コンプライアンスの違反事例から見る企業のリスクと対応策とは?
企業がこれまで積み重ねてきた価値や信頼を一瞬で失う可能性のあるコンプライアンス違反。このような事態にならないためにも、コンプライアンスについてきちんと理解し、対策する必要があります。
本記事では、コンプライアンスの違反事例から、企業のリスクや対応策について解説します。
目次[非表示]
- 1.コンプライアンス違反とは?
- 2.コンプライアンスの違反事例
- 2.1.違反事例① 情報漏洩
- 2.2.違反事例② 労務リスク
- 2.3.違反事例③ ハラスメント
- 3.コンプライアンス違反による会社へのリスクと影響
- 3.1.ブランド毀損、企業の信頼が失われる
- 3.2.法令違反による行政処分
- 3.3.損害賠償を請求される
- 4.コンプライアンスの違反事例から学ぶ防止策とは
- 5.デジタル空間におけるコンプライアンス違反
- 6.まとめ
- 7.関連情報
コンプライアンス違反とは?
企業における「コンプライアンス」とは、法律や倫理・道徳を守り経営活動を行うことを指します。そのため、「コンプライアンス違反」は、社会的倫理観・道徳観やルールに違反する、意図的に不正を働くなどの意味を持ちます。
コーポレートガバナンスやCSRとコンプライアンスの違い
コンプライアンスに似た用語の一つに「コーポレートガバナンス」がありますが、これは直訳で「企業統治」という意味を持ちます。
金融庁と東京証券取引所が上場企業向けに定めた規定である「コーポレートガバナンス・コード」では、「企業が、株主や顧客、従業員、地域社会などの立場を踏まえた上で、公正・透明に、またスピーディーかつ果断に意思決定を行うための仕組み」と定義されています。
つまり、コンプライアンスはコーポレートガバナンスの一つの要素として組み込まれているため、違反が起きた時には、コーポレートガバナンスの問題としてとらえられる場合があります。
また、コンプライアンス関連のニュースなどでは、「CSR」という言葉もよく聞きますが、CSRは「Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任」という意味を持ちます。企業に対し、環境や次世代へ配慮しながら地域社会などへ責任をもって行動し、説明責任を果たすことを求める考え方です。
CSRを含む企業活動の前提となるものがコンプライアンスであり、企業の社会的責任を果たすには、コンプライアンスへの取り組みが欠かせないとも言えます。
コンプライアンス違反が生じやすい理由・背景
企業においてコンプライアンス違反が生じやすい理由として、「コンプライアンスへの意識の低さ」が挙げられるでしょう。
「社内ルールが定まっていない」「社内システムが脆弱」といった根本的なことが原因で違反が起こる可能性があります。
また、日本では法律は都度改正され、新規の法案も立てられます。そのため、企業の担当者は常にコンプライアンスについての情報をアップデートする必要があります。
様々なハラスメントなど社内ルールに背くような事例もコンプライアンス違反となります。SNSが普及し、社会的倫理も変わってきていることから、企業の不祥事が公にされることが増えたため、企業の担当者は社内統制にも注意するべきです。
コンプライアンスの違反事例
コンプライアンス対策を行うにあたり、事例を知っておくことも重要です。
ここでは、コンプライアンスの違反事例を3つご紹介します。
違反事例① 情報漏洩
A社のコンプライアンス違反事例では、管理する複数のサーバへの不正アクセスが発生。それにより、A社の通信販売事業のポータルサイトに登録されていた一部の個人情報が外部へ流出したケースがありました。
その原因は同社が設置していたネットワーク機器の脆弱性でした。二次被害を防止するため、A社は公式HPでこの問題について公開。社内システムの復旧やお客様相談センターの設置などで、わずかですが業績に影響を与えました。
違反事例② 労務リスク
B社のコンプライアンス違反事例では、B社の社員が過重労働によってうつ病を発症したケースがありました。社員は当時、36協定で定められている月の残業時間を大きく上回る時間で働いていたほか、上司からパワーハラスメントも受けていました。
この事件によって、同社は再発防止のため、長時間労働やハラスメントの防止など、具体的な措置を行うことを約束しました。
違反事例③ ハラスメント
C社のコンプライアンス違反事例では、同社の上司が部下に対し、「給与に見合う働きをしていない」「意欲がないなら辞職すべき」といった侮辱するようなメールを送信。
