コンプライアンスはなぜ必要?重要性やその目的を解説
ビジネスの場で「コンプライアンス」という言葉をよく耳にするようになった一方で、コンプライアンスの意味やその重要を聞かれると、説明できないという人も少なくありません。今回は、そんなコンプライアンスの重要性や目的について解説します。
目次[非表示]
- 1.年々重要性が増すコンプライアンス
- 1.1.コンプライアンスとは?
- 1.2.コンプライアンスを守る目的は?
- 1.3.コンプライアンスとそれぞれの役割
- 2.企業がコンプライアンスを守る重要性
- 3.コンプライアンスの重要性が高まり続ける背景とは?
- 3.1.企業へ向けられる社会的意識の変化
- 3.2.企業に対する法規制の厳罰化
- 3.3.企業不祥事とデジタルテクノロジーの発展
- 3.4.多様性が認められる社会への変化
- 4.コンプライアンスを遵守するために
- 4.1.コンプライアンスを守らないと何が起こる?
- 4.2.対策① 企業内部の整備と内部通報制度
- 4.3.対策② 社員の行動ポリシーを定める
- 4.4.対策③ 意識向上のための教育・研修実施
- 5.まとめ
- 6.【関連情報】
年々重要性が増すコンプライアンス
はじめに、コンプライアンスの重要性について基礎知識を確認していきましょう。
コンプライアンスとは?
コンプライアンス(compliance)は、直訳して「法令遵守」と言われることが多くありますが、企業が法令・規則・社会的倫理などに従い業務を行うという意味も含まれています。最近では、企業独自のポリシーや行動規範も含まれるケースもあり、コンプライアンスが指す範囲が広がっています。
コンプライアンスを守る目的は?
コンプライアンスを守る目的は、大きく「①法令遵守」と「②企業倫理と社会的責任」に分けられます。
①法令遵守
法律・法令・条例といった、国や自治体で決められた規則に違反して事業を行うことはできません。違反した場合、罰金や罰則、営業停止、経営者逮捕など、深刻な損失に繋がります。
②企業倫理と社会的責任
コンプライアンスの遵守は、企業の社会的責任を全うすることにも繋がります。
利益のみを追い求めるあまり、取引先や社員への被害、環境破壊、モラルに反したことが起きては、社会的な信頼が失墜してしまいます。「信頼できる企業」というブランドを築くためにも、コンプライアンス遵守は欠かせません。
コンプライアンスとそれぞれの役割
<役員の役割>
役員には、コンプライアンス違反を防ぐシステムの構築及び運用、重大な問題行動や過ちが発生した時にその影響を最小限に抑え、早い段階で企業活動の再開に向けた準備と対応を実施する責任を負います。また、役員同士がお互いの職務執行の監視を行い、コンプライアンス違反の疑いがあれば監査役などに報告する必要もあります。
<管理職の役割>
役員による業務執行の補助役として、経営層が決めた規則・方針・体制・手続きを社内で有効に展開する役割を持ちます。さらに、一般社員で問題が起きた場合は、問題の把握、経営への報告、管理の有効性に関する点検及び是正の責任があります。
<一般社員の役割>
法令、企業規則・社内規則を正しく理解し、所定の申請・報告手続きを定められた通り正確に処理する責任があります。そのほかにも、管理職とともに、普段から正しく業務を行うことも役割のひとつです。
企業がコンプライアンスを守る重要性
企業がコンプライアンスを守る重要性について、次の3つが挙げられます。
- 企業の評価・ブランディングを守る
- 法的トラブルに発展するリスクを抑える
- ステークホルダーとの関係性や持続可能なビジネスの継続
企業の評価・ブランディングを守る
もし、不正行為が慣例化している企業があれば、その企業は評判を大きく毀損するリスクが高いと言えます。
コンプライアンス違反に繋がる不正行為は、取引先や顧客の流出、優秀な人材確保の機会損失、金融機関からの評価失墜など、様々な場面でのダメージになります。反対に、コンプライアンスをきちんと遵守できている企業は評価が高くなり、良い口コミが出回ります。企業の評価・ブランディングを守るためにも、コンプライアンスの徹底は欠かせません。
法的トラブルに発展するリスクを抑える
大切なことは、時代に即した法律・法令のもとで企業活動を行い、ルール違反をしないことです。
法的なトラブルに発展するリスクを抑え、罰金など金銭的な打撃や罰則による社会的信用を失わないためにも、コンプライアンスは非常に重要な役割を担っています。
ステークホルダーとの関係性や持続可能なビジネスの継続
企業にとってのステークホルダーは、取引先・クライアント・社員・株主・地域社会などです。コンプライアンスの遵守は全てのステークホルダーとの信頼構築に繋がります。
また、投資市場では近年「持続可能な経営」をする企業が高く評価される傾向にあります。投資の場だけでなく、ステークホルダーから歓迎されつつビジネスを継続するためにも、コンプライアンスの徹底が大切です。
コンプライアンスの重要性が高まり続ける背景とは?
