
社内コンプライアンス意識を向上させるための効果的な対策を解説
パワハラやセクハラはもちろん、最近ではSNSでの不適切な発言など、企業のコンプライアンス違反は後を絶ちません。不祥事などを起こさせないよう、日頃から社内のコンプライアンス意識を高める対策が大切です。
今回は、コンプライアンス意識を向上させるための効率的な対策を解説します。
目次[非表示]
- 1.コンプライアンスとは
- 1.1.コーポレートガバナンスとの違い
- 1.2.内部統制との違い
- 1.3.コンプライアンスが重視される背景
- 2.コンプライアンス違反が企業に与える深刻なリスク
- 2.1.ブランド毀損や企業の信頼喪失
- 2.2.法令違反による行政処分
- 2.3.損害賠償請求の発生
- 3.コンプライアンス違反がなぜ起こってしまうのか
- 4.コンプライアンス違反の具体例
- 4.1.①SNSによるステルスマーケティング
- 4.2.②新入社員へのパワハラ
- 5.コンプライアンス意識を向上させる対策のポイント
- 5.1.基準となるポリシー・ガイドラインを定める
- 5.2.従業員研修を実施する
- 5.3.e-ラーニングの活用
- 6.コンプライアンス意識改革の進め方
- 7.WebリスクとSNS利用におけるコンプライアンス対策
- 8.まとめ
コンプライアンスとは

コンプライアンス(compliance)は、 直訳して「法令遵守」と言われることが多くありますが、企業が法令・規則・社会的倫理などに従い業務を行うという意味も含まれています。
昨今、職場におけるコンプライアンスは多様性を増しており、コンプライアンスの意識向上が求められています。コンプライアンスを守ることは、企業の評価やブランディングを守ること、法的トラブルに発展するリスクを抑えることに繋がります。ほかにも、ステークホルダーとの信頼関係を築いたり、健全な経営を続けていくためにも非常に重要です。
コーポレートガバナンスとの違い
コンプライアンスと混同されやすい概念の一つに「コーポレートガバナンス」があります。企業が自社の経営活動を適切に行っているかを監視し、統制する仕組みのことで、日本語では「企業統治」と訳されます。
両者の違いは、目的と対象にあります。コンプライアンスが企業として守るべきルールそのものを指すのに対し、コーポレートガバナンスは、そのルールが確実に守られるように機能させるための体制や仕組みを指します。
内部統制との違い
また、コンプライアンスと関連が深いものの、役割が異なる概念として「内部統制」が挙げられます。内部統制は、企業の事業目的を達成するために、従業員が不正を行わないよう社内で監視・管理する仕組みを指します。
こちらも定義が異なり、コンプライアンスが遵守すべき法規範や倫理基準といった行動規範であるのに対して、内部統制は従業員が不正を行わないよう社内にて監視・管理するための具体的な仕組みやプロセスであると区別できます。
コンプライアンスが重視される背景
コンプライアンスが重視される背景のひとつとして、パソコンやスマートフォンの普及率の上昇があります。
2010年以降、スマホが普及した影響からSNSやネットニュースなどを用いた、インターネット上でのやり取りや情報収集が一般的になりました。それに伴い、企業や個人の不祥事が不特定多数の人の目に触れる機会が増加。そのため、コンプライアンス違反の情報が拡散されやすく、企業経営に大きな影響を及ぼしてしまいます。
さらに、インターネットの普及によるサイバーテロ被害も年々増えています。企業は、情報漏洩をIT面でも防止しなければなりません。
▶関連記事:コンプライアンスはなぜ必要?重要性やその目的を解説
コンプライアンス違反が企業に与える深刻なリスク

