ネット炎上レポート 2023年下期版
エルテスでは、毎月の炎上事例を調査・分析し、ネット炎上の傾向をまとめたレポートとして報告しております。今回は、それら2023年下期(7月~12月)の炎上事例を時系列にまとめ、どのようなネット炎上の傾向があったのか。また、過去と比較して、どのような変化があったのかをまとめました。
目次[非表示]
- 1.炎上レポートの主旨
- 2.2023年下期全体の炎上傾向
- 3.炎上対象からみる下期炎上のトレンド
- 3.1.1)サービス企業の炎上が増加
- 3.2.2)自治体・団体の炎上
- 3.3.3)クレームや批判による炎上が増加
- 4.まとめ
炎上レポートの主旨
エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析を行い、2019年8月より月次でのネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上事例の傾向をお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。また、これら炎上事例は、下記の“エルテスの定義するネット炎上”を満たす事例を抽出し、分析を行っております。
エルテスの定義するネット炎上
▼前提条件
以下の二つの条件を満たしている必要がある
1.批判や非難が発生している(ポジティブな共感の拡散等ではない)
2.対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較しても有意に多い状態。
▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。
▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。
本レポートでは、炎上事例の変化を “炎上対象”と“炎上要因”の2つの観点から見ていきたいと思います。
2023年下期全体の炎上傾向
2023年上期(2023年1月~6月)と比較して2023年下期(2023年7月~12月)のネット炎上件数は3.4%増加しました。図1で記載している通り、業種ごとに分類するとサービスの炎上件数が増加しております。
また、毎月の炎上件数では、下期を通じて2023年12月が最多になりました。12月には過去の広告表現が掘り起こされて炎上した事例や他者作品のデザイン盗用による炎上などPR活動のクリエイティブの炎上が多くみられました。
炎上対象からみる下期炎上のトレンド
図2は、2023年下期の炎上件数を月次で炎上対象別に整理したものです。ここからは、炎上対象の軸で2023年下期の炎上の特徴を見ていきたいと思います。
1)サービス企業の炎上が増加
全体の炎上件数が2023年上期と比較して増加している中でも、サービス企業の炎上は6か月間の平均でも全体の40%以上を占めています。
サービス企業の炎上事例では、広告などのクリエイティブの炎上が複数見られたことが特徴的でした。デジタル空間の広がりによってターゲット以外の層にも見られるケースが増えたことが背景にあると想定されます。
<サービス企業で発生した主な炎上事例>
〇数年越しに過去の広告に批判が殺到
〇ポスターに使用されたイラストがモデルの写真を無断で盗作していたことが分かり炎上
〇同業他社との比較から他社を下げていると認識される広告を行い炎上
サービス企業の炎上として目立ったのは広告などのクリエイティブが批判を浴びるケースでした。
過去の広告が掘り起こされることで批判を受けるケースもみられており、企業としては予期せぬタイミングで批判を浴びる可能性があります。また、他者のアイディアや作品を参考にしていたことがユーザーを介して疑問視される、比較広告が問題視されるなど、SNSユーザーが炎上慣れしてきたからこその要因の複雑化が見られているのではないでしょうか。
企業側の対策として、ユーザー側からどのように見られるかといった観点での確認が求められるとともに時間が経過してから批判意見が寄せられる可能性を考慮して拡散時に早期に気づくことができる体制を整えることを推奨します。また、過去に作成したクリエイティブの取り扱いについてのルールを社内で策定しておくことで、放置してしまう、店舗で過去のクリエイティブを使い続けてしまうリスクを低減させること も重要となります。
2)自治体・団体の炎上
2023年下期には、自治体・団体の炎上も多く見られたことも特徴と言えます。2023年上期には全体の6%でしたが、下期には15%まで増加しています。
<自治体・団体による主な炎上事例>
〇妊婦向けに配布されていた文書の内容が不適切であるとして炎上
〇市のPR動画がハラスメント行為を助長させているとして炎上
〇差別の注意喚起をするポスターが過剰な配慮を求めているとして炎上
これまでの炎上事例から、自治体・団体には一般企業以上にコンプライアンスの遵守が求められ、逸脱する行為に対しては厳しい批判が寄せられる傾向が見られています。従来は比較的クローズドであった自治体の範囲内でのみ配布・掲示されていた文書やクリエイティブが、SNSの普及によってターゲットの範囲外にまで見られるようになりました。
閲覧者が増えたことで求められるコンプライアンスのレベルも高まり、これまで以上に炎上しやすくなってしまった可能性があります。そのため企画時には、様々な価値観のユーザーの目に触れることを前提として炎上リスクがないかといったチェックを行うことが求められます。
3)クレームや批判による炎上が増加
※”企業・団体”は図1の「メーカー」「サービス」「IT」「インフラ」「自治体・団体」「教育機関」を指します。
2023年上期の傾向として見られていた「顧客クレーム・批判」を起因とした炎上が下期にも継続的に散見されました。
<主な顧客クレーム・批判による炎上事例>
〇商品の不具合が見られたにも関わらず数日後までリリースがなかったとして炎上
〇商品の不具合から健康被害が発生していたにも関わらず謝罪文が軽薄であるとして炎上
〇製品のクオリティへの批判に対して理解を求めて炎上
上記の事例の論調として、「食品を扱う企業であれば○○するべき」や「▲▲のプロとして発売するクオリティなのか」といった批判が見られ、企業に求める社会的な期待を裏切られたと感じたユーザーによる意見が寄せられていました。これらの期待から逸脱することによる炎上はブランドイメージの棄損が不可避となるといえます。
企業はユーザーからどう認知されているのか、どのような期待を持たれているのかを客観的に把握すると共に、企業規模に関わらず適切な対応を取ることが求められるため、事前にリスク事象発生時の対応やエスカレーションフローを検討しておくことを推奨します。
まとめ
2023年下期の炎上トレンドを見ていくとクリエイティブの企画時に注意すべきリスクに関する炎上が散見され、批判ポイントが変容している中で、広告表現やアウトプットは注目され続けていることが分かりました。PRのためには注目されることが必要である一方で、ネガティブな論調での注目を避けるためにコンテンツチェックや一定のルールを整備することが重要と言えます。
また、炎上の要因としては「顧客クレーム・批判」分類が2023年上期に引き続き多く見られました。法律・規制的に問題がなかったとしても、社会からの期待に応えることが求められ、逸脱すると批判が多く寄せられます。ユーザーから「この企業は~~」という期待を前提に情報発信や、インシデント発生時の迅速かつ誠意ある対応が求められます。適切な対応の検討のためには、定期的にSNS上の論調を調査し、自社がユーザーからどのような期待・評価をされているか、レピュテーションを認識しておくことも重要であると言えます。
エルテスでは、引き続き月次で炎上傾向をまとめた炎上レポートを配信していきます。炎上のトレンドを把握頂き、企業のリスクマネジメントに役立てて頂ければと考えております。
また、毎月炎上レポートを配信するとともに、1つ炎上事例を取り上げて、炎上理解を深めるセミナーを開催しておりますので、ぜひご参加ください。
>>> 現在開催中のセミナー一覧はこちら
引き続き、よろしくお願いいたします。
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