広報なら知っておきたい企業・ブランドを守るためのSDGsの取り組み
社会から大きな注目を浴びるSDGsは企業の経営方針にも影響を与えつつあります。また、SDGsに賛同しながら、それに反する活動を行う企業には批判が殺到し、SNS上で炎上につながってしまう事例も見られます。今回は、広報担当者が知っておくべきSDGsについて解説します。
目次[非表示]
- 1.SDGsへの企業の対応が注目を集める
- 1.1.プラスチックストロー廃止
- 1.2.SDGsウォッシュによる炎上
- 2.SDGsとは
- 2.1.いつ、どのように制定されたのか
- 2.2.持続可能な開発目標(SDGs)17ゴール
- 3.日本政府の2023年のアクションプランと企業に求められること
- 4.株式市場を通じて企業が求められること
- 5.広報担当者が知っておくべきこと
- 6.【関連情報】
- 7.【参考情報】
SDGsへの企業の対応が注目を集める
SDGsへの企業の対応が近年注目を集めています。SDGsは経営方針に大きな影響を与えていますが、その対応方法から企業に批判が殺到して炎上することもあり、企業の評判にも影響を与え始めています。そこで、SDGsの動きに合わせて、企業活動の方針が変更された事例をご紹介します。
プラスチックストロー廃止
まず、プラスチックストロー廃止の事例を紹介します。
プラスチック廃止の背景には、プラスチックごみによる深刻な海洋汚染があります。ニュース番組等で目にした方も多いかも知れませんが、2015年に絶滅が危惧されているウミガメの鼻に刺さったプラスチック製ストローを取り除く動画が拡散され、プラスチックストローの問題意識が高まりました。
プラスチックは、微生物などの力を借りながら分解されていくような性質は有していないため、小さく砕けても無くなることがありません。そのため、海に漂うプラスチックを海洋生物が食べてしまうことで生態系へ影響を与えてしまいます。
他にもプラスチックによる海洋生物の被害は、プラスチックストローを飲み込んで突き刺さってしまったケースや、大きなプラスチックゴミを食べてしまったケースが確認されています。
このよう問題意識から、2018年には、欧州連合(EU)の欧州委員会で、ストローや皿など、一部の使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する方針が発表されたことを皮切りに、世界でプラスチックゴミを出さない動きが活発化していきました。
日本でも2020年7月からは、レジ袋の有料化が義務付けられ、各企業でプラスチックの使用を抑制するために取り組みが開始されています。
SDGsウォッシュによる炎上
次に、SDGsに賛同する日本の大手金融機関がSDGsに反する企業に融資を続けていることで批判された事例を紹介します。
SDGsウォッシュとは一見SDGsへの取り組みを行っているように見えて、実態が伴っていない、うわべだけの取り組みを行っていることを意味します。
一つの例として金融機関の例が挙げられます。金融の業界では、環境や社会的に不道徳なビジネスへの投資を引き揚げるダイベストメントが世界で進んでおり、ダイベストメントの進む領域の一つに、「石炭火力発電」など、脱炭素と関連する領域があります。そのような業界の背景がある一方、一部の日本の金融機関では、SDGsへの積極的な参画を表明しながら、石炭火力事業への融資を行っていることが指摘され、批判が集まりました。
SDGsとは
このようなSDGsに賛同しながら逆行した企業活動を行うことで、世間から批判を浴びてしまう可能性があります。ここからは、SDGsについて細かく見ていきたいと思います。
いつ、どのように制定されたのか
「SDGs(エスディージーズ)」とは、「Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標」の略称です。2001年に策定された「ミレニアム開発目標(MDGs)」の後継として、2015年9月に国連で開かれたサミットで採択された国際社会共通の目標です。
「MDGs」は、開発途上国の経済・社会面での包括的な開発目標で、2015年の目標年には一定レベルの成果を収めましたが、一部の地域の開発が取り残されるなどの課題もありました。「MDGs」で未達成だった目標や地球規模で向き合うべき新たな課題に対し、達成すべき目標として「SDGs」は掲げられました。
サミットでは、2015年から2030年までの長期的な開発の指針として、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。この文書の中核を成す「持続可能な開発目標」を「SDGs」と呼んでいます。
持続可能な開発目標(SDGs)17ゴール
SDGsは、誰ひとり取り残さないことを目指し、先進国と途上国が一丸となって達成すべき17の目標(ゴール)で構成されています。具体的にどのようなものなのか、以下に17の目標を掲載しました。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
SDGsは「17の目標」と「169のターゲット(具体目標)」で構成されています。17の各目標に対し、それらを達成するために必要な5から10程度のターゲット、計169もの項目で設定されています。
日本政府の2023年のアクションプランと企業に求められること
SDGs達成のために、日本政府が定めた2023年のアクションプランと、企業が求められることを紹介します。
日本政府の2023年のアクションプラン
日本政府はSDGsの取り組みの指針となる「SDGs実施指針」を定めており、「SDGs実施指針」にはSDGsの達成に向けた8つの優先課題が掲げられています。
- あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
- 健康・長寿の達成
- 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
- 持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
- 省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
- 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
- 平和と安全・安心社会の実現
- SDGs 実施推進の体制と手段
アクションプランではさらに社会の変化に合わせた細かい取り組みが設定されています。「SDGsアクションプラン2023」では、SDGsの「中間年」として、2030年のSDGs達成に向けた取り組みの加速が求められています。具体的な取組については、以下のサイトをご覧ください。
株式市場を通じて企業が求められること
SDGsという考え方の影響もあり、近年では「ESG」という概念も広がりつつあります。
投資家は企業への投資をする際に、その会社の財務情報や成長の可能性だけを見るのではなく、環境や社会への責任を果たしているかどうかを重視すべきという提言が国連から発せられました。そのため、大規模な投資を行う企業・金融機関などの機関投資家は、投資の意思決定の判断材料として、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)のESG課題を反映していくことが求められています。
広報担当者が知っておくべきこと
世論からの注目を浴びているSDGsは企業活動に大きな影響を与えています。特に大切なことは、経営者がしっかりと企業として社会に果たすべき役割を理解し、SDGsの考え方に沿った経営にアジャストさせていかなければなりません。
一方で、企業の評判を守り、パブリックリレーションの役割を担う広報担当者にとっては、SDGsに反する活動が、企業の評判を落とし、企業価値の失墜やブランド毀損につながることをしっかりと認識する必要があります。大手企業では事業の多角化がなされており、今一度子会社の事業も含めて、自社に関わる全ての事業がSDGsに逆行する取り組みを行っていないかチェックすることが大切です。
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