企業活動におけるコンプライアンス違反は、単なる不祥事として片付けられる問題ではありません。その影響は、法的な罰則や金銭的な損失にとどまらず、企業の存続を脅かすほど深刻です。また一度発生した違反行為は、企業価値を著しく低下させ、回復には多大な時間や労力、そしてコストが必要です。ここではコンプライアンス違反による悪影響の例を3つ紹介します。
ブランド毀損や企業の信頼喪失
コンプライアンス違反の最大のデメリットは、企業のブランドイメージが傷つき、社会的な信用を失う点にあります。現代社会ではSNSが広く普及しており、X(旧Twitter)などを通じて不祥事の情報は瞬時に広まります。たった1件の問題行為に関する投稿が、数時間で数十万回拡散されるケースも少なくありません。
これにより、これまで企業に関心がなかった層にも情報が知れ渡り、ひとたびネット上で炎上に発展すれば、企業の信頼度は回復困難なほどに低下する恐れがあります。
法令違反による行政処分
企業が遵守すべき法律は、景品表示法や下請法、労働基準法や個人情報保護法など多岐にわたります。
法令違反には厳しい罰則が伴うため、注意が必要です。例えば、不当景品類及び不当表示防止法第8条において不当表示が認定された場合には、商品やサービスの「売上額」に3%を乗じた課徴金が科される可能性があります。また個人情報の保護に関する法律第178条では、義務違反に対しては個人情報保護委員会による改善命令が出され、それに違反した個人には、「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」といった刑事罰が課せられることもあります。
これらの違反がたとえ一部の従業員による行為であっても、企業全体の管理体制に問題があると見なされ、経営陣の監督責任が問われることがあります。したがって、コンプライアンス体制の整備は企業にとって不可欠です。
損害賠償請求の発生
人命に関わるような内容のコンプライアンス違反であれば、企業や加害者個人が高額な損害賠償を負うリスクがあります。
例えばパワハラが発覚した場合の慰謝料は30万円から100万円程度になることが多いですが、被害者がうつ病などの精神疾患を発症し、休職や退職に追い込まれたような重大なケースでは、それ以上の金額の支払いが命じられることもあります。
さらに、未払いの残業代などがあれば、損害賠償の金額が上がり、内容次第では経営の継続が困難となるような、重大な影響を及ぼす恐れもあります。
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コンプライアンス違反がなぜ起こってしまうのか
コンプライアンス違反が起こってしまう要因は、3つに分類できます。
①従業員一人ひとりのコンプライアンスの意識が低い
コンプライアンスに対する従業員一人ひとりの意識が低いと、企業経営に悪影響を与えることがあります。コンプライアンス違反は、会社の法令違反のみならず、個人の不祥事なども対象です。したがって、個人レベルで意識を高めていく必要があります。
②コンプライアンス違反が発生しやすい環境になっている
各従業員がコンプライアンスへの意識が高かったとしても、労働環境が整っていないとリスクは高いままです。
「社内規範や行動指針などのルールが曖昧」「従業員の管理体制がずさん」「コンプライアンス教育ができていない」など、どれか1つでも当てはまるようなら、いつコンプライアンス違反が発生してもおかしくありません。
③コンプライアンス違反を報告する仕組みがない
職場でハラスメントが起こっていても、相談や報告ができるところがないとコンプライアンス違反まで繋がる可能性があります。特に地位が低い従業員ほど相談できず抱え込んでしまい、気づいた時には手遅れということもあり得ます。社内に相談窓口を設置し、悩みを相談しやすい環境を整えることで、未然にコンプライアンス違反を防ぎましょう。
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コンプライアンス違反の具体例
コンプライアンス違反と一口に言っても、様々な事例があります。過去の具体例を参考に、社内コンプライアンス意識の向上に役立ててみてください。
①SNSによるステルスマーケティング
美容系のランキングサイトを運営していたA社は、同社スタッフにインスタグラムで宣伝させていた事実を隠しながらステルスマーケティングをしていました。スタッフが女性ユーザーになりすまし、痩せる様子を公開しつつ商品紹介もしていたという事例です。
A社の職場で撮った写真や、スタッフと思われる女性が他のSNSで「減量の成果を強調するためにわざと太った」と公表し、問題が発覚。A社はランキングサイトやインスタグラムを閉鎖しました。
②新入社員へのパワハラ
防災機器を販売する会社の新入社員だったBさんが、入社して間もなく上司の日常的なパワハラ被害を受けた事例があります。業務上の失敗が多いことがきっかけで、Bさんは人格を否定されるような発言をぶつけられていました。
パワハラもコンプライアンス違反に該当すると考えられることが多く、休職や自殺の原因ともなるため防ぐ対策が求められます。
▶関連記事:コンプライアンス違反の事例10選 原因や企業側の対策も紹介
コンプライアンス意識を向上させる対策のポイント

