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子会社やグループ会社の炎上で問われる親会社のガバナンスとリスク

近年、急激な社会変化や後継者不足、経営者の高齢化などを背景にしたM&Aの増加や、事業ポートフォリオの強化のための戦略的子会社の設立など、企業は子会社・関連子会社を配置して、企業グループを形成しています。その中で、子会社の不祥事や炎上問題などが頻発し、グループ経営における「守り」のガバナンスの重要性も再認識されています。本記事では、今、グループ経営にどのような炎上対策が求められるのか、紹介します。


目次[非表示]

  1. 1.企業に求められるコーポレートガバナンス強化
  2. 2.上場企業・上場子会社が炎上する要因
  3. 3.子会社の炎上が親会社へ影響した事例
  4. 4.グループ会社のリスク発生時における親会社の対応
    1. 4.1.①対外的な説明・広報対応
    2. 4.2.②株主への説明責任
    3. 4.3.③グループ全体での再発防止策の取り組み
  5. 5.子会社の炎上でグループに生じるリスク
    1. 5.1.親会社およびグループ全体の評判低下、ブランド毀損
    2. 5.2.ビジネスや市場への悪影響
  6. 6.グループ経営において実施すべき炎上対策
    1. 6.1.グループ全体を対象としたリスク検知体制の構築
    2. 6.2.リスク対策を相談できる外部パートナーを見つけておく
  7. 7.グループ全体を意識したリスクマネジメントの強化を
  8. 8.関連情報
  9. 9.参考


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企業に求められるコーポレートガバナンス強化

ガバナンス(governance)はそもそも統治や管理などを意味する言葉で、「コーポレートガバナンス」や「グループガバナンス」はその企業や子会社を含めたグループの管理体制といった意味合いで使われます。

2015年に東京証券取引所と金融庁が制定したコーポレートガバナンス・コードが適用されて以降、上場企業を中心に多くの企業でコーポレートガバナンスの強化が取り組まれてきました。特に、政府が主導する「未来投資戦略2018」では、グループ経営において、「守り」と「攻め」の両面でいかにガバナンスを働かせるか、事業ポートフォリオをどのように最適化するかなど、グループガバナンスへの取り組み強化が示唆されました。

その後、子会社の不祥事問題などの背景も加わり、グループでの企業価値向上を目的としてグループ経営のガバナンスが議論されるようになりました。また、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」が経済産業省を中心にまとめられ、親会社にはグループ全体の内部統制システムの構築・運用や、上場子会社への適切なリスク管理が求められています。


上場企業・上場子会社が炎上する要因

上場企業あるいは、上場子会社であることは、炎上リスクに繋がりやすいです。炎上するということは批判されることであり、批判が生まれる理由には、私達が認識する対象(企業や個人)への期待値と相違が生じる言動があります。上場企業、上場子会社であることは、コンプライアンスが守られていて当然、内部統制が構築されていて当然という期待値があります。そこで、その期待値から逸れてしまう言動が行われると容易に炎上に繋がってしまうのです。

また、上場企業の子会社には、M&Aによって上場企業グループに参画したケースもあり、子会社役員、従業員に上場企業の役職員として求められる言動(コンプライアンスの水準)の教育が行き届いていない可能性も考えられます。そういったグループ全体で内部統制が取れていないことも炎上の要因になり得ます。

子会社の炎上は、時として親会社やグループ会社全体のレピュテーションにダメージを与え、デジタルタトゥーとして、残り続けるリスクになります。実際に、上場子会社の炎上やそれらが親会社に与えた影響について次では紹介します。


子会社の炎上が親会社へ影響した事例

2021年、ある企業が出稿した駅のデジタルサイネージ広告のクリエイティブに批判が集まり、炎上しました。広告は出勤するビジネスパーソンに向けたメッセージでしたが、見た人を煽る印象や不快な印象を与えてしまうと批判を受け、企業は広告掲載開始からわずか1日で謝罪し広告を取りやめる事態になりました。

この炎上の影響はそれだけでは留まらず、その1か月後に開催された親会社の決算説明会で、株主から炎上した広告への質問が相次ぎ、親会社が説明を求められました。配慮に欠いた広告によって炎上してしまう事例は多々ありますが、親会社の決算説明会で説明を求められたことでさらに注目を集めました。

別の事例では、ある化粧品メーカーがステルス・マーケティング疑惑で炎上した際に、当事者である企業からの発表に加えて、親会社からもプレスリリースが配信されました。これらの事例から、近年はネット炎上に遭ってしまった会社が子会社もしくはグループ会社であった場合、親会社にも説明責任など対応が求められると考えて良いでしょう。


グループ会社のリスク発生時における親会社の対応

子会社・関連会社が炎上した場合、親会社には外部と内部への対応が求められます。対応内容は、大きく以下の3点があります。


  1. 対外的な説明・広報対応
  2. 株主への説明責任
  3. グループ全体での再発防止策の取り組み


①対外的な説明・広報対応

まず親会社には迅速かつ適切な広報対応が求められます。この場合に求められるのは、子会社と連名で同じ広報を発表するのではなく、親会社の立場として、親会社の責任や、不祥事を起こした子会社とその他のグループ会社への対応を表明することが大切です。

急なクライシス対応のうえ、自社内ではなく子会社の不祥事であれば実態の把握に時間がかかり、その間に批判が増大することも考えられます。迅速に対応できるように、日ごろから連携フローや対応手順を整理しておきましょう。


②株主への説明責任

上場している企業であれば、株主に対して説明することも大切です。炎上のようなインシデントの発生は、コーポレートガバナンスの観点からの批判や、株価への影響という観点での批判が株主から生じうることが想像されます。