コンプライアンスの重要性が高まり続けている理由として、次の4つが挙げられます。
- 企業へ向けられる社会的意識の変化
- 企業に対する法規制の厳罰化
- デジタルテクノロジーの発展と企業不祥事
- 多様性が認められる社会への変化
企業へ向けられる社会的意識の変化
時代の移り変わりや、社会的な課題の変化により、企業に求められる役割が増えています。環境保護に気を配った生産活動をはじめ、人材不足に伴う社員の人権保護、デジタル化に伴う情報漏洩対策など、企業に対する期待も高まっています。
これによりコンプライアンスの範囲が広がり、重要性も高まり続けています。
企業に対する法規制の厳罰化
企業に対して、環境規制、労働基準法の改正、データプライバシーといった法規制が厳格化したことによって、遵守すべき法律や法令が増えています。
複雑化する規則に対応するため、コンプライアンス研修の実施やアップデートを図ることが企業には求められています。
企業不祥事とデジタルテクノロジーの発展
コンプライアンスが注目されるようになったのは、1990年代~2000年代にかけて国内企業による不祥事が相次いだこと、消費者被害が増えたことが要因です。
さらに、デジタルテクノロジーの発展により、プライバシー保護や情報流出対策はもはや必須となっています。近年では、ネットの発達とともにSNS上でコンプライアンス違反が問題視されることも起きています。
多様性が認められる社会への変化
企業活動がグローバル化したことで、異なる国籍・言語・カルチャーの人々と良好なパートナーシップを築くことが求められるようになりました。
宗教観の違いへの配慮、多様性が認められる社会を実現するため、配慮すべき項目が増えコンプライアンス対策も複雑化しています。
コンプライアンスを遵守するために
コンプライアンスを徹底するために大切なことは、経営トップから一般社員に至るまでコンプライアンスの重要性を正しく理解し、意識向上を心掛けることです。
コンプライアンスを守らないと何が起こる?
コンプライアンスが守られなかったとき、たとえば違反行為として次のような問題が想定されます。
- 顧客情報の流出
- 過度な残業による社員の体調不良
- ハラスメント(セクハラ・パワハラ・モラハラなど)
- 景品表示法違反 など
コンプライアンス違反を起こし、法律に抵触する場合は罰金が科せられることがあります。内容によっては、裁判になったり、損害賠償責任を負う恐れもあります。
それだけでなく、ユーザー、クライアント、株主から企業としての信用が失墜し、売り上げの低下、ブラック企業といったレッテル、スタッフの離職など様々な影響が考えられます。一度失った信用を取り戻すことは容易ではなく、そのまま倒産してしまう会社も少なくありません。
対策① 企業内部の整備と内部通報制度
コンプライアンス遵守のため、社内倫理規定や就業規則を見直し、内部規定の整備を行うこともひとつの対策です。また、コンプライアンス違反が起きていないかきちんと把握するため、監査部を置いて内部状況を可視化するのも重要になります。
さらに、経営層でも気づかないコンプライアンス違反が発生した時のため、内部通報制度(窓口)を設置しましょう。迅速かつ公平・公正な対応を心掛けるとともに、報告者の匿名性を守ることも大切です。
対策② 社員の行動ポリシーを定める
自社のコンプライアンス指針や、社員の行動ポリシーを文章に起こし、行動規範を策定します。役員・管理職層のみならず、一般社員にも周知及び徹底し、コンプライアンスの重要性を含めて理解してもらいましょう。
また、リスクが発生した時にどのような行動をとれば良いのか、あらかじめ社内で基準を決めておくことで、リスクに対する意識を共有できます。
対策③ 意識向上のための教育・研修実施
コンプライアンスを守る制度が確立しても、社内に定着していなければ意味がありません。全ての社員にコンプライアンスを浸透させるため、継続的な教育・研修を行いましょう。
年次や役職別に研修を実施したり、1on1ミーティングの場で繰り返しマネジメント層から従業員へ伝えていくことも効果的です。
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まとめ
コンプライアンスの目的や重要性が理解できると、コンプライアンス対策はリスクマネジメントにも、ステークホルダーからの信頼獲得にも効果のある方法だとわかります。健全かつ安定した経営を継続していくためにも、正しい知識と高い意識を持って業務に取り組むことが大切です。
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