ネット炎上レポート 2024年下期版
エルテスでは、毎月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとして報告しております。今回は、それら2024年下期(7月~12月)の炎上事例を時系列にまとめ、どのようなネット炎上の傾向があったのか。また、過去と比較して、どのような変化があったのかをまとめました。
目次[非表示]
- 1.炎上レポートの主旨
- 2.2024年下期全体の炎上傾向
- 3.炎上対象からみる下期炎上のトレンド
- 3.1.1)サービス企業の炎上
- 3.2.2)個人・著名人の炎上
- 3.3.3)クレームや批判による炎上
- 4.まとめ
▼押さえておきたい2025年の炎上予測!2024年の炎上トレンドと一緒にチェック
炎上レポートの主旨
エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上事例の傾向をお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
本レポートでは、炎上事例の変化を “炎上対象”と“炎上要因”の2つの観点から見ていきたいと思います。
2024年下期全体の炎上傾向
2024年上期(2024年1月~6月)と比較して2024年下期(2024年7月~12月)のネット炎上件数は14.4%減少しました。図1で記載している通り、業種ごとに分類すると「自治体・団体」と「メーカー」の炎上件数減少が特徴的に見られております。
また、毎月の炎上件数では、上期を通じて2024年10月が最多になりました。10月には広告表現がルッキズムを助長するとして批判を受けた事例やLGBTQへの配慮方針を表明した企業へ批判が殺到した事例などが発生しています。
炎上対象からみる下期炎上のトレンド
図2は、2024年下期の炎上件数を月次で炎上対象別に整理したものです。ここからは、炎上対象の軸で2024年下期の炎上の特徴を見ていきたいと思います。
1)サービス企業の炎上
全体の炎上件数は2024年上期と比較して減少している一方で、サービス企業の炎上は6か月間の平均でも50%と全体の半数を占めています。
サービス企業では、クリエイティブに関するネガティブな意見がSNSに表出する事例が散見されました。特に、表現などへの指摘ではなく、生成AIを使って出力したと思われるPRのクリエイティブに対して、多くの指摘が寄せられるケースが特徴的でした。
<サービス企業で発生した主な炎上事例>
〇飲食チェーンのPR動画に生成AIが使われているとして物議を醸す
〇アニメコンテンツとのコラボ企画のクリエイティブに生成AIが使われているとして炎上
〇PRポスターに生成AIが使われているとして物議を醸す
指摘されている問題点としては、教師データの取得や権利など法的な整備不足に関する声やクリエイターを軽視しているといった声が見られました。また、出力したデータに不自然な点があるにもかかわらず、そのままクリエイティブに採用することに対する指摘も多くみられています。
生成AIの活用は企業の危機管理体制への指摘にもつながっており、活用を検討する場合には、自社の対応方針や消費者・ネット上の論調、企業やブランドへの社会的期待などを把握した上での企画検討が必要です。今後、企業もどのような方針で生成AIに向き合うのか対応が注目されています。
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2)個人・著名人の炎上
2024年下期は、個人・著名人の炎上が上期と比較して増加していることも特徴でした。2024年上期には7%に留まっていましたが、下期は13%まで増加していました。
<個人・著名人による主な炎上事例>
〇他のタレントに対して不適切な言動をしたタレントが炎上
〇展示会に不適切な装いで来場したインフルエンサーに批判が殺到
個人・著名人の炎上は一見すると企業には無関係であると思われがちですが、企業に影響を及ぼす場合もあることを認識する必要があります。
例えば自社のPRに起用したタレントが炎上した場合、企業に対しては「炎上リスクのあるタレントを起用していたこと」に対する指摘が寄せられるケースや、不祥事が発生した場合に起用を継続するかの判断が求められます。PRやコラボ企画でタレントやインフルエンサーを起用する際には、現状の炎上リスクだけでなく、過去の言動が掘り起こされて炎上することも想定したリスクチェックを推奨します。
