するだけでなく、発生時点での追跡調査や原因分析にも不可欠な基盤となり、ユーザーや端末の行動パターンを学習し、通常の状態から逸脱する挙動を自動的に検出するUEBA(User and Entity Behavior Analytics)のような仕組みと組み合わせることで、従来型のルールベースの監視では見逃されがちな異常行動も検知しやすくなります。
またログ管理に併せて、システムやサービス利用者のIDやパスワードなどアカウント情報を適切に管理するID管理も欠かせません。退職者のアカウントを放置しておくと悪用される可能性が高まるのに加え、それを狙った外部からの攻撃にも繋がる可能性があります。
さらに、IDに付与する適切なアクセス権の設定も求められています。過剰に付与されていると不正が発生する余地が残るため、不要な権限を削除し、退職や部門異動が発生した場合には、付与された権限を速やかに見直して適切に削除・変更する運用が求められます。
このように適切なID管理とアクセス権の設定を行うことで、そもそも不正を起こさせないような体制づくりを行うことができます。
関連記事:ログ分析がセキュリティ対策に不可欠な理由と重要性を解説
② 委託先管理と運用ルールの強化
内部不正対策は自社の従業員だけを想定して考えるものではなく、業務を委託している企業や再委託先で働く人員も含めて、誰がどの情報に触れているのか、どこまでアクセスが可能かを把握し管理することが重要です。
委託先に業務を任せきりにするのではなく、委託先がどの情報や機能にアクセスできるのか、その範囲とルールを事前に整理し、契約内容として明確に定義し、実際の運用でも遵守されている状態を維持することが必要です。
また、契約上の取り決めに加えて、業務の状況を定期的に確認できる仕組みを整備し、委託先における情報の扱い方や権限の付与・変更の経緯を定期的に確認して記録することで、リスクが顕在化する前に気づける体制をつくることができます。
さらに、紙資料の印刷やデータの社外持ち出し、個人情報を含むデータの移動についても具体的な行為としてどこまでが許容され、どこからが禁止されるのかを明確に定めておくことで、判断に迷う場面を減らし、不適切な取り扱いを防ぎやすい環境をつくることができます。
関連記事:情報漏洩の事例7選。原因から企業がとるべき対策も紹介
③ 意識向上・教育・組織文化の醸成
内部不正の抑止には、単に仕組みやルールを整備するだけでなく、社内の従業員に対してルールが自分ごととして理解され、日常的に意識されるような取り組みが重要です。
代表例として、不正行為が企業や個人にとってどのような影響を与えるかを日常業務と関連づけて説明する研修を定期的に実施し、不正は他人事ではなく自分自身にも関わる課題であるという理解を徹底することが挙げられます。こうした取り組みにより、従業員の行動意識を高め、ルール遵守への理解と協力を促進します。
また、経営層が内部不正に対してどのような姿勢を示しているかは、組織全体の風土に大きな影響を与えるため、経営層自らが内部不正を許容しないという意思を日頃の発言や行動で示し、組織全体に価値観を浸透させることが求められます。合わせて、現場で違和感や問題を感じた従業員が声を上げられやすい雰囲気を整えることも、不正行為の抑止のみならず、早期発見にも寄与します。
関連記事:コンプライアンスはなぜ必要?重要性やその目的を解説
④ UEBAによる行動分析と早期検知
内部不正への対応を進めるにあたっては、日常業務における操作ログやネットワークへのアクセス情報などを可能な限り客観的なデータとして把握し、データを統合して継続的に分析する仕組みを構築することが重要です。
こうしたログや操作データは、従来の単純なイベント検知だけでは把握しきれない異常な行動やふるまいを捉えるうえで基礎となります。UEBAソリューションを用いることで、ユーザーの通常行動から逸脱したパターンを捉え、不正行為の兆候として早期に検知しやすくなります。
関連記事:UEBAとは?SIEM・EDRとの違いと振る舞い検知の重要性を解説
デジタルリスクに備えるならエルテス
エルテスでは、企業内部の不正や情報漏洩のリスクを行動分析の技術で検知することに特化した「内部脅威検知サービス(Internal Risk Intelligence)」を提供しています。内部脅威検知サービスは、社内で蓄積されたさまざまなログデータや利用記録を統合的に分析し、従業員の行動パターンから内部不正や情報持ち出しなどの異常な行動を検出し、リスクの早期発見につなげることを目的としたサービスです。
内部脅威検知サービスのUEBAによる分析の仕組み
内部脅威検知サービスでは、企業が既に利用しているIT資産管理ツールやグループウェアが保持するログデータを統合的に収集し、機械学習や統計的な行動分析により、従業員や端末の日常的な行動パターンを学習します。
UEBAは、こうした行動パターンの「基準(ベースライン)」を基に、実際の活動がその基準からどの程度逸脱しているかを継続的に評価します。例えば、特定のユーザーが通常アクセスしない重要データにアクセスしたり、勤務時間外に大容量のデータを移動させたりする場合、従来のルールベースでは検出が困難な異常行動として検知します。
また、内部脅威検知サービスは解析結果を翌営業日までに報告できるなど、タイムリーなリスク把握と対応の促進を重視しています。こうした機能により、内部脅威検知サービスは大手製造業や金融機関を中心に幅広い業種で導入が進み、UEBA運用監視サービス市場でシェアを獲得している実績もあります。
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導入事例|三菱UFJ eスマート証券株式会社様
内部脅威検知サービスを導入した三菱UFJ eスマート証券株式会社様では、導入前に内部不正や情報漏洩リスクのモニタリングを自社で実施していましたが、膨大なログの分析は担当者にとって大きな負担となっていました。
内部脅威検知サービスを導入することで、ログの量にかかわらず行動分析を効率的に行えるようになり、月次で行っていた分析を日次で実施できる体制が整った結果、現場の負担が大幅に軽減され、リスク検知のスピードも向上したとの声をいただいております。
まとめ
これまで様々な事例や対策のポイントを紹介してきましたが、内部不正は規模や業種を問わず、どの企業にも起こりうる経営リスクであるということを改めて認識しておく必要があります。しかし、内部不正リスクは決して管理できないものではありません。
自社に適する内部不正対策や、内部脅威検知サービスの具体的な課題解決事例について気になる方は、ぜひ一度エルテスにご相談ください。
内部不正対策は、エルテスへ