1回でもコンプライアンス違反を起こしてしまうと、信頼を回復するために膨大な時間を要します。それゆえ、社内での教育は必要不可欠です。コンプライアンス意識を向上させる対策について紹介します。
基準となるポリシー・ガイドラインを定める
まずは、基準となるポリシーやガイドラインを定め、社内全体のコンプライアンスの基準を統一しましょう。人によって考え方や境界線が異なるため、会社として求めるコンプライアンスを周知することが大切です。また、ただ守ることだけを強調するのではなく、違反した場合の処罰も一緒に共有することで、抑止に繋がります。
従業員研修を実施する
具体例を取り上げながら実施する従業員研修が効果的です。企業や職場の意識を統一しやすい上、実際の業務と関連付けて覚えやすいためです。「今後社内外で起こるかもしれない」「自分が起こしてしまうかもしれない」という危機感を従業員一人ひとりに持たせて、コンプライアンスに対する意識を底上げできます。
研修は責任範囲ごとに実施すると効果的で、役員・管理職・一般社員、全ての人を網羅する研修計画を立てましょう。
e-ラーニングの活用
全従業員を一か所に集めるのが難しい場合は、インターネットを活用したオンライン研修も1つの方法です。特にe-ラーニングの利点は、いつでもどこでも好きな時間に受講できること、繰り返し学べることです。
オンラインで研修を行う場合は、各従業員のコンプライアンス意識が高くなったか判断できないため、e-ラーニングを通じた理解度チェックやテストも併せて準備しておくと良いでしょう。
▶関連記事:コンプライアンス教育の目的と重要性とは?社員へ浸透させるポイントを解説
コンプライアンス意識改革の進め方

従業員研修やe-ラーニングを用いる時に併せて知っておきたい、コンプライアンス意識をより一層向上させるための要点を見ていきましょう。
コンプライアンスに対する従業員の意識を正しく把握する
最初に、従業員のコンプライアンス意識を調査しましょう。長く務めている人の中には「法律さえ守っていれば大丈夫」という意識を持っている人もいるかもしれません。
昨今、「コンプライアンス」という言葉は複雑化しているため、社内規則を遵守することも重要です。それぞれの従業員の話に耳を傾け、教育を始める前にコンプライアンスに対する意識を正しく把握しましょう。
明確にゴールを定めて共有する
コンプライアンスに対する、会社全体のゴールを決めて共有します。会社には勤続年数が長い人・短い人、経験が豊富な人・浅い人など様々な人が働いています。会社全体にコンプライアンスの意識を根付かせるためにも、5W1Hでゴールをはっきりさせ、意識を高めていきましょう。
継続的に教育を実施する
コンプライアンス教育は1回限りで終わらせるのではなく、コンスタントに継続して行いましょう。法令の制定や改定が実施されることもあり、常に法律やルールは変化します。また、1度理解しただけでは定着しにくいので、何回も繰り返して教育するようにしましょう。
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WebリスクとSNS利用におけるコンプライアンス対策
現代の企業活動において、インターネットやSNSはビジネスに不可欠なツールですが、同時に新たなコンプライアンスリスクも生み出しています。従業員の不適切な言動によるブランド毀損や、ネット上の誹謗中傷によるレピュテーションリスクなど、一度発生すると収束が極めて困難なリスクが存在します。
そのため、従来のコンプライアンス対策だけでは対応しきれない状況であり、インターネット特有のリスクに特化した専門的なWebリスク対策を講じることが不可欠です。
エルテスのWebリスクモニタリングサービスとは

Webリスクモニタリングサービスでは、SNS上の投稿を監視し、自社に関するネガティブな投稿や内部告発、従業員の不適切な言動などを広く拡散される前に検知します。早期に発見することで、企業は迅速な対応が可能となり、炎上などの重大な事態への発展を防ぐことができます。
まとめ
近年、企業には法律や一般常識、倫理を遵守するコンプライアンス意識が強く求められています。SNSで簡単に不正や不祥事が拡散されてしまう現代、会社全体でコンプライアンス違反のリスクについて学び、従業員一人ひとりのコンプライアンスに対する意識を向上させる必要があります。
健全な企業経営を続けていくためにも研修や理解度チェックを行い、コンプライアンス違反を未然に防ぎましょう。コンプライアンス対策について詳しく知りたい方は、是非一度エルテスにご相談ください。
コンプライアンス対策の相談は、エルテスへ







