企業が画像素材・画像生成AIを利用するときに注意したいポイントを紹介
企業がWebサイトやSNSを当たり前に持つようになった今、画像素材サイトで購入・取得した画像を各媒体で使用している企業も少なくありません。しかし、画像素材サイトの規約を確認せず利用し、権利侵害となる事例も起きており、画像利用への適切な理解が関係者には求められています。今回は、画像素材サイトを利用するうえで気を付けたいポイントを紹介します。
目次[非表示]
- 1.画像を無断転載したトラブル
- 1.1.事例からわかること
- 2.画像素材サイトとは
- 3.画像素材サイト使用時の注意点
- 3.1.①利用規約の確認
- 3.2.②よくある質問・ヘルプページの確認
- 4.画像素材サイトの利用方法
- 5.画像生成AIの登場と利用上の注意点
- 6.まとめ
- 7.関連情報
画像を無断転載したトラブル
2015年に有料素材画像を無断使用したとして、素材サイトの運営側が弁護士法人に対して訴訟を起こし、損害賠償を命じる判決が下される事例がありました。
素材サイトの運営会社によると、これまで有料素材の無断使用が発覚した場合、「ほかのサイトから入手した」とされて賠償に応じないケースが多かったといいます。しかし、裁判では無料サイトからダウンロードしたものであっても「識別情報や権利関係の不明な著作物の利用を控えるべき義務がある」と判断されました。
この事例は、権利関係の確認を怠って安易に著作物を無断使用した場合に「知らなかった」「違法だとは思わなかった」という言い訳が通用しないことを裁判所が認めたものでした。
事例からわかること
この事例からもわかるように、画像を利用する側には、その素材の権利関係について調査、確認することが求められています。画像素材サイトから見つけてきた画像を企業のSNSやWebサイトに使用したことで、意図せず著作権侵害となるリスクもあります。
もちろん、意図的に権利侵害などトラブルを起こそうとする人はいないでしょう。しかし、画像素材サイトの画像が元々有料画像素材サイトのものであったり、画像素材サイトごとに規定されている利用範囲を逸脱したり、意図せず無断転載や規約違反を行うことは十分考えられます。何かしらの画像を利用する立場・仕事に関わる従業員は画像利用と著作権のリテラシーが求められています。
画像素材サイトとは
そもそも画像素材サイトとはどのようなものなのでしょうか。画像素材はいわゆるWebサイトや資料作成などで使用する写真やイラストのことで、それらを管理し、無料もしくは有料で配布しているサイトのことを言います。たとえば、「PIXTA」や「Shutterstock」、「Adobe Stock」、「ぱくたそ」、「いらすとや」といったサイトがあります。これらの画像素材サイトは、サイトに掲載される広告による収入や、画像素材の販売収入によって、運営されている場合が一般的です。
一方で、最近は「フリー素材画像」「フリー画像」と呼ばれるものもあり、SNSやブログ、動画など様々な場面で、使用機会が増えています。しかし、ここでの「フリー」の意味が、「無料で利用できる」と「著作権の制限がない」という意味が混在しており、必ずしも無料ではないと理解することが重要です。
「著作権フリー」と「ロイヤリティフリー」
画像を利用する際に正しく理解しておきたい言葉に、「ロイヤイティフリー」と「著作権フリー」があります。
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「ロイヤリティフリー」について、画像素材サイトの「Shutterstock」では「画像やイラスト、動画、音楽などの各素材において、その使用目的に関わらず、同じ使用許諾ライセンスで幅広く様々な使用目的や使用期間に対応できる、と言う意味」と説明しており、「著作権フリー」とは異なります。実態が「ロイヤリティフリー」であるのに「フリー素材」と表記されている場合もあるため、事前に使用にあたっての条件を確認することが重要となります。
冒頭に取り上げた事例は、有料でロイヤリティフリーの画像などを取り扱っている画像素材サイトの画像を、無断で使用したため問題となりました。無料で配布している画像素材サイトでも利用範囲に制限がついているものがあるため、画像を使用する際は利用方法、利用規約などをよく読んでから使用するようにしましょう。
画像素材サイト使用時の注意点
画像素材サイトには、画像使用時のルールや利用上の注意点などが必ずあります。使用前にチェックすべき2点を紹介します。
①利用規約の確認