紹介した事例の通り、炎上した会社の親会社が決算説明会という場で株主から説明を求められることも実際に起きています。株主からの信頼や企業価値を下げないためにも、①と同様に親会社の立場として起きた不祥事に対して説明や質問への回答を行いましょう。


③グループ全体での再発防止策の取り組み

炎上した事例によっては説明責任の中に、再発防止の取り組みを含める必要があります。この再発防止策は親会社や炎上した会社はもちろん、当事者ではないグループ企業にも適応させることが大切です。グループ企業への適応を行うことなく、短い期間で別のグループ企業が炎上するなど同じようなインシデントを発生した場合の批判は必至です。

また、炎上への早期対応も、再発防止策の実行も、業務負担が大きく、本来行うべき業務にリソースを避けない環境となるリスクもあります。予防策の実行を検討しましょう。


子会社の炎上でグループに生じるリスク

子会社が炎上した場合、親会社およびグループ会社への影響は以下の2点が考えられます。


  • 親会社およびグループ全体の評判低下、ブランド毀損
  • ビジネスや市場への悪影響


親会社およびグループ全体の評判低下、ブランド毀損

昨今のネット炎上の傾向として、SNSで批判が集まった場合、その媒体内に留まらずネットニュースに取り上げられてしまうことも多くあります。炎上の規模が大きくなった場合、さらにマスメディアのテレビや新聞に取り上げられることもあります。その際に、「●●株式会社の子会社が炎上」という見出しで親会社の名前が使われる可能性が十分に考えられます。

実際のインシデント発生に対して、親会社は無関係であったとしても、見出しを見た人にとっては、親会社の管理が行き届いていないという印象が植え付けられる可能性があります。ガバナンスが弱い企業、批判を受けた内容を肯定的に考えている企業などのイメージが醸成され、結果としてはレピュテーションの低下、ブランド毀損に繋がりうると言えます。


ビジネスや市場への悪影響

炎上は株価下落にまで影響すると言われています。ネット炎上は評判低下やブランド毀損だけではなく、一時的な売り上げ低下や対応コストの発生など、ビジネスへの悪影響が出ます。その結果、市場からの業績期待が低下し、株価に影響すると考えられます。

これは学術研究においても同様のことが示唆されており、2017年に発表された慶応義塾大学の田中辰雄教授の研究では、炎上によって株価が0.7%低下する研究結果を発表しています。その他にも、東京大学大学院の武田史子准教授の研究でもネット炎上への対応の仕方で株価の下落に影響が与えることを示しています。

前述したとおり、子会社が炎上しメディアに取り上げられた場合、親会社の名前も一緒に出てしまうことがあります。炎上の内容や規模によって影響の大小は左右されると考えられますが、子会社の炎上によって親会社やグループ全体の評判の毀損、ビジネスへの悪影響、ひいては株価が下がる可能性は十分に考えられます。


グループ経営において実施すべき炎上対策

グループ全体を対象としたリスク検知体制の構築

グループガバナンス強化の具体的な対策になりますが、親会社を中心に、グループ全体でSNSリスク研修や、SNS・Webのモニタリングを行うなど、リスクの予防と早期発見の体制構築を進めることも有効な対策です。特にSNSリスク研修は、子会社の役職員に対して、上場企業の一員であるという考え方を前提に教育を行うことが重要です。M&Aなどを行った場合には、PMIのアクションの一つとして、設計しておくことをおすすめします。


リスク対策を相談できる外部パートナーを見つけておく

SNS炎上などの原因には、従業員の不適切投稿や公式アカウントの誤爆投稿などがありますが、同じく起こりやすいのが、広告内容に対して批判が殺到ケースです。長く広告運用している場合や運用メンバーが変わっていない場合など客観的な意見が取り入れづらくなっている環境で、炎上リスクが判断できず燃えてしまう事例があります。

その対策として、リスク対策を相談できる外部パートナーを見つけておく方法があります。大切なのは事前にパートナー会社を用意しておくことです。炎上してから企業を探すと適切かつ迅速な対応ができないため、リスク対策を講じる時点で第三者の外部パートナーを作っておくと、適切な予防と対策が取れます。


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グループ全体を意識したリスクマネジメントの強化を

子会社の炎上事例をきっかけに、親会社のグループ会社に対するリスクマネジメントの重要性が高まっています。特に上場している企業であればグループの企業価値も見られており、子会社の不祥事に適切な対応が取れないと、親会社およびグループ全体の評価が下がってしまう可能性があります。

先ほど紹介した対策は、グループ会社ごとに任せてしまうと、求める水準などが異なってしまい、十分な対策ができないこともあります。その結果、対策や有事の対応にばらつきが出てしまい、余計なコストがかかってしまうかもしれません。

また子会社の規模によってはリスク対策に十分な人的・金銭的コストが掛けられない場合もあります。このような問題を考慮して、先のグループガバナンスの観点も踏まえ、親会社の経営企画部門などが主導し、リスク管理することをおすすめします。

株式会社エルテスでは、グループ会社を対象としたリスク研修やモニタリングサービスも提供しています。子会社も含めたリスク対策をお考えの企業様はお気軽にご相談ください。


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参考

ネット炎上が株式市場に与える影響についての研究(日本証券業研究会)

炎上の株価への影響:日本のケース Effect of Flaming on Stock Price: Case of Japan(慶応義塾大学経済研究所)

グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(経済産業省)

株式会社エルテス マーケティンググループ
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