また、起用タレントではなかったとしても、自社施設や店舗での行為が批判された場合に、「企業は認知していたのか」「注意したのか」といった対応を求められるケースも存在します。このようなケースに備え、現場でのオペレーションを徹底するとともに、SNSをモニタリングするなど、リスク行為が自社施設・店舗で行われた際に早期検知できる体制を構築すること、検知した後も適切に対応できるエスカレーションフローを準備することを推奨します。
※”企業・団体”は図1の「メーカー」「サービス」「IT」「インフラ」「自治体・団体」「教育組織」を指します。
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3)クレームや批判による炎上
2024年上期にも多くの割合を占めていた、クレーム・批判による炎上が引き続き多くみられました。
<主なクレーム・批判による炎上事例>
〇女子トイレでなく、多目的トイレが設置されているとして飲食チェーンが炎上
〇性的マイノリティに配慮した試着スペースを設置するとリリースした肌着メーカーが炎上
〇反ルッキズムをテーマにした広告が逆効果だとして炎上
クレーム・批判による炎上の中でもLGBTQへの配慮で実施される施策に関する事例が散見されました。国内外において「多様性」をキーワードに性的マイノリティに関する声明や施策を実施する企業が目立ちますが、一方でマジョリティへの配慮や施策の世論からの乖離といった点で炎上してしまうケースも見られています。
論調や社会的なトレンドが変動する可能性のあるトピックスであるため、企業としては現状どのような論調なのか、最新の情報をキャッチアップし、他社の事例や対応を把握した上で施策を検討することが求められます。
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まとめ
2024年下期の炎上トレンドを見ていくと、2つの特徴が見えてきました。
1つ目は企業のPR活動など情報発信の内容やクリエイティブに対する指摘が増加して炎上するケースです。企画の内容やクリエイティブに社会的なトレンドとなるトピックスを含む場合は、社会的な動きだけでなく、最新の論調なども踏まえた上で進行していくことが求められます。
2つ目は著名人の炎上が企業にまで影響を及ぼすケースです。起用タレントとしてインフルエンサーなどの選択肢が増えたことにより、新たに炎上のリスクも生まれています。
起用するタレントの選定時には自社や起用するブランド・製品とイメージの齟齬がないかはもちろん、過去の言動を含めて炎上リスクがないかをチェックする必要があるといえます。さらに起用している間の炎上リスクも常時モニタリングしておくことが大切です。火種が生まれた際に早期検知し、論調から問題点を洗い出すことで、最適な対応を迅速に検討することが可能となります。
すぐに実施できる対策として、最新の炎上事例に関する情報を定期的に入手する、またその体制を整えることが重要です。現在どのようなトピックスが炎上しやすいのか、炎上した際に企業はどのような対応を取っているのか、SNSではどのような反応が見られたのか、などを収集するようにしましょう。
類似した炎上事象でも、企業やブランドのイメージや社会的な期待によって論調が異なる可能性があります。平時から企業・ブランドが、世間からどのようなイメージや期待を持たれているのかを把握しておくことを推奨します。
企業対応の面でも、適切な対応ができたケースと対応不満によって新たな炎上に繋がってしまったケースで、その後の企業イメージの明暗を分けた事例も見られています。万が一、自社で同様の事例が発生した場合に備えて、どのようなエスカレーションで、どのような対応をするのかを想定しながら対策不足な点を洗い出すことも、リスク回避のための重要な観点と言えます。
エルテスでは、引き続き月次で炎上傾向をまとめた炎上レポートを配信していきます。炎上のトレンドを把握頂き、企業のリスクマネジメントに役立てて頂ければと考えております。
また、毎月炎上レポートを配信するとともに、1つ炎上事例を取り上げて、炎上理解を深めるセミナーを開催しておりますので、ぜひご参加ください。
>>> 現在開催中のセミナー一覧はこちら
引き続き、よろしくお願いいたします。
ネット炎上の対策・相談は、エルテスへ
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