一つ目は利用規約をよく確認しましょう。
利用規約はサービスを提供する事業者がユーザー向けにサービスの利用上のルールをまとめたものです。
フリー素材は文字通りの解釈では「無料で自由に利用できる素材」ですが、明確な定義はありません。フリー素材と記載してあっても著作権フリーとは限らず、たとえ使用料は無料でも、使い方を著作者が定めている場合などがあります。そのため、フリーと書かれていても文字通りに解釈するのではなく、利用規約の範囲内で自由に利用できる素材と考え、使用前に利用規約をよく確認することが大切です。
また、利用規約は画像素材サイトごとに内容が異なり、素材を使うには使用するサイトの規約に同意し遵守する必要があります。他の画像素材サイトでは問題がなかった使い方が、サイトによっては禁止となっているケースも多くあるため、以下のような項目は必ず確認する必要があります。
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②よくある質問・ヘルプページの確認
2つ目はよくある質問やヘルプページをしっかり確認することです。
多くの画像素材サイトでは、よくある質問やヘルプページが用意されており、利用規約に記載されているが分かりにくい内容などは、よくある質問などに別でまとめられていることがあります。もし、よくある質問に当てはまらない場合はお問い合わせをして、事前に確認したうえで使用しましょう。
画像素材サイトの利用方法
画像素材サイトの利用方法はサイトによって異なります。自由に使用することができるものもあれば、利用するにあたって細かい制限があるサイトもあります。
以下は、特に注意しなければならないよくある制限の一例になります。
- サイト名記載必須
- クレジット表記必須
- 画像加工禁止
- トリミング禁止
- 商用利用不可
- 個人利用のみ可、商用利用は有料
このように無料で利用できたとしても商用利用できない場合や、画像の加工ができない場合もあります。商用利用可能であってもサイト名や著作者の名前を入れたり、事前にサイト運営者に連絡を取って許可をもらわなければいけなかったり、追加の手順が必要な場合なども多く存在します。また、過去の判例などで賠償請求や外部指摘による企業の評判低下などのリスクを理解し、使用方法が不明確な場合は利用しないことをおすすめします。
画像生成AIの登場と利用上の注意点
ここまで、画像素材サイトを利用する際の注意点について解説してきましたが、昨今では、「画像生成AI」と呼ばれる、AI技術を用いて画像や映像を生成するツールやサービスが誕生しています。これに伴い、AIによる画像生成を自社のマーケティング活動等に活用しようとしている企業が増えています。
一方で、画像生成を含む生成AIの利用は様々な課題やリスクが世界的にも議論されているのが現状です。画像生成AIの場合も、教師データや生成されたAIに関する知的財産権や、生成された画像が企業の発信内容として適切だったか等、SNS上での批判や炎上のきっかけにもなり得ます。
社会的にルールの整備が追い付いていなかったり、企業側もトラブルの想定が甘かったりと、画像生成AIの利用は、まだ一定のリスクをはらんでいることも事実です。画像生成AIを用いた活動をする際には、このような議論を踏まえた慎重な判断が大切です。
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まとめ
企業のWebサイトやSNSなど、様々な場面で利用が進む画像素材ですが、「フリー素材」=「無料で自由に使っていい」ということではありません。フリー素材にも、元を辿れば著作権などの権利があり、多くは利用許諾があるうえで配布されています。そのため、フリー素材を利用する場合でも利用規約をしっかりと確認することが大切です。
また、自社で利用する場合だけでなく、SNS運用やWebサイト制作時に代理店に依頼するケースであっても、どの画像素材サイトの画像を利用しているのか、それらの利用方法は規約に準じているかなどの確認を行うことが必要です。
著作権などの問題は、見落としやすい一方で、知らなかったでは済ませられないトラブルに発展することが多くあります。特に炎上が身近になった昨今では、トラブル発覚の経緯によってネット上で担当者が批判を浴びるだけではなく、会社のリテラシーや信用を疑われてしまうことも大いにあり得ます。リスクを理解し日々の業務で気を付けておくことが大切です。
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