メールの表現が許容できる範囲でなかったこと、部下の同僚にも同じようなメールを送り名誉を棄損したことから、不法行為であることが認められ、損害賠償の判決が出たケースがありました。
コンプライアンス違反による会社へのリスクと影響
一度でもコンプライアンス違反を起こしてしまった場合、企業は大きな影響を受け、様々なリスクを負うことになります。
ブランド毀損、企業の信頼が失われる
コンプライアンス違反が起きた際の一番の影響は、企業のブランドのイメージが落ちて、信頼が失われることです。SNSが発達している現代では、社会的影響が大きい内容だった場合、ネット炎上が伴うことも多々あります。
ネット炎上になると話題性を持ち、それまで関心がなかった消費者までも不祥事に対して関心を寄せやすいことから、企業の信頼度の低下がより加速する可能性もあります。
法令違反による行政処分
下請法や景品表示法など遵守しなければならない法律は多数ありますが、もし刑法に触れれるコンプライアンス違反が起きた場合、重い行政処分が下されることもあります。
当事者が逮捕されれば、社屋が家宅捜査される可能性もあるでしょう。1人の社員が起こした違反だったとしても、企業の管理不足とみなされ、管理責任を問われる場合があります。
損害賠償を請求される
人命に関わるコンプライアンス違反の場合、遺族から損害賠償を請求され、提訴されることもあります。違反による影響が大きいと、経営難に陥るほどの賠償金が課されるかもしれません。
コンプライアンスの違反事例から学ぶ防止策とは
コンプライアンスの違反事例から学ぶことは多くあります。違反を防ぐためには、どのような策を講じればいいのでしょうか。
研修などを通じた社員への定期的な周知
企業では、社員に対してコンプライアンス違反対策を行うことが必要不可欠です。社内研修・勉強会を定期的に実施することにより、コンプライアンスへの意識が向上します。
社外から講師を招いてもいいですし、グループワークを含む参加型にするとより効果が高まるでしょう。
通報窓口・相談窓口の設置
コンプライアンス違反が起きた時に、社員が内部告発をするための通報窓口・相談窓口を設置しておくことも大切です。
社員が安心して相談・通報できるよう、匿名にしたり、責任の所在をはっきりさせるなど、第三者の目線を入れた透明性のある体制を整えましょう。
マニュアルやルールを定め、浸透させる
まずは、コンプライアンス違反につながりそうなリスクを洗い出し、対策するべき課題を把握します。そして、対策を社内マニュアルに記載し、すべての社員に浸透させましょう。全社メールやポスターなどで周知を徹底することにより、未然に違反を防ぐことができます。
社員アンケートや定期的な人事面談を通じて社員のメンタルケア
社員アンケートの実施も、コンプライアンス違反を防ぐために有効な手段です。
特に、次のような項目を調査するといいでしょう。
- 上司に知らせず時間外労働をしていないか
- 社外秘データを持ち出していないか
- 業務への不満や精神的疲れはないか
- 自社のコンプライアンスに関するルールで不明点はないか など
また、定期的な人事面談により、社員一人ひとりの精神面のケアを行っていくことも大切です。
デジタル空間におけるコンプライアンス違反
昨今は、SNSなどデジタル空間におけるコンプライアンス違反も見られています。また、違反となるような言動がSNSにアップされ、拡散されることもあります。
すでに、コンプライアンスに関する研修を行っている企業も多いでしょう。しかし、重要なのは、最新のコンプライアンス違反事例などを取り入れた研修を実施することです。
企業や社員を守るためにも、時代に即したルールにアップデートできているかを都度確認することが必要になります。
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まとめ
コンプライアンス違反のリスクは、想像以上に身近に存在しています。
企業のブランド毀損や経営破綻につながりかねないため、「知らなかった」では済まされません。気づかないうちにコンプライアンス違反を起こさないよう、担当者は細心の注意を払う必要があります。
社員一人ひとりのコンプライアンスに対する意識を高めるための取り組みを行い、コンプライアンス違反のリスクを減らしていきましょう。
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