ネット炎上レポート 2024年4月版
2024年4月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとしてご報告いたします。
ネット炎上レポートとは
株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。
また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
2024年4月のネット炎上トレンド
2024年4月に発生した炎上で最も多かった炎上対象は、「企業・団体」が82%(前月比3ポイント増)と全体の8割以上を占める結果となりました。次いで、前月大幅なポイントの増加を見せた「マスメディア」(9ポイント減)と「個人・著名人」(前月同数)がそれぞれ5%となりました。
また、どのような業態が炎上したのかを示す「企業・団体」の炎上区分の内訳は「サービス」が32%(4ポイント減)、「メーカー」が26%(7ポイント増)と2つの業態が全体の半数を占める結果となりました。「自治体・団体」が18%(11ポイント増)、「IT」(2ポイント減)と「教育機関」(1ポイント増)がそれぞれ3%となりました。(図1)
収集データを元にエルテスが作成
「企業・団体」を対象とする炎上内容における分析では、「顧客クレーム・批判」が68%(24ポイント増)と大幅なポイントの増加を見せています。背景として、多くの業態で製品の不具合や不適切対応の炎上が発生したことが影響していると考えられます。次いで「不適切発言・行為、失言」が19%(15ポイント減)、「不祥事/事件ニュース」は10%(3ポイント減)、「情報漏えい/内部告発」が3%(6ポイント減)となりました。(図2)
収集データを元にエルテスが作成
従業員アカウントでの個人の見解に批判殺到
とある企業の人事担当のSNSアカウントの発言が批判を受けました。採用に関して「一度採用してしまうと簡単には解雇ができない」といった趣旨の投稿を行い、人事担当の発言として不適切であるといった指摘が相次いで見られました。これに対し、「解雇したい従業員がいるわけではない」といった弁明の投稿をしていましたが、その後一連の投稿を削除しています。
SNSは企業の情報発信手段としても多様化を見せており、公式アカウントだけでなく、従業員が身分を明かして運用しているケースも多くあります。
個人アカウントとはいえ、企業名を明かしている以上は企業を背負って発信している意識を持ってもらうことが重要となります。
また、会社としては、個人アカウントで所属している企業名を名乗っている従業員を把握して、どのように運用しているか把握し、不適切な投稿をさせないようにすることも重要になってきます。
新入社員のSNS投稿が炎上
多くの企業で入社式を迎えた4月1日に、とあるメーカーの新入社員と思われるアカウントから入社式と思われる写真とともに配属部署・同期入社の従業員に対する愚痴が投稿され、話題となりました。批判殺到後、アカウントは削除され現状では投稿を確認することはできなくなっています。
SNS上では所属する企業の管理体制に対する指摘が散見され、新入社員であっても不適切な言動に対するユーザーの目は厳しいことが分かりました。不適切な言動をしないようにSNSリスクに関するモラルやルールの周知、啓蒙活動を行うことが求められています。
まとめ
4月には従業員のSNSでの言動が起因となって炎上に繋がった事例が複数見られました。
従業員の言動は企業名を明かしている場合は企業の看板を背負って発信していることを心にとどめておく必要があります。また、企業名を明かしていなくても、投稿内容から所属企業が特定されることもあるため、業務上知り得た情報は絶対に投稿しないなど、常日頃から従業員にルールを周知することが大切です。
個人の見解であっても「この企業はこのような見解なのだ」と企業の意見として認識される場合もあり、内容に問題があると企業に対しても批判の声が寄せられ、ブランドイメージの棄損に繋がる可能性があります。
このような事態を防ぐためには、従業員のSNSに対するリテラシーを向上させることが重要です。リスクを周知することやSNSの利用ルールを定めるなど、企業側でも対策を講じることを推奨します。
本レポートでは、実際の炎上事例をもとになぜ炎上が起きたのか、自身が当事者だった場合にどのような対応を取ったのかを想像しながら、ご自身の所属する企業のリスク対策にお役立ていただければと思います。